行政透明化検討チーム 一人反省会 内閣総理大臣の措置要求の巻

 8月24日に最終回となった行政透明化検討チームでの情報公開法の改正検討ですが、最終回を前に勝手に一人反省会をしています。今回は、新設の規定となる内閣総理大臣の措置要求がなんだか自分の中で一体何だったんだろう、と何となく議論の経過が消化しきれていない感じなので、勝手に反省してみます。

 過去2回は http://johokokai.exblog.jp/14864090/  http://johokokai.exblog.jp/14891084/

 今回の情報公開法改正議論の中で、新設する規定は少ないのですが、その中に不開示となった場合であっても、全面不開示の場合は内閣総理大臣に各行政機関の長が報告し、公益的な裁量開示に該当する場合は、内閣総理大臣から措置要求をするというものがあります。
大臣素案
2 内閣総理大臣への報告と内閣総理大臣による措置要求(行政機関情報公開法関係《新設》)
(1)行政機関の長が、開示請求に係る行政文書の全部を開示しない旨の決定をしたときは、内閣総理大臣に対し、その旨を報告するものとする。
(2)内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、行政機関の長に対して不開示決定の取消その他の必要な措置をとるように求めることができるものとする。

 公益裁量開示の規定は、不開示情報に該当する場合でも、公益上の必要性があれば裁量的に開示ができるという規定で、とても重要なものですが、一方でほとんど適用例がなく機能していないとも言われています。この規定を何とか機能するようにしようということで考えられたのが、各行政機関の長の判断だけでなく、内閣総理大臣が各省庁から全部不開示については報告を受け、公益裁量開示に該当する場合は措置要求をするというもので、大臣素案に入っていました。内閣総理大臣をかませることによって、政治主導を印象付けるという意図があったものと思います。

 趣旨としてはわかるし、実際に時代ととともに不開示だった情報が公開されるようになったり、政治的な判断で過去に不開示情報でも、それに該当しないと色分けされたりということはこれまでもあったので、こういう高いレベルで情報公開の判断がなされることはよいと思います。公益的な利益と、不開示により守られる利益の衡量をして裁量的に判断をするには、高いレベルの政治判断なしにはできないとも言えます。

 でも、この考え方は当初段階の大臣素案では、どこで何をして、何が対象になって、どのような政策効果を見こむのか、見れば見るほどよくわからず、そもそも何にフォーカスして議論をすればよいのかが、正直私の頭ではわからなかった。理由はいくつかあります。

 一つは、当初の話では全部不開示決定をしたときは各行政機関の長が内閣総理大臣に報告し、必要に応じて措置要求をするという流れであって、なぜ全部不開示に限るのかという政策的な意味が見出せなかったことです。情報公開法の運用状況によると、全部不開示は年間の請求件数の5パーセント未満。想定されるこういう選択の意味は、多数を占める一部開示を一律に除外することで、高レベルでさばける件数に絞るということと、やらないよりやったほうがましということです。その結果としてパフォーマンス的な要素丸出しのものということになってしまうように思えました。

 二つ目は、いつの段階で報告、措置要求をするのかという段階がまったく私の頭では理解できなかった。「不開示決定をしたときは」と書いてあるので、不開示決定後であることは何となくわかるのですが、では、決定後のどの段階で措置要求までとり得るのかは想定されたフレームがなく、そもそも何が想定されているのかがわからなかったことです。不思議なことに、この点について誰も説明できる人がおらず、誰が何のためにこれを入れたのかが結局提案側の話としては最後までなかった。

 三つ目は、公益上の裁量開示規定にのみ絞り、たとえば個人情報や法人情報に該当しても人の生命、健康等に影響を及ぼす場合は開示する規定も同様にあまり機能していないし、ある意味高度な判断が必要であるのですが、それがそもそも措置要求の対象から除外されているのが不思議だった。これこそ政治の責任と思うようなものですから。

 というわけで、そもそもこういう内閣総理大臣による措置要求という規定を入れることの政策的な意味は、観念的にはわかるけど実質が見えない、というところで、そもそも大臣素案で提案されていることについて何か判断し、議論できる状況に私の頭の中ではなかったので、会議の中でもそういう前提で発言をしてきました。

 この点の議論の風向きが明らかに変わったのは、第4回会合の座長代理による論点整理素案が出されてから。その中で、以下のような内容が入りました。座長代理である三宅弁護士の説明によると、総務省の提案ということです。
 
ただし、[論点整理]3のとおり考えると、当該提案は、内閣総理大臣が行政機関の長の決定を覆す判断を行い得る制度であることから、情報公開・個人情報保護審査会による不服申立ての審査・答申との関係をもあわせ考慮のうえ、審査会に諮問した事案について、行政機関の長は、審査会の答申後、全部不開示又は一部不開示の裁決・決定をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議して同意を得なければならないものとし、内閣総理大臣は、当該行政機関の長に対し、法7条の公益上の理由による裁量的開示その他の必要な措置をとるように求めることができるものとする、という制度にすべきではないか、とも考えられる

 大きな趣旨の一つは、全部不開示を対象とするのではなく、不服申し立てがなされたものを対象にすることで、一部不開示についても内閣総理大臣による措置要求がなされるようにするとともに、実務的にも回るようにするということだと理解しました。もうひとつの趣旨は、不服申し立てに対する情報公開・個人情報保護審査会の答申後を受けて、各行政機関の長による判断の前に報告・措置要求とすることで、事案の前裁きを審査会が行い、高レベルの裁量的判断だけを行うことで、実務的にも回り、政治主導的な意味合いも演出できるということだと理解しました。

 前者の実務的に回るようにするという趣旨は、私も基本的に賛成です。ただ、そもそもの提案が全部不開示から出発していて、そこに件数を絞る以上の意味があるとすれば、前進と後退が入り混じります。通すべき筋が一体何なのかすっきりしない。後者は、個人的には多いに異論ありというものです。確かに答申後だと、不開示情報該当性については一定の整理が行われているので、公益上の裁量開示の該当性だけを判断しやすいという趣旨はわかるのです。

 しかし、審査会の答申後とすると、請求から相当に時間がたってしまうので、政策的効果やインパクトはとても薄くなる。むしろ、審査会答申踏襲的な印象を強くするだけの結果になると思うのです。それに、不服申し立てをする側は公益裁量開示に該当するとも主張する場合がありますが、高位の政治判断をする場ではないので通常蹴られることになるので、むしろ審査会にかかる前に高位の判断はして、不開示情報該当性を審査会で審査をするほうがすっきりするように思います。加えて、個人情報、法人情報であっても人の生命、身体等々に影響を及ぼす場合は開示するとする規定についても、同様に扱ったほうが政策効果が高いと思うところです。

 この内閣総理大臣の措置要求については、私と松村教授が異なる観点から意見を述べていたところですが、実質的には前述の総務省からの提案が出て行こう、明らかに議論ができなくなったというか、議論にならなくなりました。明らかにそこをターニングポイントに発言が変わった方もおられて、総務省提案を支持してそれ以外は話にならないという感じになってしまいました。なので、自分として言いたいことは言うけど、それ以上でもそれ以下でもないということだと、どこかで自分を折り合わせてみました。

 でも、何だか、というか本当に消化し切れていないところです。
by clearinghouse | 2010-08-20 12:40 | 行政透明化検討チーム