電子メールの公文書性

 大阪府知事が送受信した電子メールの情報公開請求があって以来、電子メールの公文書性が話題になっていた。やはり電子メールの公文書性については一言触れておきたいので、今頃感はあるけど、とりあえずエントリー。

 本当は1週間前に更新するつもりで資料を探したりしてあったのだけど、昨日まで、普通の風邪をひく→弱り目に祟り目でインフルエンザ感染→高熱に苦しむ+外出制限で5日間ほど家にこもりただただ安静、という生活をしていました。幸いにタミフルがきいたので早めに高熱は下がったけど、微熱状態が続く&咳が止まらないという、普通の風邪の症状は一向に治まらず。皆さんも、くれぐれもお気を付けください。

 さて、本題。大阪府知事が幹部職員とやり取りした電子メールの情報公開請求があったことを受けて、1月5日の会見で、以下のように述べている。
「基準ができればオープンにできる」と述べ、メールの公開について早急にルールをつくる意向を示した。(産経新聞 09.1.5)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090105-00000075-san-soci
 その後、1月21日の会見で、1対1の電子メールは公開対象外とする規則を定めることを明らかにし、会見では次のように述べている。
…「1対1のメールについては、公開や保存はしない」と、個人間のやり取りにとどまるメールを公開の対象外とする方針をあらためて示した。
(中略)
 1対1メールを公開対象外とした理由について、橋下知事は「メールの内容が重要であっても、2人の間でとどまる場合、組織的な価値はない。組織的に重要な情報は基本的に複数に送信する。1対1のやり取りはコミュニケーションの手段だ」と述べた。(産経新聞 09.1.21)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090121-00000626-san-pol
 そして、今は大阪府のホームページ上に「電子メールの公開の考え方」が公表されている。結局、この基準だと、公開請求の対象になるかならないかを分けることになる組織共用文書性は、かなり形式的な要件によることになる。1対1のメールであっても対象となるとされているのは、①公用PCの共有フォルダで管理されているか、②プリントアウトされて当事者以外の職員が管理している場合、③その内容が転送されて転送先の公用PCで管理されているに限られる。特に③は公用PCで管理とあるが、それが共有フォルダであるのか否かについての記述が見当たらない。組織共用文書とならない1対1メールは、公用PCのマイドキュメント、メールボックスで管理されていると対象にならないとされているが、転送メールに関してはマイドキュメントやメールボックスで管理されていても、対象となるということになるのだろうか。メールがどこに保存されているのかということは、組織共用文書としての「管理」の要件にもかかわる基準を一方で設定しながら、他方で「管理」はマイドキュメントやメールボックスにも及ぶという考え方を採用しているようで、実にわかりにくい。

 ただ、問題の核心はこういう点ではない。問題は、基本的には電子メールアドレスは職務上の必要性から職員個人に付与されたものであり、そこでの電子メールのやり取りは業務にかかわるものに限られる、あるいはもっぱら業務にかかわるものであるので、1対1であろうと、1対多数であろうと、業務にかかわる記録であることに変わりがないということだ。そして、少なくとも複数(2人以上)の間で共有されている時点で、単なる個人のメモ段階のものではないということだ。さらに言えば、送受信されている電子メールは、セキュリティ上の観点から少なくともいったんはすべて技術的には行政組織の管理下におかれている。しかし、それが個人ごとに受信されると個人文書になったり組織共用文書になったりするのは、技術的な形式条件に左右されているだけだ。
 
 ところが、先に引用したとおり、
橋下知事は「メールの内容が重要であっても、2人の間でとどまる場合、組織的な価値はない。組織的に重要な情報は基本的に複数に送信する。1対1のやり取りはコミュニケーションの手段だ」と述べた。
とされているのは、知事が組織的価値はないと考えているだけであって、それが組織運営上どのような影響を及ぼすものであるのかという観点からいえば、それは看過できないものがあると考えるべきだろう。組織共用文書として適切な管理をすることと、情報公開請求を受けて公開するかどうかは別の問題であって、実際に公開するかどうかは個別に判断すれば足りる問題。コミュニケーションの手段だから組織共用文書ではないというのはナンセンスで、基本的には業務遂行上の記録であること、複数人(2人以上)の間で共有されるものであること、組織的管理下に置かれた記録であったことなどから、組織共用文書としての扱いとすることのほうが妥当だろう。内容によっての選別(私信等の除外)と、内容による個別判断(非公開事由該当性)を基本に、電子メール全般が原則として組織共用文書性を持ち得るものであることを前提に、保存・管理・廃棄等に関するルールを作ることが、業務遂行に実態に沿うと考えられる。

 実は、電子メールの公文書性については、長野県情報公開審査会の委員をしていたころに、いろいろと苦労をした覚えがある。前長野県知事が、個人契約のメールアドレスを用いて職員に指示をいろいろ出していたということがあり、その電子メールの公開請求が不存在になったため、不服申し立てがあり、審査会で答申を出したことがある。

 http://www.pref.nagano.jp/soumu/gyoujou/koukai/tousin57.pdf

 結論においては不存在妥当の答申だが、業務遂行上の記録と、実際の公文書に齟齬があるという重大な問題があることと、電子メールの公文書性に関しては多くの課題があることを認識したケースだ。もっとも、個人的には、電子メールの公文書性は、審査会等の委員をしている、事前の調整などのやり取りをメールで委員間、職員との間で行うことがあり、会議を開けば記録に残るものが、電子メールで事前にやり取りされることで、記録に残されないことが非常に気になっていたので、問題意識としてはもっと前からあったことだ。長野県では、平成18年1月に「電子メールの適正な取り扱いについて(通知)」を出し、一定の対処がなされたところだが、やや形式的な要件で公文書性を判断するものであったこともあり、またくだんの答申のこともあり、審査会として実は「電子メールの公文書性に関する意見」(07.11.28)というのを取りまとめている。審査会の任期間際のことで、十分に詰めることができていない部分はあるが、電子メールに関する基本的な考え方をまとめた。長野県のWEB上には公開されていないが、以下がその全文。(手元にある最終版として送られてきたものなので以後、変更はされていないはずだが、最終的な確認をしていないので、最終的なものであるかどうかの確認が必要な方は、長野県庁にお問い合わせください)

 「電子メールの公文書性に関する意見」(長野県情報公開審査会)

 基本的には、県の業務に関係のないものを除いては原則として電子メールも公文書性があり得ること、私電子メールであっても業務上それが用いられている場合は直ちに除外せず、私電子メールを用いる場合は業務記録としての保管が適切に行われるよう対応することを求めている内容だ。くどいようだが、あくまでも業務遂行の実態とその記録に齟齬がないように記録が作成・保管されていることが大切。電子メールは、その意味においては明確に記録が残されるコミュニケーションツールであり、これまで電話や対面での打ち合わせの内容が記録化されにくかったのに対し、まったく異なる文化を持ち込むツールである。そのため、多少窮屈と実際に仕事をしている職員は思うかもしれないが、やはり、業務記録であるというところから物事は出発すべきだろうと思う。

 そして、情報公開とは、職員に対して求めるものではなく、自らの職務記録についても同じように公開する必要があるということを、華々しく活躍している首長の皆さんに再認識してほしいと思う。自分としての理屈が立つということではなく、自らの職責において何が求められているのかを考え、情報公開とは他者に対して求めるだけではなく、自らにも求められるものということだ。こんなことは、言わずもがなで分かっているとは思いますが・・・。(でも、あまり人のことは言えないかも。わが身を思えば。反省反省)
 
by clearinghouse | 2009-02-03 00:15