公文書管理法の文書作成義務と議事録の作成

  「閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について」と「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」のパブリックコメントが12月16日に締め切られました。締切日の夜になって思い出し、我に返ってやっつけ仕事で意見を書いてだしました。いつもパブコメはこのパターン。本当はもっとちゃんと考えるべきなんだろうけど、なかなかできませんね。

 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/kettei.html

 今回、パブコメを書くために資料を見て、公文書管理法の文書作成義務やその他の規定を眺めて頭の体操をしていて、何となく自分なりにしっくりきていなかった議事録未作成問題について、何となく自分なりにその原因がわかったような気がします。ただ、一層頭の中の整理をしなければいけないようになった気もしています。

 それは、閣議や閣僚会議の議事録作成は、「行政機関の職員」に対する文書の作成義務の問題ではないという、当たり前のことにやっと気づいたから、ということであります。

 公文書管理法第4条がいわゆる文書作成義務について定めたものです。
第4条  行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
一  法令の制定又は改廃及びその経緯
二  前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
三  複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
四  個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
五  職員の人事に関する事項

 この規定を素直に見れば、「閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯」については、意思決定に至る経緯の文書を作成する義務があるということになります。だから、閣議や閣僚会議などなどについて、その決定等の経緯に係る文書である議事録は作成していないとおかしいのでは、とも言えるように一見見えます。

 しかし、文書の作成義務は「行政機関の職員」に対するものとして規定されています。この行政機関の職員の化されている文書の作成義務は一体何なのか見ると、行政文書管理ガイドラインに以下のような記載があります。
 
職員は、文書管理者の指示に従い、法第4条の規定に基づき、法第1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。

 また、これに関する留意事項として以下の記載があります。
○ 行政機関の職員は、当該職員に割り当てられた事務を遂行する立場で、法第4条の作成義務を果たす。本作成義務を果たすに際しては、①法第1条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるようにすること、②処理に係る事案が軽微なものである場合を除くことについて、適切に判断する必要がある。
○ 各職員が、文書作成に関し上記の判断を適切に行うことができるよう、日常的な文書管理の実施についての実質的な責任者である「文書管理者の指示に従い」、行うこととしている。文書管理者は、法第1条の目的が達成できるよう、個々の文書の作成について、職員に日常的に指示する必要がある。

 ここでいう「文書管理者」とは課長級のことです。

 要は、文書の作成義務は、日常の業務遂行上、職員に割り当てられている職務の中で作成しなければならないもの、という意味での文書の作成義務ということです。

 そうすると、議事録の作成問題というのは、①そもそも議事録の作成が職務上作成しなければならないのに職員が作成していなかったという場合と、②議事録作成についての組織的な意思決定がなされていないので、作成されなかったという場合と、二通りあるということになります。今時、①はあまり想定されることではないので、この間問題になってきたことは②だということになります。

 そうすると、②は文書の作成義務として議事録を作成すべきということではなく、そもそもの行政運営として、会議に議事録を作成しなければならないという行政機関としての義務がまずは必要で、それがないと行政機関職員に対する文書の作成義務というこの規定の問題に直接的にできないということになり得るのではないかと思うわけです。

 閣議や閣僚懇談会、副大臣会議、省議、その他閣僚会議についての議事録作成が、この間議論されてきていますが、これらについては、課長級や、行政機関の職員が議事録の作成をするかどうかを決めるものではなく、それぞれの会議体としての議事録作成に関する意思決定が必要です。また、いわゆる審議会等の第三者機関も同様で、会議体としての議事録作成を決めなければならない。この決定は、それぞれの会議体がアカウンタビリティを意識していれば、当然になされているはずですが、そういう状況にはないので、議事録未作成問題や、議事録そのものを作成しない慣行が残ってきたということになるのではないか。

 閣議等について議事録を原則として作成する方向で、閣議議事録等作成・公開制度検討チームで取りまとめが行われたのは、そういう意味では文書の作成義務の前提となる意思決定をこれからしようとするということであるのだと思います。閣議と閣僚懇談会については、議事録の国立公文書館移管までの間の非公開規定を含めて公文書管理法上の改正を行うとされていますので、この際、公文書管理法では、会議体の議事録作成を原則として義務付ける規定を設けてはどうかと思います。

 これは、いわゆる会議公開法制を一部公文書管理法に取り込んだような規定として十分にあり得るのではないか。原発事故が発生し、アメリカの原子力規制委員会が委員3人集まると必ず議事録を作成しているということが例として挙げられ、それに比して日本の議事録未作成問題は…などといわれていましたが、アメリカの原子力規制委員会はいわゆる会議公開法の要求事項として議事録を作成しているわけです。

 本来であれば、会議の議事録作成問題から、会議公開法制の方向に議論をもっていかないと、かなり不健全な形で公文書管理法の運用の中で措置をすることになるのではないか。つまるところは、原則ではなく問題になったところの手当だけをするという、悪しきこれまでの慣行的な対応にはまってしまうのではないか、と思います。
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by clearinghouse | 2012-12-18 23:44