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審査会 インカメラ審理の効果?―沖縄県答申

 取材の電話をいただいて知ったのが、沖縄県警が不開示とした文書の部分開示を求める審査会答申。

 事件資料の開示答申 米兵息子窃盗(琉球新報2009年10月31日)
 http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152154-storytopic-1.html

 審査会答申の本文は、まだ沖縄県のホームページに掲載されていませんでした。

 請求されていた文書は、経緯を説明しないとややこしいので、その説明を少々。1年半前に沖縄で起こった米海兵隊員の息子二人が起こした窃盗事件で、先に私人に現行犯逮捕されたが、日本の警察が到着する前に米憲兵隊が来て2人の身柄を要求して拘束、そのまま連行し、その後到着した沖縄署員の少年への事情聴取を拒否したことがありました。後日、少年二人から任意の事情聴取が行われ、書類送検もされています。

 この事件では、沖縄署から米軍側へ、経緯等の説明を求める文書が出され、その後、米軍側から回答がされています。過去の新聞記事等を総合すると、沖縄県警は米軍側の行為は、「施設外における警察権のの行使であり、明らかに地位協定に抵触する」としているが、米軍は「日米合同委員会合意事項である共同逮捕」とし、日本政府は米軍が「少年が暴れるので手錠をかけたので逮捕ではない」という立場のようです(2008年4月19日 琉球新報)

 請求文書は、沖縄署から米軍側に経緯等の説明を求めた文書とその回答文書でした。決定は全部非公開で、それに対する不服申し立てがなされ、審査会が事件が起こった店舗名を除き、公開を求める答申をしました。

 そもそもの非公開は、店舗名は法人情報、その他は犯罪捜査情報、事務事業情報に該当するというものです。捜査に少しでも関わる文書は、後者二つの理由だとなかなか公開されにくいもの。しかし、答申では、請求対象文書をインカメラ審理で実際に見分し、その結果、文書の内容が報道機関等を通じて公知の内容であること、捜査の着眼点や手法が明らかになるような記載が見当たらないこと、米軍との関係でも特段配慮が必要な内容が見当たらないことを理由に、非公開とすべき情報ではないと判断しました。

 実際のところ、捜査関係の情報は、請求対象文書の内容がどうなのかだけではなく、今後の同様の捜査、業務の遂行への支障も考慮される傾向にあります。結局は、請求対象文書だけを見れば公開できると思われる文書であっても、非公開となることもあります。

 では、そういう傾向の中で裁判で争うとどうなるか。裁判官は非公開とされた文書を実際に見分して判断することができませんので、情報の内容は別にして形式的な非公開理由から判断せざるを得ません。得てして、裁判では争うのはなかなか大変です。ところが、審査会は非公開文書を実際に見聞することができるので、今回のような判断もしやすいと言うことはいえます。

 審査会は、自らの権能を活かして、役割を果たしたということだと思います。さらにいえば、今後の業務への影響に引っ張られずに判断しているところは、非常に良いと思います。内容等を考慮して、蓋然性が低いと判断したのだと思います。

 こういう答申を見るにつけ、やはり裁判でもインカメラ審理は必要かなと思います。
 
by clearinghouse | 2009-10-31 20:02