問題を構造、枠組みの中で位置づける努力-特定秘密保護法と向き合う

 特定秘密保護法の施行前に、何本もの電話が事務所にかかってきた。twitterやブログを閉鎖した方がいいでしょうか、情報公開請求をしたら捕まるのでしょうか、デモや集会もできなくなるのでしょうかなどなど。

 心配している気持ちはすごくわかる。でも、話を聞くと、twitterやブログは大体新聞記事の引用や他の公表されている情報源からの引用だという。デモや集会も、普通のもののようで、特に暴力的なのもでもなく、意思表示をしている以上のことではないよう。しかし、これまでいろいろ怖い話を聞いてきて、twitterやブログの閉鎖、削除を考えている人もいる。情報公開請求も、間違って特定秘密を請求していると、本当に逮捕されると信じている人もいた。こうした恐怖心の源をたどっていくと、そこには法律家の講演を聞いた、という話がたびたび出てきて、とても困ったこともある。おそらく、そんなことは言っていないのだろうと思うけど、問題意識を喚起するために、危機感を持ってもらうためにいった一言が、そういう理解になっているのかもと思う。そして、普通の民間企業に入るのに、セキュリティクリアランスを強制的に受けさせられるとおびえている人もいたりで、ちょっと困ったなと思う。

 確かに、絶対大丈夫なんて言えない。少なくとも情報公開請求をしただけでは捕まらないことだけは断言できるけど。そもそも、私がすべてを決められるわけではないので、絶対大丈夫かどうかと言われて、絶対大丈夫なんて言えるわけはない。だいたい、リスクは極限まで小さくする努力はできても、ゼロにすることはできないからこそ、危機管理が大事になるということは、事故や問題が起こるたびに政府に市民側が要求していることでもある。ここで、軽々に絶対大丈夫、なんていうのもおめでたすぎるし、しかし必要以上に委縮させるのもちょっと違うのではないかとも思う。だから、萎縮をしないで前に進んで行く中で、こうした法制を覆していくことが大事だ。捕まるかもとか、捕まってもよいとか、そういう覚悟や事件待ちはおいておいて、これまでやってきたことをこれまで通りにやっていくことが、社会の栄養になると思う。

 それで、特定秘密保護法のことに1年以上、多くの時間を費やしてきて思うのは、もっと現実と実態を理解して、問題提起をしていった方が良いということ。自分たちにとって有利だからと、一面だけ切り取ってどうだというのは、議論を前に進めないこともあるから。例えば、この間、内閣法制局が特定秘密保護法の必要性について疑問を呈していた、ということが法制局との協議の記録からわかったことが再三報道された。ニュースの供給という意味では、こういうネタは意味があると思う。でも、法制局との協議記録を何度もいろいろな法律で見てきている立場としては、法制局とはそういうところという以上の感想は、実はない。

 法案をつくる過程で、法制局はあらゆる視点から疑問を呈し、突っ込みを入れ、その中には市民側が主張するような内容も多々含まれている。それは、私の理解しているところでは、様々な視点からたたいたうえで、成案化していくというプロセスに過ぎない。大事なのは、焦点化すべきことは、内閣法制局は結局特定秘密保護法案にOKを出したということ。いろいろ突っ込まれていく中で、法案を所管するところはそれなりに規定を整理し、彼らなりの理論武装をしていくことになる。ひとたび成案になれば、内閣法制局はそれを否定することは絶対にしない。そこが一番のポイント。ここに反対の根拠を求めても、あまり前に進めないと思う。

 同じようなことはいろいろな場面で出てくる。原発に対する特定秘密指定問題もそうだ。SPEEDIが公表されなかったことがとても深刻な影を落としたことは悔やまれる。だから、SPEEDIが特定秘密になるのではないかという議論の立て方はちょっと違うと思っている。むしろ、原発事故が発生したときに、どのような情報公開を政府がするのか、ということがこの問題の焦点だと思う。ここを解決しないと、また避難や被ばく回避に必要な情報が、必要なタイミングで政府から出てこないことになる。

 そして、原子力関連は、規制委員会が特定秘密の指定をしないと決定し、その理由も説明した資料も公表している。だから大丈夫というわけではない。むしろ、別のところに情報を遮断する問題がある。核セキュリティという観点から、一定の秘密保護がすでに行われている。ざっと見たところでは、過去の原子炉等規制法の改正で核物質防護の観点からの秘密保持義務が強化をされ、さらに核燃料物質の使用等に関する規則でも秘密の範囲とそれを取扱う人の記録化と管理、防護措置としての秘密の範囲の指定が行われている。

 これは、原子力規制員会そのものという以上に、原子力関係事業者における秘密保護という側面が強い。加えて、原子力規制委員会での検討では法制化が見送られたが、特定秘密保護法のセキュリティクリアランスとは別に、クリアランスを行う仕組みを事業者ごとに行うことになりそうだ。私はこっちの世界に専門性はないので、情報面での動向を少しだけフォローをしているに過ぎないが、こっちの動向を良く見た方がよいと思うし、この分野に詳しく問題意識を持っている人は、おそらく注目をしているだろう。ここの議論を深堀したほうが良いと思う。

 セキュリティクリアランスと言えば、人権侵害との関係や外部で情報の紹介を受ける医療関係者からの問題がいろいろ提起されている。重要な指摘や提起だ。質問項目や様式もいろいろ問題視されているし、突っ込まれている。ただ、あの質問用紙を見て、私にはこれが、嘘や偽りを書くかどうか、書くべきことをちゃんと書くかどうかをチェックするためのものにしか思えない。だから、あの内容からチェックをするというよりは、書くべきことをちゃんと偽りなく書いているかを判別するのに使うのだろうと思う。

 そして、公務員という限定でいえば、所得や病歴、投薬歴などは民間への照会はほとんど必要としていないのではないかとも思う。どの程度現実のものになっているのかわからないので、確認をしなければと思っているが、例えば、所得や経済状況の照会先は、国税や信用情報機関で基本的には十分なのかなと思う。医療関係は、公務員が加入している健康保険は共済なのだから、そこにアクセスができれば基本的には足りるだろう。

 関係法令とのつながりをよく見なければ何とも言えないが、クリアランスのために情報を照会する権限を法で設けたので、法令に根拠のある個人情報の取得になった。提供をする側からすると、法令に基づく第三者提供、外部提供ということになり得る。クリアランスという部分では、これまで壁があった国税、信用情報、共済情報に手が伸ばせるようになった。壁が一部取り払われたということも言えそうなのだ。

 何を問題として議論をするのかは、日々学びつつ、大きな枠組み、構造の中に位置づけていかないとと、労を多くして得るものが見えない状況になりかねないと本当に思う。得るものが見えないことが、相手が悪いと自分を正当化する根拠や理由になってしまってはもっとまずい。私は、要領よく、簡単に構造の中や枠組みの中に問題を位置づけることもできないので、現実を知る努力をして、どうするかを考え形にしていくことしかできない。こういうことを簡単に乗り越えていける人は、とてもうらやましい。だからこそ、自分なりに一歩一歩進むしかない。
 
by clearinghouse | 2014-12-17 00:06