原子力分野の秘密保護についてのメモ

 原子力規制委員会が、特定秘密の指定は行わないとした件は、以下に掲載されている資料で確認ができる。
 
 https://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h26fy/data/0044_01.pdf

 大した分量ではないので全文を見るとよいと思うが、主要な部分を抜粋すると以下のような説明になっている。

(2)厳格な管理を行っている情報
 現時点で原子力規制委員会が保有する情報のうち、厳格な管理を行っている情報として、核物質防護に関する情報、核不拡散に関する情報、その他テロリズムの防止に関する情報があり、それぞれについて概要を以下に示す。

○核物質防護に関する情報
 原子炉等規制法に基づき実用炉規則において定められる特定核燃料物質の防護に係る措置の詳細に関する情報

○核不拡散に関する情報
 濃縮ウランの生産に関する情報などの核兵器転用のおそれのある技術情報

○その他テロリズムの防止に関する情報
 外国の政府機関から提供された故意による航空機衝突に関する情報等

 これを見ると、要は核物質防護に関する情報が厳格な管理対象情報として認識されていて、しかし、それらは特定秘密の要件を満たさないと判断したということだ。では核物質防護に関する情報がどうなっているかというと、原子炉等規制法、実用炉規則、核燃料物質の使用等に関する規則などに、秘密保持が規定されている。

 原子炉等規制法には2005年の改正で、秘密保持規定と罰則が設けられた。

(秘密保持義務)
第六十八条の二  原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。次項において同じ。)及びその従業者並びにこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、業務上知ることのできた特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならない。
2  国又は原子力事業者等から特定核燃料物質の防護に関する業務を委託された者及びその従業者並びにこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、その委託された業務に関して知ることのできた特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならない。
3  職務上特定核燃料物質の防護に関する秘密を知ることのできた国の行政機関又は地方公共団体の職員及びこれらの職員であつた者は、正当な理由がなく、その秘密を漏らしてはならない。

 ポイントは、①特定核燃料物質の防護に関する秘密であること、②正当な理由がなく漏らしてはならないこと、の2点だ。対象となるのは、原子力事業者等、従業者、関係する業務委託を受けた者、国・地方公務員で、罰則も規定されている。

第七十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 三十一  第六十八条の二の規定に違反した者

 この「特定核燃料物質の防護に関する秘密」とは何かというと、核燃料物質の使用等に関する規則を見ると、以下のような規定がある。これらは、原子炉等規制法の上記の規定の対象に確実になる。同様の規定が、実用炉規則にもある。

核燃料物質の使用等に関する規則
(防護措置)
第三条の三 2  前項の表第一号及び第二号の特定核燃料物質の防護のために必要な措置は、次の各号に掲げるものとする。
十九  特定核燃料物質の防護のために必要な措置に関する詳細な事項は、当該事項を知る必要があると認められる者以外の者に知られることがないよう管理すること。この場合において、特に、次に掲げる特定核燃料物質の防護に関する秘密については、秘密の範囲及び業務上知り得る者の指定その他の特定核燃料物質の防護に関する秘密の管理の方法を定めることにより、その漏えいの防止を図ること。
イ 特定核燃料物質の盗取、特定核燃料物質の取扱いに対する妨害行為又は特定核燃料物質が置かれている施設若しくは特定核燃料物質の防護のために必要な設備若しくは装置に対する破壊行為(以下「妨害破壊行為等」という。)の脅威に関する事項
ロ 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
ハ 特定核燃料物質の防護のために必要な連絡に関する詳細な事項
ニ 特定核燃料物質の防護のために必要な体制に関する詳細な事項
ホ 見張人による巡視及び監視に関する詳細な事項
ヘ 第十五号に規定する緊急時対応計画に関する詳細な事項
ト 特定核燃料物質の防護のために必要な措置の評価に関する詳細な事項
チ 令第三条第一号 イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(取扱いが容易な形態のものに限る。)の貯蔵施設に関する詳細な事項
リ 特定核燃料物質の工場又は事業所内の運搬に関する詳細な事項

 これらに挙げられていることが、原子力規制委員会が特定秘密の指定は行わないものの、厳格な管理を行っている情報に含まれるものであると理解できる。これらは、IAEAの勧告を受けて核セキュリティ対策強化の一環として進められている法令等の整備だ。

 現在、核セキュリティ対策は原子力規制員会の核セキュリティに関する検討会で、以下の点を優先課題に検討が進められている。

 ①信頼性確認制度の導入
 ②輸送時の核セキュリティ対策
 ③放射性物質及び関連施設の核セキュリティ

 ①は特定秘密保護法にいう適性確認制度(セキュリティクリアランス)で、核物質防護の観点から官民ともに対象とした職員等の信頼性確認制度を導入するというものだ。この件は、10年以上前から何度か検討され、導入されずに来ており、先に報道によれば今回は法制化はしないが導入をする方向であるようだ。

 個人的には、核セキュリティは、同位体を含む核物質を保有している以上は取り組まなければならない重要な課題であると考えている。しかし、秘密を保持して安全を確保するということは、何も起こらなければそれで成り立つが、一方で、何かが起こると影響を受けるのは周辺住民のみならず、かなり広範囲にそれが及ぶという問題になる。

 だから、この分野は社会で共有されるべき情報は何か、地元自治体が知るべき情報は何か、関係機関が把握すべき情報は何かなど、必要性や役割を抑えた整理が本当は必要なのだと思う。原子力分野は特に、公開性を意識した運営が表向きは行われる一方で、社会に対してどう誠実であるべきかという部分で決定的な信頼性の欠如があるように思うからだ。

 特定秘密保護法の議論で、原子力分野の情報が特定秘密になるかもということで、いろいろ心配をしたり問題指摘もされてきた。個人的には、特定秘密化とは別の問題がこの分野にあると考えていたので、その議論にはあまりくみしないようにしてきた。原子力規制委員会の判断も出たし、そろそろ議論を整理して行かないといけないのかなと思って、とりあえずメモとして現状だけ整理してみた。とにかく、この10年の間に核セキュリティ対策の強化という文脈では、いろんな検討がされて話が動いてきている。

 この分野も、核セキュリティの実態が見えないので、とても議論がしにくい。秘密とされる情報や分野はみんなそう。だから、どういうふうに市民社会側から議論をしていくのかは、工夫が必要。原子力分野の制度や政策に明るい人が、少し知恵を絞ってくれないかと思うこのごろ。

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by clearinghouse | 2014-12-25 14:24