議事の「記録」から不開示情報を削除するというありがたくない範を示す閣議

 明日(11日)は、行政文書管理ガイドライン改定案のパブコメ締切日です。こんな地味な話にはあまり関心が払われませんが、とても大事な問題なので、何を問題としているのかのいったんをまとめておきたいと思います。

 パブコメ情報は http://bit.ly/1nHLGLh
 
 4月から閣議や閣僚懇談会の議事の記録の作成と公表が始まりました。このこと自体は大きな前進です。明治の内閣制度発足以来作成されてこなかったので、憲政史上初めての取り組みとされています。これは事実でありますが、これをもってとにかく記録がつくられるようになったのだから、それだけでよいというわけではありません。

 すでに情報公開クリアリングハウスでは意見表明をしていますが、閣議等の公表されている記録からは、情報公開法に定める不開示事由に該当する情報が削除されているだけでなく、記録そのものから削除して残さないという運用をしているからです。

 しかも、閣議決定や内閣官房長官決定の作成・公表ルールにはこのことは記載されず、実施に当たっての作成手順の中で公表時に不開示情報を削除とのみ書かれているだけです。明文化されたルールからは、不開示情報が記録に残らないとまでは読めず、要は公表されている記録以外にはの残さないため、不開示情報は削除されると残らないということになってしまうわけです。

 今回の行政文書管理ガイドラインと、閣議等の記録の作成は大いに関係があります。

 ガイドライン改定案は、閣僚会議等と言われる、閣僚の参加する会議体の記録の作成を義務付けるために行われるものですが、それに合わせて、これまで議事録・議事概要・会議録などさまざまな名称でよばれる会議の記録について、従来の「議事録・議事概要」という記載から、「議事の記録」と表記を統一することと、記録とは何かを定義づけるものです。

 閣僚会議等の議事録作成の義務化は大きな前進で、このこと自体は歓迎をしています。

 問題は、改定案で定義づけられた「議事の記録」です。

 今のガイドラインは、審議会等の議事録の作成の必要性を述べ、その議事録とは「発言者名を記載した議事録」としか記載がありません。改訂案は、「議事の記録」の作成を義務付けるもので、「開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者名及び発言内容」を記載したものとしています。また、作成義務の範囲は、審議会等だけでなく「国務大臣を構成員とする会議又は省議における議事の作成」を義務付けるものとなっています。

 この「記録」という言葉は、ガイドラインで初めて出てきたというよりは、「閣議等の記録の作成及び公表要領」(内閣官房長官決定)の中で改定案と同様の定義がされています。要領には、「記録の記載事項」として、開催日時、開催場所、出席者、議事結果、発言者名および発言内容とあります。「議事結果」というところだけがガイドラインでは「議題」となっているので微妙に違いますが、これは会議体の性質によるものと考えられます。

 つまり、「記録」は閣議等の記録と同じ意味をガイドラインにおいても持つことになるわけです。ここで見過ごしてはならないのは、行政府の最高意思決定機関である内閣が、閣議等の記録には不開示情報を記録しないということを、率先して行っているということです。

 これまで、議事録や議事概要が省略され過ぎている、肝心の経緯が記録されていない、不開示情報と思われるものが記録されていないということはままありますし、問題とされてきました。問題の背景には、公表できる範囲でしか記録を作成しない、不開示情報も記録する速記録は避けるなどがありました。

 不開示情報を削除して、公表できる議事概要を公表すること自体が問題とは言いません。情報公開請求によらずにより多くの情報にアクセスできる機会が保障されることは重要です。しかし、公表できるものしか残さないというのが誤りなのです。不開示情報も含めて記録をしなければ、永遠にアクセスする機会を私達は失います。これが政府のアカウンタビリティの姿であるとすると、それは非常に低レベルの話であります。記録を残す、それは不開示情報や秘密であっても残すということを徹底すべきだと思うのです。

 ところが、閣議等が率先して不開示情報は記録として残さないという範を行政機関に対して示している。これでは、行政機関に対して不開示情報を記録しなくても記録であるという間違ったメッセージを発しているにほからないのであります。せっかくガイドラインの改定により前進をしている部分もありながらも、従来と同じような問題を引き起こしかねない構造が、全体の中に埋め込まれている。

 このことは、憲政史上初の閣議の記録作成という言葉によってごまかしてよい問題だとは思えないわけであります。せっかく、閣議等の記録の作成・公表や、閣僚会議等の記録の作成の義務化など、手放しで評価したい話なのに、なんでこういう筋の悪いことを混ぜ込んでくるのかと、ぼやきたくもなるわけです。

 だから、今の流れが悪いとかそういう問題ではなく、良いことをしていることを、良いことだと素直にみなが認められるような筋をちゃんと通してくださいと思うわけであります。

 閣議等の記録の作成・公表を始めるに当たっての政府の資料には、その趣旨を「透明性の向上」「情報公開」「国民への説明責任」とあげられています。不開示情報は記録しないという運用で、これらが徹底されているとはとても言えない。せっかく正しい方向のことをしているのだから、正しさをせめてまっとうしてくれないものでしょうか。

 で、ガイドライン改定案との関係ですが、このままだと閣議等の記録作成の運用が範となって行政機関の作成する記録にも影響を与えてはいけませんので、不開示情報でも記録をすることをガイドラインで義務付けるべきだろうと思います。

 ちなみに、あまり知られていませんが、内閣そのものは情報公開法や公文書管理法の適用を受けておらず、ただし事務局として存在する内閣官房に資料や業務情報がたまるので、結果的にはほとんどがアクセス可能な情報になっているというものです。閣議・閣僚懇談会には事務方は入っていないので、この記録は、何らかの形で事務方に渡らなればそれまでということでもあります。

 いろいろややこしい。 
 
by clearinghouse | 2014-06-10 21:41