「特段の秘匿の必要性」ということの重み-特定秘密保護法

 特定秘密保護法の運用基準案などのパブコメが、昨日で締め切られました。運用基準案などは、とてもいわゆる技術的なもの。読み通すのも結構大変なものですが、これによってわかったことも多くあります。

 運用基準は、秘密指定の範囲の拡大、長期化、解除が進まないのではないかなどの指摘を受けて、その策定を法で規定したもの。これらの懸念に対してどう答えることができているのか次第で、実のところは特定秘密保護法の正当性も問われることになると言えます。統一基準をつくることでそれが回避できます、ということを前提に法を通したところがあるからです。

 パブコメが行われた統一基準案にはいろいろ問題や課題はありますが、特に問題な点は何かと言えば、秘密指定の要件の一つである「特段の秘匿の必要性」について運用基準がないということ。特定秘密になり得る別表23項目が55の細目に分けられたことがとかく注目されがちです。これはこれで重要な論点ですが、秘密指定の問題の本質的な議論のポイントは、本当はここではないと考えています。別表に該当し、かつ非公表の情報を秘密指定するか否かを判断するのは、「特段の秘匿の必要性」という要件であり、こちらの方が本質的に重要な論点です。

 特段の秘匿の必要性は、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」ものを要件として判断されます。「著しい」「支障」「おそれ」とありますが、これらについては一般的な文言解釈はあるものの、客観的・合理的に基準化できるかと言えば、それはもともと難しい問題で、主観的・裁量的判断が多分に入り込む部分です。なぜなら、著しい、支障、おそれともに漏えいによるリスクや影響をどう見積もるかということの判断になりますが、明らかにリスクや影響が見える場合とそうでない場合があったり、リスクや影響が誰にとってのものかという問題もあり、いきおい、過剰にリスクや影響を見積もる傾向が生じやすいからです。

 情報公開制度でも、非公開範囲が広がりやすいのはこれによるところがあります。公開された場合の影響やリスクは、実際にそうしてみないと本当のところはわからないため、より安全に制度を運用することになるわけです。この場合に、非公開とする理由として、影響やリスクを過剰に見積もりそのおそれや支障を述べることで、非公開を維持することになります。特定秘密の指定でも同じことは言え、漏えいによるリスクや影響は、行政組織にとってより安全志向で運用され、広めに秘密の範囲を取るということも起こり得るということになります。

 「特段の秘匿の必要性という要件」は、運用基準案でも逐条解説でも、例示的な考え方が示されているだけで、実質的な基準化がされていませんし、逐条解説案では文言解釈も示していません。だから、基準化できなかったとみるべきなのだと思います。結局は、個別性が高いということなのか、事案に応じた判断が必要ということなのか、いずれにしても統一基準はできないということが、運用基準案で示された政府側の意思表示と考えるべきでしょう。

 この特段の秘匿の必要性は、秘密指定の範囲に影響を与えるだけではありません。特定秘密の指定期間は、特段の秘匿の必要性が存在する限りは継続することになります。この要件が、秘密の質的範囲と寿命(秘密指定期間)を決めてしまうことになるわけです。そこで秘密指定期間の基準を見てみると、ここも例示的な考え方が示されていたりするだけで、基準化がされておらず、各行政機関で可能な場合は個別に基準化することをもとめています。

 これは当然の結果でもあり、特段秘匿の必要性について基準化できないならば、それの継続範囲である秘密指定期間も基準化できないということにならざるを得ない。そうすると、次の手が打てるかどうかは、基準化が実質的に無理であることを政府が認めるかどうか次第ということになるわけです。

 さらに言えば、運用基準のタイトルは「特定秘密の指定及びその解除」と名称がつけられていますが、解除の基準も実質的なことは書かれていません。法と運用基準ではっきりしましたが、特定秘密は有効期間満了により秘密指定の効力がなくなることが運用の基本で、解除とは秘密指定期間中に行われる例外的な行為となっています。そもそも解除となる事例は、運用上は極めて少ない結果になる可能性が高いです。運用基準のタイトルは、実際のところ基準の内容を正しく表しているとは言えないのであります。

 もともと、政府が統一基準をつくると言い出した時に、何をつくるつもりなんだ、そんなものができるのか、だいたい無理だろうという話を何人かの知人にしていた通りのなったというだけではありますが。

 パブコメ後に、政府や情報保全諮問会議でこうした問題点について正面から向き合うのか見ものであります。
 
by clearinghouse | 2014-08-25 15:31