公益通報者保護法の見直し検討 もうすぐ終わりです

 消費者委員会公益通報者保護専門調査会で検討されていた公益通報者保護法。附則第2条で「政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 」と定められていて、今年度が5年目の年。年度内に検討をし必要な措置を講じなければならないということで、今年の6月から議論をしていました。

 12月16日に第7回会合があり、残すは1月の第8回会合だけで、そこで報告が取りまとめられます。この専門調査会、一応委員として末席に座らせてもらっていますが、最低限の合意形成をするための議論ができないまま第6回に早々に座長から専門調査会としての意見の取りまとめは行わない旨の宣言があり、最終的には以下のような骨子が出されました。

「公益通報者保護専門調査会報告(案)の骨子(座長試案)」
 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/koueki/101216/101216_shiryou2.pdf

 その他の資料は http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/koueki/koueki.html

 結論から言うと、各委員から出されたさまざまな意見をまとめたというものです。行政透明化検討チームも、各構成員や行政機関から出されたさまざまな意見を出された論点整理というものが出され、チームとしての合意形成はしていないのですが、この場合は最終的には行政刷新担当大臣が改正事項に関するとりまとめを行うので、成果物は比較的発揮していました。が、専門調査会の場合、ここで合意形成がなされないと、消費者委員会にそのさまざまな意見をまとめた報告が出されるので、最終判断はそこでということになりますが、「専門調査会」と名がついているので、正直困るんだろうなと。

 骨子案については、とりあえず私からは主に次の3点について意見を出しています。

 一つは、骨子の冒頭に法施行状況についての言及があるのですが、労働者の意識調査、法の周知・普及状況の調査はあくまでも制度を知っているかどうかや、通報窓口が設置されているかどうかといった調査で、実際に法律の内容がどこまで理解されているか、使いやすいものかどうかなどの調査ではないので、そうしたものは把握されていないということは確認すべきということです。公益通報者保護法は、普通の働く人のための法律のはずなのですが、とても複雑でややこしい仕組みで、何が通報対象事実で、何が公益通報に該当するのかは、世の中のさまざまな議論を見てもかなり混乱があります。今般の尖閣問題ビデオの流出事件に際しても、公益通報者保護法が話題になっていましたが、制度の内容を正しく理解したものは少なかったように思います。

 二つ目は、通報対象事実の範囲について、「(通報者は慎重に考えて確かな信念を持って通報すべきであり)「おそれ」を対象に含めると安易な通報が激増することになり含めるべきではない」という意見が書かれていたことについてです。意見自体どうこうというのではなく、「通報者は慎重に考えて確かな信念を持って通報すべきであり」と括弧書で言及されていることです。考え方がわかりますが、そういう信念を持った人しか通報すべきではないという趣旨で世の中にこれが出回るのはよろしくないと個人的には考えましたので、趣旨として削除してもよいのであれば削除して欲しいという意見です。だって、この法律はそういう強い信念ではなく、おかしいと思ったことを普通の人が通報できるようにするための仕組みのはずなので、こういう強調はちょっと違うのではないかと思うわけです。

 三つ目は、外部通報と外部への相談が今の法制では違いがはっきりせず、通報しようか考えている人が外部に相談すると、外部通報になってしまう可能性があるので、通報とは別に外部への相談という概念をはっきりさせてほしいということです。骨子の中では、「相談」についての言及があるのですが、いまいちはっきりとしたものではないので、最終的には他の委員の方のご意見もあって、相談については通報とは別に報告の中でまとめることになりました。

 おまけとしては、骨子には「政府に求められる事項」についての報告もあるのですが、その中で「相談」の充実についても言及して欲しいという要望もしました。

 結局、法改正は行わないということになりましたので、もはや私としては通報者が必要なときにより通報しやすくするための工夫を少なくとも獲得したいということでありまして、通報とは別概念で「相談」という概念を入れるということをしたいわけであります。今の公益通報者保護法は、通報を受ける企業や行政機関にとっては通報について予見しやすい仕組みになっていますが、通報者にとっては自分にとってのリスクを含めた通報してどうなるかが予見しにくい仕組みです。だからこそ、外部通報にはならない外部への相談ということくらいは明確に保障したいと思うところです。

 ところで、第6回会議に「公益通報者保護専門調査会で出された意見等に対する消費者庁の考え方」というものが消費者庁から出されています。

 http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/koueki/101124/101124_shiryou2.pdf

 「法改正によって制度を見直すべき具体的事実・理由は充分に確認できていない」ということで、基本的には改正のためには具体的事実・理由を求める考え方が示されています。この考え方は別の委員からも出されているところです。ただ、公益通報者保護法の場合、訴訟などの紛争にならない限り、なかなか制度の具体的な問題が明らかにならないものです。私自身、少ない件数ですが微妙な話の相談を受けていますが、そのことは調査会での検討材料としてとても提供できません。少なくとも、相談者にとってどうなのかと言えば、それはとてもいえるわけもなく言ってはいけないことであります。なので、「具体的事実・理由が充分に確認できていない」というフレーズは、おやめになった某大臣の失言とされている2つを覚えておけばいいというような、人を思考停止にさせるマジックワードに聞こえるこの頃なのであります。

 そうすると、法律が複雑で難しく、かつ通報対象事実も限定的という状況がもたらしている影響は、本当は周知が進まない理由であったり、法律があることで普通の人が通報しやすくなっていないということであったりといった、制度不活性の方向に出てくるわけであります。なので、そういう場合にどうするかは、やはり本来は政治が判断をしなければならないのかなと。

 何となく、虚しくなりつつも今の時点できることはちゃんとやっておかないと、というわけで言い訳がましいこのごろです。
 
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by clearinghouse | 2010-12-27 23:18 | 公益通報者保護