「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」の第1回会合が開かれました。

 一時期は、記録がみんなリサイクルされてトイレットペーパーになって流されてしまったかと思いましたが、「核密約」については、それを裏付ける記録が外務省の保管資料で発見されたと報じられました。良心は多少なりともあったんだと、変な安堵感があります。

機密文書、溶かして固めてトイレットペーパーに 外務省(2009年7月11日 朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/0711/TKY200907100424.html

 外務大臣が9月に調査を指示した密約は、

 ①1960年1月の安保条約改定時の、核持ち込みに関する「密約」
 ②同じく、調整半島有事の際の戦闘作戦行為に関する「密約」
 ③1972年の沖縄返還時の、有事の際の核持ち込みに関する「密約」
 ④同じく、原状回復補償費の肩代わりに関する「密約」

がありますが、報道を見る限りは「核密約」に関わる記録が確認できたとしか出ていないので、②と④はどうだったのでしょうか。核密約も、報道の限りでは①に関する内容に関するもののようでもあります。

 外務省の11月24日付の報道発表資料によると、有識者委員会は、「いわゆる『密約』の存否・内容に関連するものとして特定した文書並びにこれに関する必要な文書を、外務省内で閲覧することができます」とありますので、今回の外務省内での調査で、①~④に関連する文書の存否が確認されているのは確かでしょう。報道は核密約のみでしたが、その他については一定の記録の特定はしたが、確認できる内容がなかった、ということなのでしょうか。

 とりあえずのところ、④の関連文書については、その不存在決定を争う情報公開訴訟の原告であるのです。訴訟が継続されるのかどうかという問題もあるし、年明けに向けて原告側が準備書面を出す予定になっているので、本当ははっきりして欲しいところです。

 ところで、前述の報道発表資料によると、有識者委員会は、外務省内に設置された、いわゆる「密約」問題に関する調査チームの作成した調査報告書の内容を検証して、これを踏まえた報告書を外務大臣に提出することが任務とされています。また、密約の存否・内容に関する検証に加えて、さらに当時の時代背景を踏まえた歴史的評価もし、報告書には外交文書の公開のあり方について提言も含めるとなっています。

 すでに密約があったかなかったか、という問題だけでなく、その歴史的検証を行うことも課題となっているのは、単にあったなかったかだけでは済まない、もっと別の問題があると考えるべきなのでしょう。それが何かの伏線なのか、それとも単に歴代政権に対する歴史的評価という意味合いだけなのか、よくわかりませんが、こうした外交情報の扱いをこの政権がどうして行くのかということを図る一つの方向が見えることになるのだろうと思います。

 有識者委員会では外交文書の公開の在り方も検討されるということです。情報公開法の不開示事由との関係や、公文書管理法との関係などでどのような検討と整理がなされるのか、非常に気になるところです。外務省の情報公開法審査基準によると、情報公開法5条3号の外交関係の不開示事由では、ほぼいわゆる外交記録は不開示という基準です。これまで、外交記録公開制度により公開された外交記録はありますが、30年を経過しても思うようには公開が進められていないところです。

 こうした記録の公開をどう進めるかは、情報公開法と歴史的文書の利用を進める公文書管理法だけでは、難しいかなと思うところがあります。外務省保有文書については、敵視的文書は国立公文書館への移管ではなく、外交資料館という外部省内部での移管になるからです。

 外交記録について確実に正しい記録を作成・取得して管理し、公開し、残していく枠組みをどう作るかは、以前から周辺でも話題になっているところで、単なる話題にするのではなく、どうするかを具体的に議論するタイミングが来たんだと思うところです。


いわゆる「密約」問題の調査について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mitsuyaku.html
by clearinghouse | 2009-11-27 23:23

 知る権利ネットワーク関西の公文書管理法の学習会に講師としてお招きいただき、久しぶりに大阪に。

 久しく会っていない友人に会うため前日から大阪に行き、今日の午後は学習会、その後懇親会と、旧交を温める週末になりました。

 学習会では、本当に「何年ぶり?」という知人たちに多く会うことができ、その後の懇親会ではお互いの近況、政権交代、首長が変わった地域の状況などなど、いろいろ話ができてよかった。みなさん変わりなくお元気そうでよかったと思いつつ、いつもいるはずの人が体調不良で来られないなど、ちょっと心配なところも。

 学習会は、公文書管理法がどういう法律なのかという話だけでなく、行政文書管理の現状や外国の制度、これからの法施行に向けた動きなど、いろいろお話しました。冒頭、公文書管理に関わる問題でどのような経験があるか、という話を会場にふったところ、参加者は情報公開請求に関しては歴戦のつわもの揃い。いろいろな事例が次々とあげられ、とても勉強になりました。情報公開制度にかかわると、必ず行き当たる問題でもあるんですよね~

 参加者の関心は多岐にわたりますが、やはり政権交代によってこれからどうなるのか、ということは共通の関心事ではありました。情報公開法や公文書管理法、そして衆議院の解散によって廃案になった改正行政不服審査法のことなど。もちろん、官房機密費の官房長官発言も話題に。

 元気をもらって帰ってきました。
by clearinghouse | 2009-11-15 23:52

 11月10日は、東京地裁で沖縄返還密約の情報公開訴訟の弁論。沖縄返還密約の情報公開訴訟は2件の訴訟が並行して進んでいます。一つは、華々しく西山さんら多くの原告を立てて進められているもので、次回の弁論で吉野文六(元外務省アメリカ局長)の証人申請がされると報道されているもの。もうひとつが、私が原告のもの。請求している内容が若干異なっています。

 自分の訴訟もなかなか弁論に行けずにいましたが、今回は久しぶりに弁論に行くことができました。

 弁論の前に、被告である国から準備書面が出されました。請求していた文書は「沖縄返還に伴い、アメリカが支払うべき返還軍用地の原状回復費を日本政府が肩代わりすることを約束あるいは合意した内容を示す文書」。これについて、被告である国はこちら側の立証の問題から、いろいろ反論をしているところなのですが、気になったのは、現在外務大臣から命じられている密約問題に関する調査について言及をしているところ。

「なお、沖縄返還に際するアメリカ合衆国政府による日本国民に対する土地の原状回復のための自発的支払いをめるぐ問題を含む、いわゆる「密約問題」については…」

 日本語がとっても分かりにくい。自発的支払いは、日本によるものということなのだと思うのですが…

 いずれにしても、政府は原状回復費については、約束や合意ではなく「自発的支払い」だから一方的に勝手に日本側が支払ったという意味合いを含めているのでしょうか。

 ちなみに、外務大臣が調査を命じた内容は、以下で見ることができます。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/pdfs/g_0909_08.pdf

 この指示では、「原状回復補償費の肩代わりに関する密約」が調査事項にあがっています。

 外務省が何をしたいのか、よくわからなくなってきました…。次回の弁論は1月。しばらく訴訟が続きそうです。
 
by clearinghouse | 2009-11-12 06:00

 官房長官が、官房機密費をオープンにして行く考えはないと記者会見で発言したことがニュースになっています。

「官房機密費 「オープンにしていく考えない」平野官房長官(毎日新聞)」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091105-00000029-maip-pol

 官房機密費をオープンにするかどうかも非常に重要な問題ですが、官房長官が支出の適正さについて「私が責任を持って判断する。信頼いただきたい」と発言されていることに、個人的には一番脱力してしまいました。

 適正性や信頼性をどう確保するかという問題で、例えば基準の明確化、記録を残して客観的な裏づけとして情報公開を可能にする、リアルタイムの公開が難しくても歴史的文書として後世の検証に委ねる、というような方法がこれまで議論され、制度化されてきました。どれも「情報公開」の問題とその前提としての「記録」の問題なのです。

 ルール化を図ることによって、抽象的な「信頼」を法的に担保するための努力をしてきたのがこれまでの流れだと思います。要は「法治」を実現するための努力です。

 ところが、「私が責任を持って判断する。信頼いただきたい」というのは、そこからまったく逸脱してしまっています。官房長官は、信頼されるためにこれから何をするのでしょう。信頼してほしいということは、それを得るために何をするのかも一緒に明らかにして欲しいところです。

 首相は、上の記事によると「官房長官は信頼できる人物だ」と強調されたそうで、なんだか、情報公開を進める活動をやってきた者としては、一抹の虚しさを覚えます。
 
by clearinghouse | 2009-11-07 13:38

 法務省にある司法試験委員会の会議内容を録音した録音物は行政文書か?

 そのことの答えが出るまでに、5年が費やされました。当事者としては、長かったと思うところです。

 もともとは新司法試験の合格者数について議論をした司法試験委員会の議事録が、速記録に近いのに発言者名がない「議事概」であったので、それは良くないということで録音物の請求という話に展開したものでした。ところが、法務省が、録音物は行政文書ではない、要は個人メモです、と判断したことで、不服申し立てと訴訟を並行して提起。訴訟では、録音物は行政文書としつつも、不開示情報に該当するため、請求却下ということで終結していました。

 その後、不服申し立てが審査会に審問され、この7月に答申が出ていました。そこでも、録音物は行政文書、しかし不開示情報なので開示はしないということになり、最終的には法務省からその内容で決定通知書が出されました。

 すっかり紹介が遅くなりましたが、今回、特に興味深かったことがあります。それは、不存在も不開示事由の該当もいずれも拒否処分とし、行政文書に該当するか否かという判断と、行政文書であった場合の不開示事由該当性が一緒の溯上にのったことです。法務省は、不開示決定通知で行政文書を保有・取得していないという理由とともに、仮に存在するとするとこれこれの不開示事由に該当すると理由を記載していました。そのため、同時並行で争いが進むことになりました。

 行政文書該当性を争う場合、行政文書であると判断されて、そこから不開示事由に該当することを理由に不開示とされると、また争わなければならないということになるので、今回のケースのように一度に争えることは申立人の利益にもなります。しかし、理由付記の仕方によってそれができたりできなかったりでは、それは良くない。だから、運用の中でどう取り扱うのか、基準を作ることが必要だと思うところです。

 答申は、以下に掲載されています。

 司法試験委員会の議事内容の録音テープ等の不開示決定に関する件(平成20年(行情)諮問第440号)
 http://www8.cao.go.jp/jyouhou/tousin/h21-04/157.pdf
by clearinghouse | 2009-11-04 23:22