少し前ですが、渋谷区議会で、情報公開請求で公開された文書のコピー代を値上げする請願が可決されたという報道が…

 渋谷区議会:情報公開請求コピー代、値上げ検討請願採択 /東京(毎日新聞 2012年10月18日)
 http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20121018ddlk13010189000c.html

 請願の紹介議員は、公明党、自民党、新民主渋谷の3議員。新民主渋谷は、民主党から出た議員の会派で、ネット情報だと区長与党とのこと。

 請願の内容は、以下の通り。
情報公開のコピー代について検討を求める請願

 最近、渋谷区に関するマスコミ報道で、情報公開のことが数多く見受けられます。新聞報道によると、ある区議会議員が職員の勤務日報などを2000ページも請求したと書かれていました。
 情報公開制度は、区民が区のことを良く知るうえで、非常に重要なものであると考えますが、このような大量の請求を処理するには、大変な事務量を要するのではないでしょうか。渋谷区では、情報公開時には資料1ページにつき10円のコピー代を領収すると聞きましたが、2000枚も資料を請求してもわずか2万円にすぎません。
 情報公開請求があると、資料に個人情報がないかチェックし、個人情報があるときは、その部分を黒塗りにする作業を行い。それをコピーするのだ伺いました。コンビニでコピーをとると1枚10円かかりますが、利益をあげる必要のない区役所でも、コピーを複数回行えば、コピー代の実費は10円以上かかるのではないでしょうか。
 ましてや、これらの作業は、重要な文書を扱うわけですから、委託するわけにはいかず、職員の方が作業せざるを得ません。職員の方の次官級がいくらかわかりませんが、人件費を考えたときに、資料1枚を処理するのに10円のコストであるとは考えられません。
 現在、我々区民の暮らしも苦しくなり、区の税収も減っている中で、一部の人の情報公開請求に、多くの事務量を費やすのであれば、それ相応のコピー代を求めるべきだと考えます。私たち区民の血税を有効に使ってもらうためにも、情報公開のコピー代を事務所に理見合った金額にしていただくなど検討していただきたい。

【請願項目】
 事故のコピー代は、作業時間を考慮した金額に改めるなど検討してください。


 この請願、支離滅裂なところもありながら、かなりうまく作られています。

 情報公開された文書のコピー代は、「実費」という前提で考えられていると思います。通常、実費というとコピー代の市場価格に見合ったものを徴収するということになります。だから、一般的には1枚10円。しかし、実際には部分公開を行う場合は黒塗りをするので、その場合は、1枚当たり少なくとも2枚はコピーを取るので10円ではそもそも実費はすまないということを言っているわけです。

 この理屈はそもそも破綻していることは、少し考えればわかるものです。全部公開の場合は当たりませんし、部分公開文書は複数回コピーを取ることを理由にするのであれば、黒塗りされた文書のみコピー代を余計に徴収するという理屈にもなる。また、部分公開であっても閲覧のみだと、そもそも黒塗りするためにとったコピー代も徴収できないということになります。

 そこで次に出てくるのは、職員の時間給がかかっているという話で、特定の人の情報公開請求に給与が支払われているのは、税の使途としては有効ではないので、相応の負担を請求者にしてもらうという意見です。要は、実費ではなく「手数料」を受益者負担させるべきというものです。しかし、ここであくまでもこだわっているのは、「コピー代を事務処理に見合った金額に」ということです。事務処理のコストをコピー代で徴収するということは、そもそも現実的ではなく、また請願の趣旨としては「手数料」の徴収を求めてもおかしくないのに、コピー代に話が落ちている。

 これを私なりに解釈すると、手数料の徴収となると情報公開条例の本文を改正しなければならないのですが、コピー代は条例で「区長が別に定める」としか条例には書いていないので、区長が裁量的に自分の判断で変更ができるので、「コピー代」に話を集約しているのではないかということです。
渋谷区情報公開条例
(費用負担)
第十二条 この条例の規定による公文書の閲覧又は視聴に係る手数料は、無料とする。
2 この条例の規定による公文書の写しの作成及び送付に要する費用は、公開請求者の負担とする。
3 前項に規定する費用の額は、区長が別に定める。

 情報公開条例は、仮に請求者が特定の人々に限られていたとしても、あくまでも請求権者すべてに開かれた制度です。その請求権者である区民が、コピー代を値上げしてくださいと請願し、それを議会が可決するというこの状況は、おそらく政策的な合理性ではなく、別の理屈が働いているのではないかと思います。確かに、情報公開請求の処理にかかるコストをどう考えるのかという問題はあります。情報公開をすること自体が、日常業務の一環とすれば、そもそも文書を得るというコピーの段階までは業務の範囲で、コピー代の実費のみ徴収するということになります。要は、本来は職員の所掌事務の範囲内であるということです。

 しかし、情報公開請求は、そもそもスケジュールや予定が立てられるものではなく、市民の権利行使があって初めて発生する事務です。そのため、日常のルーティンワークとは区別されやすい。しかも、予定が立たないということは、職員にとっては自分たちの都合に関係なく突然発生する事務なので、仕事が増えたとか、余計な業務という認識を生みやすい。そうすると、特定の人の情報公開請求が続き、量が多いとそれそのもに対して否定的な感情を抱く。さらに言えば、公開された情報によって、不適切な行政運営などを指摘されると、余計にそれが助長されるという悪循環に陥りやすいものです。

 そうすると、余計な仕事をさせられている/させているのだから、そのコストを受益者負担させようという話に転嫁されてしまうのです。しかし、本来は、情報公開制度は請求者に対する開示制度ですが、公開された情報は請求者しか見てはいけないものではありません。受益者は、請求をした人に一義的になりますが、本来は情報が活用されれば受益者はそこにとどまらないものです。

 この間の渋谷区の状況を断片的に報道等で見聞きしていますが、そもそもそういう議論が成立しえないような何か別の問題が、まともな議論を妨げているような印象を受けます。制度が政策論ではなく主観的な感情をもとにした狭い視野の議論に終始しないように、願いたいところです。
 
by clearinghouse | 2012-10-25 22:46

 10月10日に開催された「閣議議事録等作成・公開制度検討チーム 作業チーム」の資料が内閣官房のHPにアップされたので、読んでみました。

 閣議議事録等作成・公開制度検討チーム 作業チーム
  閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について(修正案)  
  閣議の議事録等の作成・一定期間経過後公開ルール」に関する海外現地調査について

 おそらく、この問題を議論する時の障害は、閣議についての実態が不明なままだということだと思います。

 「閣僚同士の議論は、特に重大な国家機密や高度な政治性を有する事柄も含め、自由に忌憚なく行われる必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的な一体性、統一性の確保が要請されていることから、閣議の議事概要、議事録を作成し、これを公開することは適当ではないとの考えの下、閣議の議事概要・議事録は作成されていない」(2012年7月24日公文書管理委員会「政府の意思決定にかかわる会議に関する議事概要・議事録作成の在り方<論点整理>」)という形式論が議論の土台になってしまう。当たり前ですが、これまで議事録や議事概要が作成されていないので、閣議で実質的な議論がどのくらい行われているのかといったことを検証することはできず、その保秘性の議論は、内閣法や憲法から援用される形式や建前に拠らざるを得ません。

 少なくとも、閣議が実質的な閣僚同士の議論の場になっているのかどうかは、疑問。だから、実際に閣議の議事録等を作成し、公開することにどのような支障があるのかは合理性ではなく形式論によっているので、あまり説得力がないと思います。
 
 「方向性」を見ると、閣議の主要な発言を記載した議事録を作成すること、議事録等は国立公文書館への移管を義務とすること、移管までの期間は原則30年とすることというでは、ほぼ統一した考え方になっているようです。作成する議事録は、意思決定過程の記録として「閣議における主要な発言を記載」としており、結論だけではないようです。

 「方向性」に示された案は、議院内閣制をとるイギリスとドイツへの調査を経て作成されており、現地調査に関する資料も公開されています。イギリスに近い選択をしようとしているのかなという印象です。

 イギリスの議事録の作成を見ると、議事録作成の趣旨は「議論の結果として集約することにより、個々の閣僚が結果を各自の解釈で行うことを防ぐために、慣行に基づき作成」とあります。また、議事録は官房長官と内閣官房の2名の担当者のメモの拠って作られること、官房長のメモは官房長官記録帳として保存されること、議事録は逐語ではないが、大臣の個別発言は、官房長官記録帳に示されるとしています。また、政党的な事項を扱う「政治的閣議」が年数回開催され、それは事務方が参加せず議事録も作成されないということです。

 一方、ドイツは、議事録を「議論の結果を記録するために作成」し、ワイマール共和国以降は作成されているとのこと。議事録は逐語ではなく結論の記録であるということで、作成されたメモ等の取り扱いについては記載がありません。

 「方向性」で二案示されているのは、移管前の行政文書として保有されている期間の情報公開法との関係です。

 A案は、情報公開法の開示請求の対象とし、閣議の議事録等を不開示とする根拠を法的に明確にする措置を講ずるというもの。5条6号の事務事業情報の関係が想定されているようで、解釈で行くのか、それとも法改正とするのかは「方向性」だけではわかりません。また、非公開情報に当たっても公益的に必要な場合は裁量的に公開できる規定との関係は、議事録がそれにあたる場合はこの規定で公開できるが、その場合は第三者機関の意見を聞く仕組みを検討するとしています。こちらは、5条6号との関係でどのように措置されるか次第ですが、比較的穏やかな方向性です。

 B案は、情報公開請求の適用除外とするというものです。戸籍法や刑訴法で刑事記録が情報公開法の適用外とする規定が参照されているので、それを想定しているようです。理由は、公開される余地を残すと、「閣議における議論を委縮させる恐れがあり、議事録の作成・公開を制度化する趣旨を損なう」とあります。戸籍法等は、別途閲覧・謄写の規定があるものを対象に情報公開法の適用除外としているので、閣議の議事録等をこれに当てはめるのは違うでしょう。情報公開法の適用を排除して記録の非公開を保持している、刑訴法と同じような規定が想定されるのかと思います。

 私は、B案は論外だと思っています。むしろ、内閣は国民に対して責任を負っているのであるのだから、そこの意思決定が重大な結果を国民に対して与えるような場合にまで、保秘性を最優先するような制度は、為政者のためになっても、主権者である国民のためになりません。A案を採用するにしても、やはり公益上の裁量開示規定でしか公開されないような前提があるのであれば、それは賛成できない案です。

 しかし、いずれにしても閣議の実態が不明な中で、どちらかを選ぶといわれても、選択のしようがないという気がします。むしろ、これから閣議の議事録がつくられることになって、30年後にそれが公開されたときに、中身が全くなければ閣議の正当性が疑われる。要は、形式的に権威を保ち政治性を保つことも必要だけど、中身を確かなものにしていかないと、結果的に議事録を作っても相応の政策効果が出ないということなのだと思います。
 
 閣議の議事録を作成するということは大きな一歩ではあるし、作るべきだと思いますが、合わせてもう少し機能面でのアカウンタビリティを内閣は果たしてほしいと思うところです。
 
by clearinghouse | 2012-10-12 01:15

 福島県の県民健康管理調査検討委員会の事前秘密会合問題の報道を受けて、福島県が行った調査結果が公表されていました。

  「県民健康管理調査検討委員会」の会議運営に係る調査結果について
  http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/gaiyou.pdf

 「県民健康管理調査検討委員会」の会議運営に係る調査報告書
 http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/houkokusyo.pdf

 前日にすでに各紙報道をしていて、県としては、議論の誘導やシナリオ作りはしていないという結論になっています。調査報告を見ると、調査そのものは内部調査ではありますが、それなりに細かく行ったようです。調査対象は、検討委員会の委員とオブザーバー、その他関係県職員などに対して行っていて、誰に対して調査を行ったのかも報告書に掲載。秘密会合で事前に用いられた「進行」(取り扱い注意)のうち、第3回と第6回分も公表されています。

 内部調査なのでいろいろこの検証自体に批判があると思いますが、個人的には内部としてはこれが限界なのだろうと思うようなところまでは、調査をしたのかなと思います。結局、これは当事者である検討委員会事務局と、検討委員会委員、オブザーバーからの聞き取りが中心になり、いずれも、秘密会があってそこでシナリオが出来上がっていたとなると不都合な人たちから話を聞いているわけですから、シナリオはなかったという結論のための説明になることは目に見えています。第三者が調査をしてもヒアリングに応じる側の基本姿勢がそこから大きく変わることはないでしょうし、何か新しい事実が出てこない限りは話が変わることもないのではないかと思います。

 ただ、調査報告書を読んでいて気になったことがいくつか。秘密会合というか事前会合の位置づけについては、職員や委員の間でかなり受け止めが異なっていること。委員は、①資料の事前説明を受ける場、②個人情報は人権への配慮から公開の場では議論ができない問題もある、と会合の趣旨について説明をしています。一方、職員は①事前に資料内容を説明して理解してもらう場、②ワーキンググル―プと回答しています。両者とも①については共通していますが、②は少し異なる。委員は、公開の場で議論できないことを話す場であり、職員はワーキンググループとしているので、いずれも内容についても議論をする場という理解をしていた一方で、委員の受け止めをそのまま読むと、公開の場ではできない話をして何か方向性などを決めていたとも読めます。結局は、実質的に内容に踏み込んで話をしていた可能性はかなりありそうです。ここは、秘密会合の議事録や議事概要が公開されていないので何とも言えないところです。

 また、①についてもちょっと疑問に思うところがあります。それは、資料作成がぎりぎり事前配布が困難(職員)、大量の資料を本番で配布され、短時間で判断するのは難しいため、資料の事前説明の場でもある(委員)と、資料が事前配布できない事情があることが、事前会合の正当性の根拠としています。しかし、県民健康管理調査は、すでにこのブログでも紹介しましたが、福島県立医大の倫理委員会を通している、れっきとした研究調査でもあります。実際には、検討委員会に出される資料は、相当の部分を研究調査として実施している県立医大の出してくる資料に拠っていると考えられます。

 また、検討委員会での発言内容を調整したかについての聞き取りでは、県職員は、「高度なレベルの話なので、事務局で口をはさむ余地なく、専門の委員に任せるしかない」と、職員が委員の発言抑制、誘導等はないと回答をしており、委員等からの聞き取りでも「相手は専門家であり、事務局で議論の誘導はできない」と回答されています。

 事前の資料説明と議論の誘導についての聞き取り結果を見ると、ある疑問が浮かんできます。それは、そもそも秘密会合を事務局がしきっていると考えること自体が間違っているのではないか、ということです。というのも、資料やデータを出してくるのは、調査研究として行っている福島県立医大か、基本調査で外部被ばく線量の計算をしている放医研のはず。つまり、いわゆる専門家の人たちが、「専門知識」を駆使して作り上げたものが資料として出てきているということになる。資料を作成するので事前に内容を知っている委員が、他の委員にその資料を説明して、調査研究を行っている人たちが、議論の方向付けをしているのではないかということです。いわゆる「先生」を前にして、県の職員が誘導はできないだろうと考えることもできると思います。

 そう思ったので、福島県立医大の倫理委員会に出されていた、各調査の研究計画での研究責任者、主任研究者、分担研究者と、検討委員会委員・オブザーバーがどう重なっているかを表にしてみました(表に掲載されている人々は、調査報告書で聴き取り対象となっていた委員・オブザーバーです)。

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 この表を見ると、福島県の担当部長以外は、春日さんという人を除いて、研究計画に研究にかかわる人として名前が記載されている人たちです。結局は、県民健康管理調査を研究として扱っている人たちが、自分たちの研究の内容を公共政策の場に入れ込んでいく場として、検討委員会が存在しているということに、結果的になるのでしょうか。

 秘密会合問題の本質は、もっと深いところにあるように思えてきました。
 
by clearinghouse | 2012-10-10 20:28

 明日の原子力規制委員会の会議予定を見て、「シビアアクシデント対策規制を含む基準等の策定」というものが議題に挙がっているのを発見。

 第4回原子力規制委員会の開催について(お知らせ)
 http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0004_00.pdf

 このことに関連して非常に疑問に思っているのですが、原子力規制委員会にも原子力規制庁に、原子力安全・保安院、原子力安全委員会が保有していた以上の情報が、あるのか?ということです。福島第一原発事故に関する政府事故調の一次情報は、事故調事務局にあっても、おそらく規制員会にも規制庁にも行っていないのではないかと思います。政府内で、保安院や安全委員会で東電から情報を取得して調査・検証を行った形跡がない中で、では、事故に関する情報をどこまで把握して、これからの安全審査やシビアアクシデント対策を検討しようとしているのだろうか??

 東電のテレビ会議の動画も政府が取得しているという話は聞いていないです。アメリカのNRC元委員のブラッドフォードさんを9月にお招きした際に、私自身はNRC自身にもいろいろ問題・課題はあるのではないかと思いますが、一方で、事故に関する検証はNRC内部でも行われ、電力会社から一次情報も相当に取得をして公開し、さらに事故の教訓を学ぶために2年を費やしたという話を聞いて、では、日本の規制委員会や規制庁は一体どうなっているのだろうかと心底思います。

 信頼回復とか、情報公開とか、規制委員会も規制庁も逆風からの船出で頑張りますという変な昂揚感の中で、言葉が躍っているように聞こえてしまうのですが、では、信頼回復のために事故についてどのような情報から何を学んでいるのか。そして、情報公開というけど、そもそも情報公開請求対象としてどういう情報をもっているのか、ということが一番大事。そこが空洞化しているように思えてなりません。

 結局、情報公開も信頼回復も、そのためにどういう前提や基盤を整えているのかということが伴わないと、言葉だけが躍ってしまう。そのことの怖さをかみしめているのは、市民だけなのだろうか・・・、と嘆いても始まらないので、 そうならないためにどうするのか、考えないといけませんね。
 
by clearinghouse | 2012-10-09 23:28

 毎日新聞が、県民健康管理調査検討委員会の秘密会議問題について続報。記事によると、2011年7月24日の第3回会合のために作成されたA4で2枚の「シナリオ」があり、
「ホールボディカウンターと尿(内部被ばく)検査結果について」と題した項目では「結語」として「セシウム134及び137による内部被ばくについては、合計しても1ミリシーベルト未満であり、相当に低いと評価。他の地域の住民では、さらに低いと思われる」との発言予定が記されていた。

という発言予定が記載されていたとのことです。

 福島健康調査:委員発言、県振り付け…検討委進行表を作成
 http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m040112000c.html

 福島健康調査:「結論ありき」県民憤り…検討委「進行表」
 http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m040113000c.html

 実際にその時点で出てきていたデータをもとにして結論を決めておいたのか、それとも結論に合うように情報が発信されていたのかはわかりません。この県民健康調査については、疫学研究という一面もあり、その研究計画が、福島県立医大倫理委員会での審査の際の資料として情報公開されています。福島県民の人が請求し、それをいただいていたので、ようやく整理をして情報公開クリアリングハウスのホームページに掲載しました。
 
 県民健康管理調査 福島県立医大倫理委員会資料
 http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=615

 子どもの甲状腺検査について、研究計画として「予測される研究結果並びに学術上の貢献」として以下の記載があります。
本格調査では、放射線の甲状腺に対する影響を評価でき、現時点で予想される外部及び内部被ばく線量を考慮するとその影響は極めて少ないことが明らかにできる。

 また、「研究の背景および目的」では、以下の記述も。
 東京電力福島第一原子量発電所による放射線の健康提供については、現時点での予想される外部および内部被ばく線量を考慮するときわめて少ないと考えられます。しかしながら、チェルノブイリで唯一明らかにされたのが、放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんの増加であったことから、甲状腺の長期健康管理に関しては多くの保護者の関心の一つになっています。原発事故後の県民の健康を管理するに当たり、安心していただくことが重要となります。また、チェルノブイリでは事故後4-5年後に甲状腺がんの増加を認めたことから、安全域を入れ3-4年後からの18歳以下の全県民調査を予定しております。基礎知識として放射線の影響がない場合でも、通常小児では触診で約0.1から1%前後、超音波検査で数%の甲状腺結節を認めることが予想されます。しかし、小児甲状腺がんは年間100万人あたり、1、2名程度と極めて少なく、結節の大半は良性のものです。
 このように現時点での子どもたちの健康管理の基本として、甲状腺の状態をご理解していただくことが、安心につながるものと考えております。
 そこで、本研究は、小児健康調査の基礎情報の収集を行うことを目的とします。

 何が言っているのかを私なりに丸めると、甲状腺の超音波検査では通常でも約0.1-1%の結節が見つかるけど、ほとんど良性で、甲状腺がんの発生は100万人あたり1、2名。だから、こういう情報提供をしつつ福島県で検査をすることによって、県民の皆さんは安心できるでしょう、ということでしょう。しかも、前倒しに結局なりましたが、超音波検査は事故後3、4年から実施ということを想定。

 しかし、福島県で子どもの甲状腺の超音波検査で結節・のう胞が認められた割合は、2012年9月11日の県民健康管理調査検討委員会の資料だと、

 B判定(5.1㎜以上の結節や20.1㎜以上の嚢胞を認めたもの)
  平成23年度 0.5% → 平成24年度 0.6%

 A2判定(5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの)
  平成23年度 35.3% → 平成24年度 43.1%

と通常時に比べて非常に高いです。研究予定では結節としかなく、のう胞についての記載がないのもよく理由はわからないのですが、そもそもA2判定は、どのように作られたのか?という疑問がわいてきます。というのも、A2判定は再検査の必要なしなので、いかにも問題なさそうな形式をとっているからです。医学的なことはわかりませんが、当初の想定と比べて結果がどうなのか、研究としてこの調査を行っている人たちの率直な意見を聞きたいところです。

 また、甲状腺検査を当初事故後3-4年後としていたのも実は疑問が…。

 県立医大倫理委員会に提出されていた「福島第一原子力発電所の事故に基づく周辺住民の外部被ばく線量推定のための問診票」(2011年6月24日承認)の「予測される研究結果並びに学術上の貢献」では、
①原子力発電所の大規模事故における周辺一般住民の外部被ばく線量の実測を早期に実施された事例はなく、今後の低線量被ばくに対する健康影響解明における学術的な貢献度は高い。

との記載があります。低線量被ばくの影響を早期に実施することの学術的貢献度を強調した内容です。この記述はのちに

①原子力発電所の大規模事故における周辺一般住民の外部被ばく線量の実測を早期に実施された事例はなく、今後、低線量被ばくによる健康影響を長期的に検討するにあたり、本研究で得られる結果は重要な基礎資料となる。

と修正されていますが、調査全般については早期の実施を強調し、甲状腺検査については3-4年後としたのはなぜか、非常に疑問が残ります。研究計画ではチェルノブイリの事故の甲状腺がんの発生時期に照らしてのこととされていますが、本当にそうだったのだろうかと思います。

 情報公開請求で公開された情報をもとに、一つずつ、なぜそうなのか、ということを検証していく必要性を強く感じます。
 
by clearinghouse | 2012-10-05 11:00

 今日の毎日新聞が、福島県県民健康管理調査検討委員会が、事前に秘密裏に会合を開き、健康リスクに関する評価の筋書きを決めた上で、公開の会議を行っていたことを報じています。

 福島健康調査:「秘密会」で見解すり合わせ(毎日新聞 2012.10.3)
 http://mainichi.jp/select/news/20121003k0000m040149000c.html

 福島健康調査:「秘密会」出席者に口止め 配布資料も回収(毎日新聞 2012.10.3)
 http://mainichi.jp/select/news/20121003k0000m040155000c.html

 記事によると、
「準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。」

とあり、事前に結論とそれにいたる筋道を決めた上で、公開の会議である検討委員会を行っていたということのようです。また、
「昨年5月の検討委発足に伴い約1年半にわたり開かれた秘密会は、別会場で開いて配布資料は回収し、出席者に県が口止めするほど「保秘」を徹底。県の担当者は調査結果が事前にマスコミに漏れるのを防ぐことも目的の一つだと認めた。」

ともあり、意識的に秘密裏に会合を行っていたことは明白。原子力委員会での秘密会合の開催が問題になりましたが、秘密保持を徹底して行っているあたり、それ以上に悪質であるように思います。

 公開で会議を行うことのデメリットを主張する人たちはおり、その人たちの主たる言い分には、公開でやればそれ以外のところで物事が決まるだけだ、ということがあります。確かにそういう一面はあって、その可能性は否定しません。しかし、非公開で会議を行えば足りるということではありません。非公開で会議を行いたい動機の背景には、公開の場でまともに議論をして結論を出していくという本来の会議の在り方やそのための運営、そういう場での自分の振る舞いがわかっていない人たちが、会議のメンバーであるという立場に甘んじて本来の責任から逃れるため、ということがあるように思います。そういう人たちで会議が構成されていれば、公開の場で議論を戦わせたり、様々な見解や見立てを出し合うなんてことはできないでしょう。

 会議公開の本質の中には、こういう会議しかできない人が構成メンバーになっているならば、公開の場で実態を明らかにして、自分の立場や責任、役割を認識してもらうことも含まれていると思っています。少なくとも、結論だけを聴かされる会議であれば、やる意味はあまりない。しかし、会議で決まることが政策決定や意思決定に重要な影響を及ぼすのであれば、そのプロセスの公開性や透明性を保つことで信頼性を確保することを、本来、会議の構成員は真剣に考えるべきです。

 しかし、福島県の検討委員会は、秘密会議が行われ、そこで結論に至る筋道も打ち合わせで決められていたようなので、台本があってせりふのきまっている「舞台」のようなものです。これが芸能や芸術であれば、よく練られた台本やせりふは称賛の対象になりますが、検討委員会のような民主的でなければならない場でそれをやっても誰も称賛しません。おそらく、検討委員会のメンバーは、秘密会議が1年半も続いていたところを見ると、打ち合わせで練られる内容は公開の会議での自分の役回りを確認する重要な場だと認識していたのではないかと思います。もしそうならば、そういう感覚は県民と向き合うべき調査に関わる立場としては致命的な欠陥ではないかと思います。

 また、県民健康管理調査検討委員会は、設置要綱によると、調査に関して「専門的見地から広く助言等を得る」ことを目的に設置され、

(1) 調査の実施方法等の検討に関すること。
(2) 調査の進捗管理及び評価に関すること。
(3) その他、調査の実施に必要な事項に関すること。

を所掌事項としています。「専門的見地」を提供する人たちとして、この9月の会議では以下のような人たちが委員として参加をしています。過去にはオブザーバーだった国が委員に入って来ています。
明石真言/独立行政法人放射線医学総合研究所理事
阿部正 文/公立大学法人福島県立医科大学理事兼副学長(医学部病理病態診断学講座主任(教授))
春日文子/日本学術会議副会長(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長)
神谷研二/国立大学法人広島大学原爆放射線医科学研究所長・教授(公立大学法人福島県立医科大学副学長)(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)
菅野裕之/福島県保健福祉部長
児玉和紀/公益財団法人放射線影響研究所主席研究員
佐藤敏信/環境省環境保健部長
星北斗/社団法人福島県医師会常任理事
安村誠司/公立大学法人福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座主任(教授)
山下俊一/公立大学法人福島県立医科大学副学長(福島県放射線健康リスク管理アドバイザー)

 この人たちは、いわゆる専門家たちではありますが、別の見方をすると、健康上何らかの問題が発生した場合に補償をするかどうかを一義的に決めていく人(県と国)、疫学的な調査としての専門家、被ばくに関し地域医療をコントロールしていく専門家とういう、県民という立場の当事者性とは異なる当事者による集団と見ることができます。調査をされる対象となる当事者(県民)を代弁する人は、専門家ではないから委員にはなっていないということのようです。結果的に、調査の中で行われる検査結果の本人への提供や、調査そのものが当事者である県民の支持を得ていないなど、調査の意味や正当性に疑問を持たれる状況が続いています。

 当事者の立場から見て、どのように調査を実施すべきかという、今の検討委員会の委員にはない「専門的見地」が必要のように思います。原発事故が起こった以上、健康管理を続けていくことは必要。それをどうするのかは、県民という当事者から出発して考え直すべきではないか、そう思います。
 
by clearinghouse | 2012-10-03 12:00