知人が最近、東京地裁に国を相手に情報公開訴訟を提起した。

 争いの内容は、第三者機関の議事録作成のために作成される録音テープ。速記録の作成が外注されているため、この録音テープは委託先の業者の手元にあることを理由に不存在となった。過去の情報公開・個人情報保護審査会の答申によると、審査会はこのような場合は行政文書に該当しないと判断しているので、不服申立てをしたものの良い結果は期待できないので、訴訟も並行して提起された。とはいっても、申立ての審査会への諮問はすでに行なわれているので答申の方が早く出るだろう。

 ところで、訴訟になった背景は、審査会に期待できないということだけでなく、争っている間に業者の手元にある録音テープが重ね録りされるなどして、公開請求した内容が失われる可能性が極めて高いという事情があったからだ。行政機関内にあれば、情報公開請求後に廃棄等はされないが、業者の手元にあるとそうは行かない。業者の手元にある録音テープが行政文書に該当するどうかが主たる争いになるのが、不存在決定を行った行政機関が業者に対して保存するように依頼しない限り、争っている間に録音テープは失われ、いくら処分が取消されて行政文書とされ、公開の義務付け請求が認められたとしても、意味がない。

 そこでいろいろな人に知恵を借りた結果、取り得る手段として最善のものとして行なったのが、業者に対して録音テープの行政文書性を争う情報公開訴訟を東京地裁に提訴したので、現在存在する訴訟対象物の録音テープの保存の依頼と、依頼をした以降に廃棄した場合は損害賠償請求をするという警告を記した書面の送付。どこまで効力があるのかという点については、過去に経験がないのでよくわからないが、訴訟が起こされている事実を知らせなければはじまらないので、効果があることを願うところだ。

 ただ、惜しいのは書面の送付時期が少し遅くなってしまったところで、書面の送付日に第三者機関の議事録等を掲載しているHPを確認したところ、すでに訴訟対象となっている回までの議事録がアップ済みだった。これだと、書面を受け取った時期までに消去していたと言われてしまう可能性がある。やっぱり、タイミングが何をおいても重要だよなあと思う。
by clearinghouse | 2006-12-22 19:13

 一昨日(18日)、必要があって、次の通常国会で提出されるであろう法案の担当部署を捜索。最初に電話をした先で、担当部署は建物が別ということで連絡先を教えてもらい2件目に電話。そこで話をしていたら、どうも担当部署として間違いではないが担当者が別のようで、別の電話番号を教えられる。ようやく3件目でどうやら担当にたどりついたようで、用件を伝えられた。同じ担当を知人も捜索して同じような経緯をたどったようで、「たらい回しにされた」というメールがきた。いつものことだが、担当を知らない制度・政策について行政機関内で担当を探し出すのは結構大変。

 そして、今日(20日)付けで、横須賀市に情報公開条例の見直しに関する意見書を、いろいろと思い悩みながらようやく書き終え、FAXで送信。やっぱり、よそ様のことなので書きにくい。そして眠くて腰痛(涙)。これまで時間がなくて怠っていたが、21日に条例の見直しを検討する横須賀市の情報公開審査会が開かれ、そろそろ答申がまとまるかどうかという段階なので、横須賀市民にもこの話しをまわさなければとつくづく思う。(見直しについては、「営利目的の利用を今さだ問題視するのはちょっと違う」を参照。)

 意見書のそのものはそのうちクリアリングハウスのHPにアップするが、意見書を書くために改めて見直し検討の関係資料を読むと、原則と枝葉が入り混じって何を原則としているのかと思ってしまうろころがある。特に、審査会への当初の諮問内容は、商業目的での制度利用が多く、それに関連していろいろと支障・問題があることについて、行政側の感情的な意識が強くでてしまっている気がする。気持ちはわからなくもないが、感情的な要素の入った、原則と枝葉の入り混じった制度議論は、目前の事象にとらわれすぎていて筋が良くない。長い目で見れば害が多くて得るものが少なく、悪貨が良貨を駆逐する結果になるのではないかと思うのだが、どんなものだろうか。

 一応、審査会の方向は当初の諮問内容よりは、より健全な方向にあるようだ。一般的に第三者機関がある程度主体的に機能していないと、諮問内容がそのまま微修正程度で答申になってしまうこともあるので、それなりに第三者機関が機能していると思われる。この辺については、バランス感覚をもって、ぶれすぎないように対応することが肝要だ思うけど、この件に限らず、一般的に何となくそのバランス感覚が機能しているのだろうか、と漠然と不安。今回は、市側に立ったちょうちん記事と思しき報道があったので気付いたけど、気付かないところでいろいろと変わっていっているような気がする。
by clearinghouse | 2006-12-20 05:10

 9月に行なわれた、行政管理研究センターによる情報公開・個人情報保護審査会委員交流フォーラムの内容が、『季刊情報公開・個人情報保護』に掲載されるとのこと。このフォーラムで私も報告をさせてもらったので、その原稿の校正依頼が来て、一応一通り原稿に目を通して確認したところで改めて気になったのが、法人の印影の公開をめぐるフォーラムでの議論。

 法人の印影の公開をめぐっては、自治体や国の行政機関によって若干判断が異なっている。自治体の中には、組織印・代表印ともに非公開扱いをする場合もあるが、一方で組織印は公開、通常は登記される代表印は非公開としているところもあるし、両方とも公開というところもある。国の行政機関の場合、2004年時点で私が確認した範囲では、多くの省庁等が両方とも非公開としているが、一方で厚労省、内閣府、内閣官房、環境省などは両方とも公開している。非公開とする場合の理由は、印影等を公開すると偽造されるなどして法人の正当な利益を害するというものが多く、自治体の中には公共の安全に係る情報として判断する場合もある。

 くだんのフォーラムで話題になったのは、印影が確認できないと例えば請求書や見積もりが偽造されていないか確認できないという声が請求者にあるので、コピーは不可だが閲覧は可という方法がとれないかというもの。フォーラムでは、この話を聞きながら漠然と考えていて口にはしなかったのが、一体、何を守るためにこの議論をしているのかということ。偽造されるおそれがあるといえば、使っている書体、印影のおおよその大きさ、印鑑に彫られている内容が確認できさえすれば、その辺で簡単にその印影に似たものを作ることができてしまう。よほどの特注品でなければ、通常は印鑑の大きさや書体は、すでにあるものから選んで発注するからだ。

 そこで、本物ではなくて似たような印影であれば良く法人の利益を害さないという理屈が立つかというと、そういう問題でもないと思う。というのも、普通は、印影が本物かどうか、公証力のあるものかどうかは、印影を見ただけでは判断できないからだ。公証力を持つ印影ということになると、印鑑証明書の添付がなければならない。この印影が偽造され、印鑑証明書とともに利用されるとなると、法人としての利益は著しく侵害されることになる。しかし、印鑑証明書の添付を求めるような場面はかなり限られる。

 そこで、現在の印影を非公開とすることの建前的な保護法益は何かを考えると、閲覧という選択肢は建前的な保護法益を侵害することになると思われる。一方で、一般的には、 印影があることをもって一定の信頼性があると理解されるだろうが、本当に法人の利益に関わるような場面では、印影だけですべてを判断することはないだろう。もちろん、印影を偽造する、あるいは本物に近い偽物を作って有印文書を作成するはの犯罪行為だが、印影がどの意味で法人の利益を侵害するとするのかについては、個人的には何となく気持ちの悪い感じ。さらに気持ちの悪い感じを助長するのが、印影を公開しているところが実際にあるという事実だ。

 というわけで、実際のところは良くわからない。ただ、条文をこねくり回すような議論をしていると、本筋を見誤りそうで不毛な気もするので、この辺でやめておこうとだけは思うけど。
by clearinghouse | 2006-12-14 01:42

日々、いろいろ

 米軍ヘリ墜落事故の情報公開訴訟は、12月11日付で福岡高裁に控訴されたとのこと。控訴状とともに原告からご報告をいただきました。

 12月11日は、Nautilus Institute(サンフランシスコにあるNPO)の関係者が来所。昨年から一緒に進めようと言われていたプロジェクトの件で再度打合せ。昨年の時点では、日本、アメリカ、オーストラリアで同一テーマで情報公開を求めて行こうということだったが、今回はその話ではなく日本サイドの情報収集を進めたいとのことで、近く情報公開請求等に入ることになるだろう。アメリカでも同様の情報公開請求を進めているようなので、あとできちんと比較すると面白いかなあと思う。特に、外交防衛関係の情報なので、違いが顕著に出てくるかも知れない。

 そういえば、Nautilusという単語を見るたび、全然関係ないのにジュール・ヴェルヌの小説『海底二万里』の潜水艦ノーチラス号とネモ船長を毎回思い出してしまう。特に好きな小説でもなかったのに、何でだろう。

 今日は、ジャパン・プライバシー・センターの関係者が来所。執筆を依頼されて書いた原稿が掲載された『日本プライバシー白書2007』(矢野経済研究所)が出来上がったとのことで、持ってきていただき、ついでにいろいろとお話しする。白書が発行されたことは報道発表で少し前から知っていたので発行元のHPを見たが、あまりにかわいくない金額がついていたもので、小心者の私としては見た瞬間、固まりました。1部、贈呈していただいたが、多分私の原稿料よりあれですね、これは。

 そして最後に、ようやく今日になって、横須賀市の情報公開条例改正の検討の方向について、なかなかつかまらなかった担当者と話しが少しだけできる(改正については、「営利目的の利用を今さだ問題視するのはちょっと違う」をご覧ください。)。何度、電話したかというところに、電話を受けた職員が折り返すとして了解した日に電話がなかった上に、今回つながったらあまりにも不機嫌そうな対応なもので、何ですなあと思いつつ、素案が11月の審査会にかかっているので方向性等について確認したい点を確認する。

 電話でのやり取りでは、担当者は素案で示した方向性についても決まっていないと言い、素案とは意思決定されたものではないのでそういうものだと思うが、一方で、こちらで聞いた内容についても検討しているという。しかし、こちらの話はそもそも素案とはまったく方向性の違うものなのに、これからその方向にも変わる可能性があるというのは、どう評価して良いものやら。結局、大転換をするためには、審査会委員自ら答申を書けということですわね、これは、と思う。とりあえず、次回の日程(12月21日開催予定)を確認し、意見書を出させてもらいます、とだけ言い電話を切ったが、こういう自治体職員の応対は久しぶりですね。この仕事始めたばかりの10年前がフラッシュバックしましたわ。ただ、10年前はこっちの方が当たり前という感じだったので、久しぶりだ、と思えるだけ世の中は変わっているということなのかもしれないですけど。
by clearinghouse | 2006-12-12 17:50

 年末だからなのか何というか、例年この時期は外出予定が多くて、日中事務所に腰を落ち着けて仕事ができない日々が続くが、今年はかなりひどいかも。この3週間くらいは、外をうろうろしている時間が長いが、別に事務所でしなければならない仕事がその分減るわけではないので、一向に仕事が進まない。そして、とりえあず眠い・・・

 今日は、日弁連行政訴訟センターの行政不服審査法改正勉強会に呼んでいただいたので、情報公開審査会制度について話しをしてきた。行政不服審査法の見直しの検討が総務省で行われているので、それへの対応の一環として、情報公開審査会関係と、建築審査会・開発審査会関係について講師を呼んでの勉強会だったよう。建築審査会・開発審査会関係は弁護士の方が現状と課題を話され、私は情報公開審査会制度の現状と課題について話す。

 が、何で私が呼ばれたんだろうという気も。不服を申し立てる側の人間として呼んでいただいたんだろうと思うが、行ってみてやはり出席されている弁護士の方の中には各地で情報公開審査会の委員のご経験のある方がいたし、審査会には各地で弁護士が関与しているので、いろいろ現状・問題を知っている人がいるだろうし。

 ただ、呼んでいただいてこちらの考えている課題等々を話す場をいただいたのはよかった。審査会制度については、個人的には①申立人としての立場、②申立人をサポートする立場、③審査会委員としての立場、と3つの方面から関わって見てきているので、いろいろ思うところもある。行政不服審査法についても同様。こんなことをまとまって話す機会なんてめったにないから、話す準備の過程でいろいろ自分の頭も整理されるし、質問をされるとその中で自分なりに新しい制度に対する観点も出てくる。

 それにしても、重要なのにあまりにも地味すぎてほとんど一般には関心がもたれていない行政不服審査法の見直し。こういう基本的な市民の権利救済制度に関心が向かないのは、技術的過ぎてしかたがないというべきか、何というべきか。
by clearinghouse | 2006-12-06 20:49

 今日は、総務省統計局の国勢統計課と調査企画課と、次回の国勢調査(2010年実施)に関して1時間半ほど話し合い。国勢調査の見直しを求める会の共同代表2人と一緒に行ってきた
。国勢統計課が国勢調査の企画等、調査企画課は指定統計業務の民間開放や一次統計データの民間利用について所管。今日は、主に次回の国勢調査の実施についての話が中心で、民間開放などについては別に会合を設けることになった。

 前回の国勢調査を受けて、すでに有識者懇談会が国勢調査の実施方法等についての見直しについて検討し、報告書が出されている。

 国勢調査の実施に関する有識者懇談会
 http://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kokusei/kondan.htm

 前回の国勢調査は実施に当たって問題噴出だったことを受けて、国勢調査その者の見直しではなく、調査の実施方法などについて有識者懇談会の報告書では従来の手法等の大幅な見直しを求めていた。そして、実施方法等などを具体的に決めていく過程で第三者の意見を聞くため、「平成22年国勢調査の企画に関する検討会」が設けられ、11月に第1回会合が開かれたところだ。

 平成22年国勢調査の企画に関する検討会
 http://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kokusei/kentou/kentou.htm

 こういうタイミングで統計局に行った理由は、今後、どのように調査方法等が決められていくのかという手順や現状について把握することと、現在、調査実施方法等で検討項目に挙がっている内容についての確認をするため。いろいろと話をしたが、従来は次回国勢調査に向けての一次調査が終わってからしか情報が出てこなかったのが、検討会を設けたことで情報が出てくることになったのは良い。検討会での検討と平行して、「協議会」も行い、国勢調査に関わる自治体をはじめとした関係団体にもいろいろと意見を聞きながら進める予定とのこと。

 次回国勢調査に向けた一次調査では、産業分類と職業分類については従来の記述方式とマークによる選択方式、調査票の全封入と未封入など、従来型と新しい方式の2通りを行なって結果を検討するとのこと。おそらく最大課題となると思われる、国勢調査の実施に当たって事前に住民基本台帳等から世帯主情報を出力して、それを調査員に調査に当って利用させるかどうかについては、これからの検討課題。ただ、前回の国勢調査で、口頭で調査員が世帯の人数と男女別の人数を訪ねて回ったことがトラブルの原因となったが、その原因となった調査員が作成する「世帯名簿」については、世帯の人数や男女別の人数を記載しない方式に変更するとのこと。しかし、住基情報の利用は、かなり大きな問題なので、どのような枠組みで話しが動くのか、注意が必要だろう。

 それに、国勢調査については指定統計業務の民間開放や、一次データの民間利用という別の枠組みでの動きもあるので、これまで異なり、国勢調査の実施についてだけみていれば良いということでもなく、いくつかの動きを併せてみてく必要がある。こちらの方まで今日は時間切れで話ができなかったので、日を改めてということになった。何だか、いろいろややこしい・・・。
by clearinghouse | 2006-12-04 22:32

 電子決裁等のできる文書管理システムを導入する自治体が増えている。このシステムが導入されると、電子決裁・供覧が行われた文書は、紙の添付文書がなければ電子的に保存・管理されることになり、管理上の必要性から文書件名や所管課、作成年月日や保存年限などの基本的なデータが作成されることになる。ここで作成される文書件名等を利用して、インターネット上で公文書検索システムを提供する自治体が徐々に増えている。

 このシステムについては、各自治体のウェブを見ても電子決裁等文書しか検索できないことの説明がないことには大いに不満なのだが、、利便性の向上という点から歓迎している。ただ、電子決裁等文書しか検索できないということは、使う側も十分に理解をして使わないと危ないので、あくまでも補助的な手段と考える必要もある。

 この公文書検索システムで検索できる文書件名に、個人情報が混ざっていたことが三重県内部で発覚したのは、10月5日のことだ。職員が検索していて偶然に見つけたとのことで、検索システムを停止し、翌日には報道発表されているが、この情報に触れて驚いたのが、児童相談所の療育手帳の判定を受けた児童の氏名が、5件の文書件名に記載されていたということだったからだ。

 療育手帳は知的障害児に発行されるもので、これに関わる氏名はきわめてセンシティブなもの。よりによって、というところだが、これを受けて三重県で実施したシステムに入っている公文書件名の点検結果が11月29日に出されて、また驚いた。今回新たに見つかった件名に個人情報が含まれていたのは13件。2002年度前期分の授業料減免措置を受けた県立看護大の学生の姓や、生活保護の受給停止手続き中の個人の姓名、県立高校であしなが育英会の貸与終了に関する書類で個人の姓名が含まれていたからだ。こちらもきわめてセンシティブなもの。他にも用地交渉記録、用地取得の契約文書に個人情報が含まれていた。

 11月29日付で再発防止策として、文書作成事務のチェック体制の徹底により、文書件名保存での誤りを改善するとしている。文書管理システムと公文書検索システムはイコールの情報が記載されているとは限らず、件名から非公開情報を除いて検索システム用のデータが作られるのが通常だ。三重県では、この検索システム用のデータ作成に誤りがあったことが問題の原因なので、ここのチェック体制の強化を対策としているが、今回の問題からは、療育手帳や生活保護というセンシティブ情報の塊を扱う担当部署の感覚の緩さに致命的なものを感じてしまう。

 三重県の対応としては、職員が発見した文書件名への個人名の掲載を発覚後すぐに公表し、その後に調査してフォローし、結果を公表したところはえらい。内部で発見した問題は、こっそりと処理されてもおかしくない。当面は、問題を起こした部署は特に大いに緊張感を持って対応に当るだろう。ただ、「感覚の緩さ」は気になるなあ。

 三重県県ホームページ・公文書検索ページへの個人情報掲載に関する点検結果
 http://www.pref.mie.jp/TOPICS/2006110398.htm
by clearinghouse | 2006-12-02 01:55