小野市 福祉給制度適正化条例が成立

 条例案が出されたことすら見落としていたのですが、ニュースを見かけてちょっと衝撃でした。

「生活保護通報」小野市条例案が成立 反響1700件(朝日新聞 2013.3.25)
http://www.asahi.com/politics/update/0325/OSK201303250033.html

 何が衝撃かといえば、生活保護費や児童扶養手当などの受給者に対して、不正受給だけでなく、受給者のお金の使い方を地域住民も監視するということを条例化したということ。そして、市民同士で監視をするということは、誰が生活保護受給者や児童扶養手当受給者であるか否かという個人情報が、地域住民にも伝えられる可能性があることを意味していると思ったからです。

 そこで、さっそく条例がどんなものか探してみたところ、議会にかかった条例案が見つかりました。

小野市福祉給付制度適正化条例
http://bit.ly/Xi3a1V

 条例を見ると、新聞記事のタイトルは今、何かと問題視される「生活保護」をタイトルに出していますが、対象となっているのは、生活保護、児童扶養手当、そのほかの福祉制度に基づく給付、であります。「福祉制度に基づく給付」は、障害者への給付などかなり広い範囲に及びそうです。

 問題のある使い方とされたのは、「パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等」で、どんな場合に住民から市に情報提供義務が発生するのかというと、「その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生ずる状況を常習的に引き起こしていると認めるとき」であるとされています(5条3項)。

 また、同じ5条では「市民及び地域社会の構成員は、生活保護制度、児童扶養手当制度その他の福祉制度が適正に運用されるよう、市及び関係機関の調査、指導等の業務に積極的に協力するものとする」との住民の義務が定められています。要は、市や関係機関が行う調査に協力義務が発生しているということなので、地域住民が受給者等に関する情報を知るということですね。

 これに対応する等に、9条2項で「偽りその他不正な手段による受給等に係る情報等の通告、通報、相談等に関係したすべての者は、正当な理由なく、その際に知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。」と定めています。市や関係機関で公的機関の職員は、公務員としての守秘義務や個人情報保護条例等での義務が課されており、それを破れば懲戒処分、刑事罰が科されるという懲罰がありますが、地域住民が知り得た個人情報を漏らした場合や二次利用した場合については、罰則などはないようです。

 また、「小野市福祉給付制度適正化推進員」を置くとしていて、住民から情報提供があった場合や疑わしい事実があるときは、市長がこの推進員に調査をさせる(7条1項)とされています。この推進員がどういう人がなるのか、何も書かれていないので、この人たちが個人情報保護制度上どのような義務や懲罰が課される対象になるのか、まったくわからないという条例になっています。

 朝日新聞の記事によると、市は「罰則規定はなく、強制力を伴うものではない。通報するか否かは個人の自由意思に任されている」と、この条例に引っかかったからと言って受給者を処罰するものではないとしていますが、「通報するか否かは個人の自由意思」としつつも、規定は義務規定。確かに、通報しなかったからと言ってばっそうがあるわけではありませんが…

 それに、生活保護受給や児童扶養手当、そのほかの福祉制度の給付は、いわゆる社会的弱者や何等か支援が必要な人や家庭に対する支援の仕組みで、この給付を受けているか否かは、高度なプライバシーに該当するもの。住民が、よろしくない使われ方や不正受給の調査に協力義務を負うということは、この高度なプライバシーを地域住民が知るということでもあります。自治会や町会で問題住民が話題に上って、情報が共有されて監視を強める、なんてことも実際には起こりそうです。民生委員の会合などは、かなり恐ろしい内容になることもありそうです。

 そして、「推進員」の存在。これが一番の問題であるように思います。立場や身分がはっきりしないけど、市長の判断で、詳細な実態を調査するという。この「詳細な実態の調査」とはどんなものを想定し、調査としてどこまで含まれるのでしょうかね。基本的人権の擁護との抵触との調整や、権利擁護はどう保障されるのか、いまいちわかりません。おそらく、不正受給やよろしくない使い方の常習者は、そもそも人権なんてないという前提ということなのでしょうか。

  条例を見た結論。不正受給や福祉的な金銭給付がギャンブルなどに消えていくのは確かに良くないですが、明らかにやりすぎ。こういう条例が作り出す地域社会はどういうものになるのか。わかりやすく反撃されにくいところを不満のはけ口として用意するというのは、今も昔も変わらない。そういうことなのでしょうか。
 
[PR]
by clearinghouse | 2013-03-25 22:54