徳島地裁で判決が出されたケースの後ろに透けて見えるもの

 クリアリングハウスの仕事と4月以降の仕事と、現在2つの仕事が並行して進んでいるので、なかなか時間のやりくりが難しくなってきていて、ブログの更新もままならない。自分の置かれている状況が想像していたよりもいろいろな意味で良くないと思うときは、自分自身にそれをあえて納得させることも必要だけど、いろいろとストレスがたまりますわね。

 さて、少し時間がたってしまったが、22日に徳島地裁で情報公開訴訟の判決がだされた。私は、判決について取材を読売新聞から受けたので知ったもので、記事は地方版にしか掲載されておらず有料のデータベースにしか収録されていなかったので、ここで記事の引用は控える。

 争われていたのは、徳島市が住居表示台帳と住居表示案内図の公開請求対し、全部非公開とした決定だ。徳島市は、住居表示台帳には個人情報が記載されていて非公開情報に該当するが、台帳は543枚にのぼり大量の個人情報が記載されているため、個人情報部分を分離して部分公開するには、多大な時間と費用がかかることから容易に分離できないことを理由に、部分公開も拒み、全部非公開としていた。判決は、個人情報を除いて部分公開をせよと徳島市に命じており、判決の内容としてはきわめて妥当。文書が大量で、かつ黒塗りする箇所が大量であることを理由に部分公開できる文書が全部非公開とされてはかなわない。特に、住居表示台帳の場合、公開部分と非公開部分を分離することは容易なはず。このような場合の全部非公開を認めていたら、内容ではなく分量で部分公開できるものを全部非公開とされかねない。徳島市の決定は、この点で情報公開条例の運用としてはきわめて問題があるもので、それを覆した判決は、きわめて妥当ということになる。

 ところが、この徳島市の全部非公開の決定の背景は推測するしかないが、これまで私が知りえている情報を総合すると、この全部非公開の決定には別の問題が透けて見える。徳島市に対して請求をしていたのは、全国各地で地図に作成のために「閲覧」情報を情報公開条例を使って請求をしている業者だ。地図作成のための情報公開請求で、紙の文書や電子データが大量に請求されるため、各地の自治体で対応に苦慮している。また、この業者に限るものではないが、建築計画概要書の大量請求が各地で出されるなど、事業者による大量の情報公開請求を受けて、一部の自治体では情報公開条例の改正などが検討される状況になっている。

 これらの問題、もとをただすと各法律で「閲覧」とされている情報のコピーが、情報公開条例を利用して請求されているケースが多い。例えば、徳島市のケースで争われた住居表示台帳の作成根拠である住居表示法は、台帳の関係人から請求に対し閲覧させなければならないとしているが、コピーの規定がない。建築計画概要書も建築基準法で概要書の閲覧を定めてるが、コピーの規定がない。一部の情報公開条例は、法令等に閲覧規定のある文書の公開請求を認めていないが、情報公開法をはじめ情報公開条例にも、法令等に閲覧規定がある場合、閲覧はその法令等により、コピーについては情報公開制度を適用している。政治資金収支報告書が、かつて政治資金規正法で閲覧しか規定していなかったため、コピーが認められなかったが、このような個別の法律の不備により閲覧できてもコピーができないという問題に対し、個別法を改正するのではなく、情報公開制度を並行適用することでコピー問題を解消したといって良い。

 しかし、政治資金収支報告書のように、国民による監視を目的とするような仕組みの場合、広く何人にも公開することが法の目的にかなうものもあるが、「閲覧」できると個別の法律で定められている情報の、閲覧と定めた目的はそれぞれ異なるし、その目的からコピーを認める範囲も異なってくるだろう。ところが、情報公開制度はそのような目的等を踏まえてコピーを認める仕組みではないため、各自治体が対応に苦慮したり、本来の情報公開制度の使われ方と違うと考えたり、そして公開することに抵抗したりと、現場レベルでの迷走が続いている。情報公開制度の並行適用が問題とは思わない。しかし、各法令等で閲覧情報の扱いを整理し、閲覧制度の目的に照らしてコピーの規定を整備する必要はあるのではないかと思う。
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by clearinghouse | 2007-01-28 01:32