人気ブログランキング | 話題のタグを見る

福島県県民健康管理調査検討委員会の議事録未作成→議事録改変

 
 福島県県民健康管理調査検討委員会第1~3回の議事録が、大幅に改変(内容を削除)されて公開されていたことが問題になりましたが、改めて修正前の議事録が県のHPで公開されました。過去の議事録から差し替えをしていますので、修正された議事録をご覧になりたい方は、情報公開クリアリングハウスのHPからご覧ください。

 福島県「県民健康管理調査」検討委員会の第1~3回議事録
 
 この議事録改変の経緯が、情報公開請求により公開された文書でわかりました。公開された文書は、情報公開クリアリングハウスのHPに掲載しましたので、関心のある方はご覧ください。

 福島県県民健康管理調査検討委 第1~3回議事録修正の経過

 この改変は2段階で行われ、最初が議事メモを事務局が修正したもの、それをさらに県庁内の関係各課に回覧して修正したものが内容にかかわる大幅な修正で、その上で検討委員会委員の微修正がくわえられるという経緯をたどっています。

 どのように修正されていったのかを表にまとめてみました。

第1回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表
第2回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表
第3回福島県県民健康管理調査検討委員会議事録修正経過表

 まとめてみてわかったのは、①県民健康管理における外部被ばくと内部被ばくの扱い方の違い、②一元的な線量評価へのこだわり、③WBCに対する世間の誤解があるという県の認識、④県民参加で健康管理調査をしようという視点が全くない、ということの4点だと思います。

 とりわけ、目が留まってしまったのは、第2回会合の山下座長の発言です。

 「この委員会は外部被ばく中心で、内部被ばくはサブ」

 外部被ばくの問題も深刻ですが、生活をそこでし続けていくことを考えると、いかに内部被ばくを低減させるか、あるいはどのくらい内部被ばくをしているのか/したのかということは、とても重要な情報。また経過のフォローを求めているものではないかと思います。そこで、県民健康管理調査では、内部被ばくを計測するものとして尿検査の必要性が指摘されてきたわけですが、検討委員会では県民健康管理調査についての内容を決めた議論段階では、検討している影すら議事録では記載されていなかった。1~3回の検討委員会は非公開で行われていますから、この間、調査の中身がどのように決められていったのかを明らかにしてこなかったわけです。

 修正前の議事メモを見ると、当初公開された議事録で削除された内容のほとんどは、WBCと尿検査をめぐるやり取り。また、WBCに対する偏った見方があることを事務局が強調していることを受けての各委員の発言。
山下座長:(WBCについて)住民の1割をやらないと説明がつかない状況なのか。
事務局:そういう状況に追い込まれている。ある首長からは、全員と言われている。先行調査の期間の中で、できるところまでやりたい。
内閣府:WBCと尿の相関をしっかり出して、後は尿でカットオフ値を決めて、カットオフ値を超えたらWBCでよいのでは。
事務局:安全だけでなく、安心の問題。福島市・郡山市・二本松市といったところが収まらない。尿については、ある首長に話したが、メジャーになっていない。WBCでないとだめだという固定観念がある。
内閣府:WBCはバス移動や機器の圧迫感などのストレスがある。負担感は尿の方が少ない。尿を本流に位置付けるようにすべきではないか。(内閣府)
事務局:尿検査よりもWBCを皆が言っている状況で、尿に舵を切れない。
阿部委員:尿が中心なのか、WBCが中心なのか。2,800人やったら、次々要望が上がるのが目に見えている。今後の内部被ばくの評価をどうするかという方向性の問題。ただWBCをやればいいということではない。

星委員:WBC2,800人、尿100人では、WBCの方がよいというイメージになる。200万全県民WBCというバカげた議論になってしまう。安心を与えるためにやるのに、結果が逆になってしまっては。
明石委員:WBC先行では、収拾がつかなくなる心配。押さえないと。WBCが取りざたされすぎている。WBCで何でもわかるというような世論に警告を出す必要。
星委員:基本調査で線量評価は足りると言わないと、基本調査への協力が得られなくなる。皆WBCでやればよいとなる。とても危険。あくまで行動調査がメインであり、高線量の人たちだけがWBCと尿検査にしないと。行動調査が重要ではないという謝ったメッセージになってしまう。
事務局:やりたいと考えている。星委員の話はもっともだが、知見がある人たちまでWBCと言っている中で、それを鎮めないと。県が姿勢を見せないと基本調査にも協力してもらえないかもしれない。
星委員:県の厳しい立場はわかるが、本当にその2,800人はWBCの意味を理解できるのか。内部と外部の違いもわかってもらえるのか。考えを整理しないと。我々も説明していかないと。全体の評価がないと、WBCの要求が止まらない。
明石委員:内部被ばくについて住民に理解をしてもらうのが一番大事。事前説明をしっかりやる必要がある。100人を良い前例にする。ここを失敗すると、とんでもない災いを呼び込むことになる。WBCだけやればいいというのは、間違った安心になる。
事務局・どれだけ理解してもらえるか。聞く耳を持たない人があまりに多くなっている。委員の皆さんの認識と、住民や首長の認識には相当なギャップがある。
安村委員:星委員に同意する。問題は、県民に線量評価をすることが伝わっていないこと。調査票の記入は面倒。1割もWBCをやったら、皆、調査票など記入しなくなる。きちんとしたメッセージを出すべきで、WBC2,800人は反対。
内閣府:WBC神話論になっている。行動でしか外部被ばくを知ることはできない。外部被ばくの方が、内部被ばくの100倍は多いのに。(内閣府)
山下座長:線量が高い地域の住民の内部被ばくと外部被ばくを評価していないことが問題。

 実際のところ、必要だったのは、もしかしたら以下の明石委員の発言にあるようなことだったのではないかとも思います。
「WBC検査を受けにくることができない方、来ることが難しい方に、尿検査でスクリーニングできれば、多くの方に内部被ばく検査を効率よく実施できると思う。」

 ただ、上記のような内容が議事録から削除されていたため、検討委員会での県民健康管理調査についての議論の経過が、まったく別物になっていたということははっきりしました。情報公開請求や報道などのいくつかのことが重ならなければ、これらのことが明らかにならず、に、別物の検討経緯があたかも事実であるかのようになっていた。これは、もはや情報公開ではなく「情報統制」の世界ではないかと思います。

 さらに言えば、情報公開請求がなければ、議事録すらつくられなかった可能性がある。議事録修正の経緯の文書を見ていくと、関係各課に照会した際のメモ書きには、以下のようなものがあります。
・これまで、問い合わせに対して、議事録は作成していない。メモ程度のもののみで対応。
・このため「議事メモ」として開示することとしたい。
・保存してあった議事メモについて、内容の整合性?を図った。

 県民健康管理調査検討委員会議事録庁内関係各課内容確認依頼

 県民健康管理調査は非常に重要。すでに、その実施方法や当事者である県民に対するフィードバックの不十分さ、何のために調査を行っているのかというそもそもの部分の揺らぎや不信感など、当事者本位で進めてこなかったことのつけがずっとついて回っているように思います。情報公開請求を通じても、だいぶくすぶっていた問題が見えるかされてきたように思います。
 
by clearinghouse | 2012-11-27 22:21