東京電力の運転操作手順書の公開

 東京電力が衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会には大部分を黒塗りで提出していた福島第一原発の第一原子炉の運転操作手順書が一転、ほぼ全部公開となりました。東電は、核物質防護や知的所有権などを理由に大部分を非公開としていましたが、原子力安全・保安院に手順書を提出し、その保安院が大部分は公開可能と判断して今回の公表となりました。東電は、いまだ不開示が必要との立場は変えていないものの、保安院は公益上のメリットが大きいと判断した結果ということのようです。

 この話を見ていて考えていたことがいくつかあります。当初、国会に大部分を黒塗りで提出した、その後保安院が手順書の提出を東電から受けたという報道を見ていて、単純に、手順書って国は東電からこれまで提出を受けていなかったんだ、ということでした。原発事故に関しては検証を政府内でも進め、これから国会でも進めていますが、そもそも事故に関連して必要な情報を政府は十分に取得できているのか、という私のかねてからの疑問は、そんなに外れていなかったんだ、ということを認識しました。

 今回、手順書が公表されるにいたり、情報公開法との関係を考えざるを得ませんでした。というのも、今回は請求手続を踏まずに、保安院が公益上の裁量的な公開を行ったという構図になると思います。が、今は事故が既に起こってしまったという非常時だから、という側面が否めません。公開されたことで手順書が事故対応としては不十分であったことが報道されたりしていますが、手順書の問題は、福島第一原発の問題だけではないということにも思いをいたさないわけには行きません。

 保安院が取得をしていないと、東電をはじめ、電力会社が持っている情報になります。でも、保安院はそもそもこの手順書を電力会社から提出させて、その内容の点検をすべきであろうと思います。仮にそれをするとすると、保安院は福島第一原発以外の原発の手順書は同様に公開できるのでしょうか。手順書は、福島第一原発の分がわかったということで終わるようなはないではなく、すべての原発に等しく求められる話であることを忘れてはいけないと思います。そして、情報公開はその中でもなされるべきではないかと思うのです。

 そして、もう一つ考えずにいられないのが、次の通常国会に提出が予定されている、秘密保全法案との関係です。「秘密保全のための法制のあり方に関する有識者会議」の報告書などを見ると、秘密の範囲は①国の安全、②外交、③公共の安全と秩序の維持です。核物質防護という理由で原発を見ると、①と③にあたる可能性があります。秘密にあたる場合の要件付けは、自衛隊法を参考にするようなのでで、「特に秘匿することが必要である場合」という要件になったり、あるいは「その漏えいにより国の重大な利益を害するおそれがある場合」という要件になるようです。

 電力会社がこの法制の直接の適用になることはないようですが、おそらく今後、原発関係の情報も一定範囲でこの秘密保全の仕組みに入っていくことになるのではないかと思います。今は、事故が起こってしまった、という非常事態の中で、これまでのような情報非公開を連発することがもはや国内的にも国際的にも許されない状況が、情報公開を進めている側面はあります。が、事故は起これば、ということであっては困るわけで、実際に原発関係がどういう形で秘密保全の中に入っていくのかは、非常に気になります。

 というわけで、非常時だから何とか情報公開がされているということがいまだと思うので、むしろ事故が起こってしまったらではなく、事故にならないために情報公開を進めていくべきといく方向に、今のうちに流れを作っておかないといけないのではないかと考えているところです。


秘密保全関係の資料は以下から。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060111014&Mode=0

<東京電力>原発黒塗りなし手順書公表 「メリット大きい」(毎日新聞 2011.10.25)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111025-00000001-maiall-soci

福島原発 黒塗りなし手順書公開 東電、想定甘さ露呈(毎日新聞 2011.10.25)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111025-00000091-san-soci
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by clearinghouse | 2011-10-26 01:31