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原子力委員会の会議のルール化

 発表からだいぶ時間が経ってしまいましたが、8月30日に、原子力委員会が秘密会合問題を受けて、会議等の記録作成やいわゆる準備会合の扱いについての取り扱いを発表しました。

  原子力委員会における「会議」に向けての準備等会合の取扱い(暫定版)
 原子力委員会における決定文書(案)を作成する標準的な手順(暫定版)

 原子力委員会は、会議の準備段階で事業者等も集めて資料作成などのために秘密会合を行っていたこと、その場で政策決定にかかわることについても意見交換が行われてきたことが問題となってきました。この辺りが明文ルール化されたことは、それはそれで意味があると思っています。どういうフローで物事が決るのか、アカウンタビリティを担保するために何をする必要があるのかは、その決定の正当性や妥当性を裏付ける上での基礎となるもの。ここが慣行・慣例的に行われて外から見える化されていないと、信頼の基盤となるものがそもそもないので不信感しか生まないからです。

 今回発表された「原子力委員会における「会議」に向けての準備等会合の取扱い(暫定版) 」では、「会議を開催し、議決を行うためには、委員長及び2名の委員の出席が必要」であり、この三者以上が同席する会合が開催できる場合を決め、その場合は職員を同席させるということをルールとして確認をしています。一方、1名又は2名の委員が、職務上の必要から調査、分析、情報収集等を行うために、有識者・専門家等と非公開で意見交換をする場合は、その概要を記録することとしています。

 要は、この会議・会合では意思決定は行わないこと、しかし原子力委員会の会議を効果的・効率的に行うための事前の事前準備は必要なので、そのための会合は行うが、それは意思決定過程の一部なので、中立性、公正性、透明性は確保するというということです。

 また、「原子力委員会における決定文書(案)を作成する標準的な手順(暫定版)」では、起案文書の意見反映の手順をルール化しています。どの段階で誰の意見を求めているのかは、これである程度見える化され、第1ドラフトへのコメント反映については、特に、修正過程が残るよう「修正履歴を記録する。なお、修正履歴の記録にあたっては、修正過程を検証できるよう、コメントと修正内容の対応、修正野時系列など、電子ファイルの保存方法等に留意する」とあって、履歴の記録まで具体的に言及しているのはよいと思います。とりわけ、電子ファイルの修正経緯は、どこまで記録に残すのかは、答えがあってないようなところがあり、それぞれの組織の意思決定過程に基づき、具体的に指示がされる必要があると思います。

 これらは概して前進だと思いますが、一方で、悩ましい問題を呈したとも思います。

 それは、意思決定は、「選択」の連続の上に成り立っているからです。そこには、情報の選択、誰の話・意見を聞くかという選択、外部要件としてどれに対して留意するかという選択など、いろんな選択がある。その選択は、あらゆる場面で行われていることで、会議に出てくるのはある程度その選択の方向性が決まった後のものだと言えると思います。「委員長を含む三者以上が同席」する会合や、委員が単独、あるいは二人で有識者や専門家等と非公開で意見交換を行う場合を、意思決定過程の一部と確認し、記録の概要を作成するということは、現実的にとり得る対応だと思います。だから、このルール化が第一歩であることは間違いない。。

 ただ、委員長を含まない三者以上の会合というのは、記録化の対象になっていない。ここは少し疑問が残ります。委員長以外で3人が集まることもあり得ると思うから。原子力委員会の会議のあり方と対比されるアメリカのNRCの記録作成ルール(3人以上集まると記録するというもの)も、二人ずつ調整等を行っていけば義務的記録作成の対象外になるという抜け道が指摘されています。だとすると、委員長ともう一人、その後そのもう一人と他の3者という組み合わせで調整をしていくと、記録化されずに方向性がきまってしまうこともあり得ます。

 今回は、跡付けできるよう意思決定の記録を作成するとしていますので、このルールを基本にして、しかし、ルールになっている部分は記録作成をするけど、それ以外はしなくてもよいという組織文化ではなく、ルールは必ずやる、それ以外も常に刻々とプロセスがおえるように記録化、文書化をしていってほしいと思います。

 というのも、公文書管理法では文書の作成義務が規定され、それはそれで良かったのですが、一方で何が作成義務の対象か(違法になるかならないか)という線引きに熱心に見え、本来アカウンタビリティを果たすためにどうすべきかという文書作成義務の前提がないがしろにされている気がするからです。ルール化は非常に重要、でも、それ以外はやらないでよいということだけにはならないでほしい、そう思います。
by clearinghouse | 2012-09-11 01:16