廃棄簿の保存期間と廃棄

 第4回公文書管理委員会で審議された、17府省庁の行政文書管理規則。その別表に書かれている文書の保存期間や移管廃棄基準を見ていて、ふと、そういえば行政文書の廃棄簿の保存期間については委員会で議論になっていたなと思い出しました。ちょっと長いけど引用。

第2回公文書管理委員会議事録
 http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/22/220831/220831gijiroku.pdf
〇三宅委員
(略) それともう一点は、先ほどのことに関連したところなんですが、行政文書ファイル管理簿が常用だということで、現に使われている時点での文書ファイルはこういうものがありますというのはありますが、そこから廃棄されたものについては、ファイル等の廃棄の状況が記録された帳簿の方に移るのでしょうか。そこだけお願いします。
 つまり、なくなったという事実は30 年を経過すると、なくなったという事実もなくなるのでしょうか。行政文書ファイル管理簿で常用だったというものは、いつなくなったということもわかるようにするには、常用という意味の中に廃棄何年というのがずっと永年で続いていく方がはっきりするのではないかと思うんです。十二のロの適用になると、なくなって30 年経ったら、なくなったものもどうなるかわからないということになるのか、そこのところも併せてお願いします。
〇七條公文書管理検討室企画官
(略) 今まではそういった意味で、5年間しか管理簿に残っていなかったものにつきまして、今回は移管や廃棄の記録を30 年という保存期間にするという仕組みとさせていただいているところでございます。
---略---
〇三宅委員
 ということは、廃棄については、廃棄されて30 年経ったものは記録上も消えていくということになるわけですか。そこが私の聞きたいところです。
〇七條公文書管理検討室企画官
 原案は、別表第2の方で廃棄となってございますので、消えていくという原案ではございます。
〇御厨委員長
 三宅さん、いかがですか。
〇三宅委員
 今のところは、文書がなくなったという記録は、ずっと残していただきたいなという気があるんですよ。つまり、一時期重要だったということだと思うんですが、それがいつなくなったのかというのは、30 年ありますけれども、30 年経った後、それが例えば国立公文書館に移管されるという手続きであれば、廃棄された帳簿自体が移管されるということで、それは記録として残ると思うんですが、その帳簿自体が30 年保存で廃棄ということが決まっていると、30 年経ったら、30 年前に廃棄された文書は歴史上消えていくわけですが、でも、過去にこういう文書があったということ自体はずっと残しておいた方が、歴史学者にとってはいいのではないでしょうか。
〇御厨委員長
 難しいところですけれども、今、おっしゃったことはよくわかります。しかし、なくなってしまった文書名だけがあって、それで文書はないんですね。これは歴史家というよりは、作家とか小説家はこういうものがあった方が、いろいろ構想が膨らんでいいような気がするんですが、我々歴史家はそれ以上攻めようがないですよ。そこはどちらがいいかというのは、私の感じから言っても、ちょっと難しいところですね。

 微妙に、御厨委員長が話しの腰を折ってうやむや感が。でも、廃棄簿に関しては、本当に残してこれないと困る。だって、情報公開制度では文書不存在の場合の立証責任は原告に転嫁されるという、何ともまあ理不尽な状況にありまして、それは文書廃棄の場合も同様です。過去に、自分が原告の訴訟でやはり文書廃棄が問題になった案件でも、最後まで廃棄については原告ではなく被告に立証責任があるという主張をしましたが、そのときは玉砕。沖縄返還密約訴訟の第一審判決では、その廃棄の場合の立証責任を被告に求めたところで、やっと一歩という思いを持ちましたが、これも控訴されているのでこの先何とも。だから、廃棄簿がないと、この辺の立証はあいまいで抽象的で、状況証拠でしか判断されないという何とも切ない状況になるからです。三宅委員の発言は、こうした情報公開訴訟実務を反映してのものです。

 話の腰が折れたので、そこで大人な感じで議論は打ち止めに。結局行政文書管理ガイドラインでは手が入らず、各府省庁の行政文書管理規則では以下のような定めになりました。
〇保存期間
 文書の管理に関する事項
  行政文書ファイル管理簿/常用
  決裁文書の管理を行うための帳簿/30年
  行政文書ファイル等の移管又は廃棄の状況が記録された帳簿/30年
  取得した文書の管理を行うための帳簿/5年

〇移管廃棄
 文書の管理に関する事項
  文書の管理/廃棄

 要は、廃棄簿は30年保存で、保存期間満了後に廃棄されることに。何とか残してくれないものかと思いますよ。と思っていたところでふと思いついたのが、廃棄に際しては内閣総理大臣の同意を得るということになっている部分。おそらく、廃棄に当たっては、内閣府公文書管理課に、いわゆるレコードスケジュールと廃棄簿が提供されて、それが実質的な審査材料となるはず。この辺の事務のフローや文書の作成・取得状況が諸資料を見てもよくわからないけど、同意をするためには絶対に必要なはず。そうだとすると、廃棄簿は、内閣府の独自の業務として新たに取得される行政文書。

 これの保存期間がどんなものになっているのかは、たぶん「法令の規定に基づく勧告及び協議、同意、届出、通知、報告、資料の提出要求等並びに当該意思決定に至る過程」が当たるかと。これは「廃棄」ではなく「移管」の扱いになっている。ただ、「法令の規定による他の行政機関等に対する協議及び同意並びに当該意思決定に至る過程」として残す文書の中身が何かはこれではわからない。想定できる範囲だと、同意するかどうかについて関係府省庁と協議した経過なんかが入るのかなとと思いますが、この「過程」と言うヤツに、廃棄簿って入らないものなのか。というより、入るべきだろうし、入れるようにすべき。同意を裏付けるものとしては、やはり廃棄簿しかないのではないかと思うわけです。そうすると、内閣府の行政文書管理の束ね方次第では移管文書となる。なので、ぜひそうしてほしい。

 少し話がそれますが、大事な行政文書をどう残すのかということで、最近というか10年位前にその重要性に気づいたのが、今更ながらの官報や公報。きっかけは政治資金収支報告書の要旨の掲載。政治資金収支報告書は、要旨であれば官報や公報として廃棄されないほぼ永久保存文書として残される。情報公開条例の運用を公報に告示している自治体もある。どういう請求があったのかという請求一覧も告示しているところがある。意味するところは、公報をさかのぼれば、過去の請求状況は必ずわかるということ。

 そういう視点で見ると、私の浅学ですが、アメリカは、理解しているところでは文書の廃棄に当たっては廃棄リストとスケジュールをFederal Registerに掲載し、廃棄に対する意見も受け付けるとしている。意見を受け付けているというのもとっても良いと思っているけど、それにしてもFRへの掲載というのは、何が廃棄されたのかがきっちり残るということ。確か、情報自由法での開示請求状況も、FRへの掲載というのがあったのではなかったか。(こっちは記憶がかなり怪しい)

 なので、廃棄簿も新たな年度ごとの廃棄については、官報に告示してしまえ、何て思ってしまいますが、そうでなくても移管してくれれば良い。ちなみに、情報公開法に基づく開示請求は、官報に告示してしまえとひそかに思っています。おそらく、施行から10年近くたち、過去の開示請求実績が残っているところと残っていない官庁が出てきているのではないかと思うからです。

 というところで、廃棄簿は何とか残せる可能性があるのかということと、官報は実は結構意味深いという思ういう話でした。

 ちなみに、政治資金規正法は、政治資金収支報告書のインターネット公開とともに、要旨の官報・公報への掲載を省略できるようになってしまいました。インターネット公開は結構。でも5年で収支報告書は廃棄に。この改正には実は反対をしていたのですが、インターネット公開するからいいじゃないという反応の国会議員が何人も。その感覚は、とても残念な感じで。
  
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by clearinghouse | 2010-12-07 23:19