福島第一原発事故 政府事故調の情報公開

 朝日新聞がいわゆる吉田調書を報じ始めて、これまで知らなかったこともいろいろ出てきています。

 今日の官房長官会見では、ヒアリングの記録については本人が同意すれば公開する方針が示されたと報じられています。

 事故調の聴取結果 本人の同意あれば開示(NHK)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140605/k10014996181000.html

 記事によると、「政府は非公開を前提に行ったものだとして聴取結果を公表していません」とあり、さらに、官房長官の「本人の同意がある場合、第三者の権利、利益、国の安全などに関わる部分を除いて開示しても特段の問題はないと考えており、同意が得られたものは情報公開法の規定に基づいて必要な範囲で開示していきたい。本人の意向確認に向けた具体的な段取りを早急に検討するよう事務方に指示している」との会見内容があります。

 しかし、個人的にはこの非公開を前提に行ったから、これから同意を得るというのは、事故調の方針からすると本当にそうなのだろうかと疑問を持っています。

 それは、政府事故調の2011年7月8日付け「ヒアリング方法等について」には、ヒアリングを非公表で行うとしつつも、以下のような記述があるからです。
「ただし、相手方が公開とすることを了承している場合は、(公開することが不適当な情報(公安上の観点等))に関してヒアリングする場合を除き、適宜の方法(マスコミへの公開又はこれを前提とした録画等)で行うこととする。」

 これを素直に受け取るならば、ヒアリングの時点で公開を了承するか否かが確認をされていることになっているのではないかと理解できます。もし行っていないとすれば、「非公開でヒアリングを行います」という以上のことを事故調は確認をせずに、漫然と非公開でヒアリングを行っていたことになります。

 いわゆる吉田調書が明らかになってから、当時の細野首相補佐官が朝日新聞のインタビューで、自身の聴取記録を公開してもよいと述べたとされていますが、ヒアリングされた当時どうだったのかと思うのです。それは、過去に私が行った情報公開請求に対して、細野首相補佐官が事故調のヒアリングに応じたか否かも回答しないという、いわゆる「存否応答拒否」決定をしているからです。

 事故調のヒアリング記録を公開請求したのではなく、当時の首相補佐官が東電からどのような情報を提供され、どのようなやり取りをしたのかを情報公開請求したところ、事故調のヒアリングでそうした内容を聴取されている可能性は容易に想定される状況だったので、とりあえず請求対象に事故調を念頭におきつつ、聴取の実施の有無は回答しないという決定を行ったわけです(2012年のこと)。

 改めて公開について意思確認を行うというのは、実際には公開の意思確認が行われていなかったということの裏返しでもあります。しかも、ヒアリングの聴取書のと、ヒアリングの録音物の扱いについては以下のような記述があります。
「非公開で行ったヒアリングによる聴取書については、必要な範囲で開示するが、供述者の特定につながる部分及び供述者が非開示を希望している部分については開示しないこととする。音声データについては、供述者の特定につながることから、供述者が非開示を希望している限り開示しない」 

 要は、聴取書については「必要な範囲で開示する」ことともともとなっている。事故調の報告書での言及ができるように、聴取内容全般について秘密にするということではないことを確認しているだけとも言えます。しかし、一方で「必要な範囲で開示する」としているので、もともと個人が特定されないなどの一定の条件を満たせば公開できる情報であるという扱いだったとも言えます。

 ヒアリングの記録の情報公開については、①内容の公開、②個人の特定情報の公開、と2つの論点が含まれています。②は、政府的な立場からすると、内容そのものが個人の特定性のあるものなので、②だけでなく①も非公開、公開するなら公表の同意を個人からとるという扱いをこれからしようということであろうことは、容易に推測できます。

 ちなみに、国会事故調の記録の公開問題というものもあります。これについては、衆議院原子力問題調査特別委員会でかつて検討され、国会事故調の委員だった野村修也中央大学大学院教授が参考人として出席をし、以下のように述べています。
○野村参考人 私が責任を持って対応してきた部分もございますので、回答させていただきたいと思います。
 まず、法解釈の問題でありますけれども、情報公開法の対象外であるということについては、法律上明確であるというふうに私どもは理解しております。したがって、その情報公開法に基づいて一般市民等あるいは取材等の関係からの情報公開を求められても、私どもの方のこの聴取した文書については、これは立法資料の一環ということでもありますので、公開の対象にはならないという整理でございます。
 これは、もともとそういう理解のもとで、私どもは、公開されませんということを、情報公開の対象にならないということをその調査対象者に明示した上で調査を行っておりますので、この点の解釈については、一定程度、法制局等にも確認をした上での対応ということになっております。
(略)
 私どもの方は既に解散しておりますので、決定の権限は国会の皆様方がお持ちだということだと思いますが、この点、御留意いただきたい点は、聴取をするときに、相手方に対して幾つかの類型を示して、これについては永遠に開示されないものということを前提として聴取しているものがございますので、やはり、これについてはその約束を遵守していただきたいというふうに思っております。
 といいますのは、やはりその中には、プライバシーにかかわる情報等を開示しないという条件のもとにお示しいただいたものが多数含まれておりますので、この点についての御留意をいただかなければ、今後このような形での活動が幾ら法律によって設置されたとしても、事実上活動が困難になる可能性がありますので、十分御配慮いただいた上で対応していただくことが必要かというふうに思います。


 国会が情報公開法の対象外であることは疑いようのない事実で、言い換えると国会は独自の情報公開法もなく、立法調査文書と言われる文書に市民がアクセスする仕組みもないので、非公開や非公表は簡単に維持できる機関であります。中でも気になるのが、「聴取をするときに、相手方に対して幾つかの類型を示して、これについては永遠に開示されないものということを前提として聴取しているものがございます」と述べている点です。「永遠に開示されない」という約束をしているというのは、いわゆる通常の特定秘密より秘密性が高い類型を国会事故調は提示していたということですね。こういうのも、いったい何がどうなっているのか、この記録はいったい誰のものでどう使っていくべきものなのか、という議論は本当はあるべきだろうと思います。

 あれだけの重大事故について、政府の特定のところが情報を独占している、そして国会事故調は倉庫代わりに国立国会図書館が預かっていて、誰も利用できない情報が眠っているということの方が、異常事態だと思います。とりわけ、原子力規制員会がこうした記録を見ていないとすると、何を事故から学んだのかということを考えなければならないでしょう。科学的な知見やデータに依存をしていると、重大事故には対応できないことが今回の事故の大きな教訓ではないかと思います。当時、事故対応にかかわった人の主観も含めて、フルに教訓を学ぶという姿勢に欠けるのは、目先の利益ではなく公益を損なうことになると危惧します。
 
by clearinghouse | 2014-06-05 23:24