営利目的の利用を今さら問題視するのはちょっと違う

 横須賀市が、建築関係情報の営利目的の情報公開請求が増えていることを受けて、情報公開条例の改正を情報公開審議会に諮問したとのことだ。

情報公開 営利に利用 『建築』で急増、ネット販売も
 東京新聞 2006年11月17日
 情報公開制度を使い営利目的で情報を得ているとみられるケースが、横須賀市で急増していることが十六日、明らかになった。建築関係情報の請求が増えているのが特徴で、インターネットを使って情報を販売しているケースもあるという。市情報公開条例は、請求者の範囲や使用目的に制限がなく、規制をかけることができないため、市は対策に苦慮している。・・・
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20061117/lcl_____kgw_____000.shtml

 上記の報道によると、04年度は情報公開請求件数が約2500件であったのに対し、05年度は約5200件あり、建築計画概要書と道路位置指定関係書類の請求が増加したとこのと。一度に請求される文書が1000枚以上のケースもあったとして、市が対応策に苦慮しているということになったようだ。

 早速、横須賀市の情報公開審査会の関係資料や議事概要を確認したところ、当初事務局から示された見直し素案は、①請求権者を「何人」から「広義の市民」へ、②電磁的記録の公開方法は紙に出力したもののみに、③公開請求手数料を徴収する、④①からはずれた者には任意申出を認める、というもの。報道によれば、今のところ審査会はこのような改正には慎重ということだが、示された論点をみて、あまりにも後ろ向きというか、守勢に回った弱さ丸出しでちょっと笑ってしまった。

 日本の情報公開制度は、請求目的を問わず、利用目的も問わずに受益者負担でコピー代等を誰であっても徴収するという原則を採用してきた。場合によっては請求手数料を徴収したり閲覧手数料を徴収しているところもあるが、いずれにしても受益者負担の原則を貫き、市民であっても公益的な目的であっても「カネ」を取ることを変えてこなかった。個人的には、請求目的ではなく減免を受けたい場合に「利用目的」を問うことで、費用減免を広く認めるアメリカの情報自由法のような手数料(実費)体系にし、情報公開制度による開示請求を請求者に対する「開示」制度ではなく、制度を通じて広く一般に「公開」するという転換を図るべきだとずっと考えてきた。実現はしていないが、この考えは今でも変わっていない。だから、日本の制度は私の目からは自ら商業目的の利用に対しては手を打ちにくい呪縛をかけていると見える。

 それに、商業目的での利用は情報公開条例制定当初からあるもので、10年以上前に東京23区の情報公開条例の運用状況を調査したところほとんどが建築計画概要書の写しの情報公開請求であったり、国も国税庁への情報公開請求が突出して多いが、ほとんどが国税関係の公示事項の写しの請求であり、これらは「市民」からではなく事業者からの請求だ。本来想定していた制度の利用方法とは異なるかもしれないが、目的を問わない制度である以上は折込済み問題であるはずだし、こういう問題を想定して制度の原則部分を設計するのは、本末転倒だだ。変な守りに入れば、悪貨が良貨を駆逐する状況を作りかねないが、そうした条例改正を指向する自治体が散見されるのはきわめて残念。特に、横須賀市は、政策法務では先進自治体という評判をお聞きするところで、そこから今回の動きが行政内から出てきたことは残念でならない。

 ところで、今回の条例改正に至った横須賀市が問題があるとする事例に対する対処は、情報公開条例の改正ではなく個別の枠組みでの対応をするか、条例を改正するなら別の方法をとるべきことだろう。というのも、例えば、請求権者を市民に限定しても、市民に代行請求してもらえば足りるし、任意の公開の申出があった場合に市民に公開している情報を非公開にするのは難しい。請求手数料をとるのも、例えば建築計画概要書一件につき1請求とすれば請求時点で高額なひようがかかることになるが、このような運用だと他の請求も決裁単位で1請求とせざるを得ないことになりかねず、情報公開請求は市民には手数料が高額になりとても使えない制度になる。基本的には、何も解決しない。

 だから、複数回公開請求がある文書は、情報公開条例からはずして公表するようにするか、あるいは建築計画概要書の閲覧・写しの交付に関する条例等を整備して、その中で対応するようにして、情報公開条例の適用からはずすことが考えられる。情報公開条例とは別に、自治体では個別に閲覧・写しの交付についての対応しているものは多々あるから、可能のなはずだ。こういう「工夫」ができないような偏狭な目線でしか問題を見れないようであれば、それまでという気もする。ただ、変な改正をされるといろいろと影響するのでそう言い捨てることもできないので、無視されるのを承知で意見書でも審査会に対して提出するか、と思案中。

 横須賀市の情報公開審査会の資料は以下に掲載。スクロールして一番下に今回の件の資料がある。
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/koukai/tousin.html
 
[PR]
by clearinghouse | 2006-11-22 21:49