情報公開制度の改正議論では、必ず請求者側からは情報公開請求に対する決定期限が長期化することの問題提起があります。自治体だと14日以内の決定がおおむね原則ですが、決定延長が認められており、30日~60日の延長が可能で、さらに特例延長で無期限、処分を行う自治体側の事情で期限が決められる手続も設けられており、案件によってはかなり長期化することもあります。

 自治体の場合は、よほどの場合でなければ数カ月で決定はされると思いますが、国の場合はもっと長期化します。情報公開法では、決定期限は原則30日以内、30日の延長にさらに特例延長という手順で決定期限は延長可能で、過去の例を見ると数年単位でかかっているものもあります。自分の経験でも、請求から1年半後に最終決定というものもあります。

 情報公開請求をするときは、請求者側は今すぐ欲しい情報なので、決定延長なんてされると、かなりイラッときています。だから、決定期限の短縮は請求者側からするとかなり切実な問題です。決定期限の短縮や延長期限の期間を区切って長期化させないことは、制度改善の重要なポイントであります。

 さらに言うと、決定期限などがするりと先延ばしされた、という経験を持つ人もいると思います。

 自分のこれまでの経験だと、例えば、今の情報公開法だと、一請求につき300円の開示請求手数料がかかります。請求書を出したときは一請求のつもりでも、文書の特定の過程で請求件数が増えることがあります。そうすると、開示請求手数料を追加納付する必要が出てくるのです。この追加納付は、件数が確定した時点で行政機関から連絡があり、そこから納付されるまでが「補正期間」となります。補正期間中は、決定期限のカウントダウンはストップします。

 そうすると、例えば木曜日の遅い時間に連絡があると、開示請求手数料の納付に必要な300円の収入印紙を購入する郵便局が閉まっているので、早くても金曜日の対応になる。私のように、収入印紙の買い置きがある場合も、遅い時間の連絡だとポストの郵便物の集荷時間が過ぎているので、木曜日中に投函しても金曜日にならないと集荷されないから、配達は土曜日以降になる。結果、木曜日に開示請求手数料の補正の連絡があると、実際に開示請求手数料が届いたとなるのは月曜日ですから、4日間は補正期間となり、開示決定期限のカウントがこの期間は止まるので、決定は合法的に4日延びることになるわけです。

 また、決定期限というのもいろいろ曲者です。決定期限は、決定通知が請求者の手元に届く期限ではなく、決定通知の日付が期限内であれば良いというものです。そのため、決定期限の日付で通知は作成されているのに、請求者の手元に届いたのがその5日後なんてことも過去に自分の経験ではありました。

 そして、決定がされた=開示の実施ができる状態になっている、ということではないということもあります。要は、通知が届いたらすぐに文書の開示を受けられるかというと、必ずしもそうではないのです。決定はしたけど、実施の準備ができていないということはままあり、直接行政機関に取りに行くと連絡をすると早くなることもありますが、郵便で送ってもらおうと思うと、開示の実施を申し出てから3週間以上文書が届くまでにかかることもあります。大量の文書に大量の部分公開なんて場合は、作業に時間がかかることもありますが、3週間かけられると、決定が30日以内に出たとしても、実際に手続にかかる期間は2か月近くになります。

 これらはいずれも、情報公開法の規定からすると不適切とは言えても不適法ではないという扱いがされるケースであると思います。

 決定期限の議論をすると必ず行政側の反論として出てくるのは、現行の決定期限(30日以内)でも期限いっぱいかかるので短縮は無理であるとか、大量の文書を請求する請求者(100万枚単位を請求した人もいるよう)や、大量の請求件数を請求する人がいるので、特例延長は必要であるということであったりします。確かに、対応が難しい請求者や請求分量はあります。しかし、そういう請求者を例に出して抵抗されても、少なからぬ請求者が、何だか決定期限が合法的にするりと先延ばしされていたり、いろんなところで時間がかかったりという経験があるので、説得力はまったくないわけであります。

 こういうことは、制度の運用上、請求者が体験していても、運用報告やら答申・判例などからは見えてこないものであります。こういう請求者の「負担」が見えない中で、「偉い人」たちが制度について議論をして政策が決まっていく。そういう問題は、情報公開制度に限らずあらゆる場面で起こることでありますが、これも個々の事案を制度にすべて取り込んで対応はできない。こういうときに、どういう議論が必要か/できるのかによって、制度がより良いものになるのか、現状追従にしかならないのかが決まってしまうと言ってよいと思います。
 
by clearinghouse | 2013-03-26 21:06

 条例案が出されたことすら見落としていたのですが、ニュースを見かけてちょっと衝撃でした。

「生活保護通報」小野市条例案が成立 反響1700件(朝日新聞 2013.3.25)
http://www.asahi.com/politics/update/0325/OSK201303250033.html

 何が衝撃かといえば、生活保護費や児童扶養手当などの受給者に対して、不正受給だけでなく、受給者のお金の使い方を地域住民も監視するということを条例化したということ。そして、市民同士で監視をするということは、誰が生活保護受給者や児童扶養手当受給者であるか否かという個人情報が、地域住民にも伝えられる可能性があることを意味していると思ったからです。

 そこで、さっそく条例がどんなものか探してみたところ、議会にかかった条例案が見つかりました。

小野市福祉給付制度適正化条例
http://bit.ly/Xi3a1V

 条例を見ると、新聞記事のタイトルは今、何かと問題視される「生活保護」をタイトルに出していますが、対象となっているのは、生活保護、児童扶養手当、そのほかの福祉制度に基づく給付、であります。「福祉制度に基づく給付」は、障害者への給付などかなり広い範囲に及びそうです。

 問題のある使い方とされたのは、「パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等」で、どんな場合に住民から市に情報提供義務が発生するのかというと、「その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生ずる状況を常習的に引き起こしていると認めるとき」であるとされています(5条3項)。

 また、同じ5条では「市民及び地域社会の構成員は、生活保護制度、児童扶養手当制度その他の福祉制度が適正に運用されるよう、市及び関係機関の調査、指導等の業務に積極的に協力するものとする」との住民の義務が定められています。要は、市や関係機関が行う調査に協力義務が発生しているということなので、地域住民が受給者等に関する情報を知るということですね。

 これに対応する等に、9条2項で「偽りその他不正な手段による受給等に係る情報等の通告、通報、相談等に関係したすべての者は、正当な理由なく、その際に知り得た個人情報を他人に漏らしてはならない。」と定めています。市や関係機関で公的機関の職員は、公務員としての守秘義務や個人情報保護条例等での義務が課されており、それを破れば懲戒処分、刑事罰が科されるという懲罰がありますが、地域住民が知り得た個人情報を漏らした場合や二次利用した場合については、罰則などはないようです。

 また、「小野市福祉給付制度適正化推進員」を置くとしていて、住民から情報提供があった場合や疑わしい事実があるときは、市長がこの推進員に調査をさせる(7条1項)とされています。この推進員がどういう人がなるのか、何も書かれていないので、この人たちが個人情報保護制度上どのような義務や懲罰が課される対象になるのか、まったくわからないという条例になっています。

 朝日新聞の記事によると、市は「罰則規定はなく、強制力を伴うものではない。通報するか否かは個人の自由意思に任されている」と、この条例に引っかかったからと言って受給者を処罰するものではないとしていますが、「通報するか否かは個人の自由意思」としつつも、規定は義務規定。確かに、通報しなかったからと言ってばっそうがあるわけではありませんが…

 それに、生活保護受給や児童扶養手当、そのほかの福祉制度の給付は、いわゆる社会的弱者や何等か支援が必要な人や家庭に対する支援の仕組みで、この給付を受けているか否かは、高度なプライバシーに該当するもの。住民が、よろしくない使われ方や不正受給の調査に協力義務を負うということは、この高度なプライバシーを地域住民が知るということでもあります。自治会や町会で問題住民が話題に上って、情報が共有されて監視を強める、なんてことも実際には起こりそうです。民生委員の会合などは、かなり恐ろしい内容になることもありそうです。

 そして、「推進員」の存在。これが一番の問題であるように思います。立場や身分がはっきりしないけど、市長の判断で、詳細な実態を調査するという。この「詳細な実態の調査」とはどんなものを想定し、調査としてどこまで含まれるのでしょうかね。基本的人権の擁護との抵触との調整や、権利擁護はどう保障されるのか、いまいちわかりません。おそらく、不正受給やよろしくない使い方の常習者は、そもそも人権なんてないという前提ということなのでしょうか。

  条例を見た結論。不正受給や福祉的な金銭給付がギャンブルなどに消えていくのは確かに良くないですが、明らかにやりすぎ。こういう条例が作り出す地域社会はどういうものになるのか。わかりやすく反撃されにくいところを不満のはけ口として用意するというのは、今も昔も変わらない。そういうことなのでしょうか。
 
by clearinghouse | 2013-03-25 22:54

 環境省が行った長崎県、山梨県、青森県での子どもの甲状腺検査の結果の速報が公表されたというニュース。

 「子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果」
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130308-00000034-asahi-soci

 環境省のホームページに行くと以下の資料が出ています。

 福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果(速報)
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16419

 青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎県長崎市 で3~18歳の子ども4,500名程度に甲状腺検査を福島県内で使われている機器と同じもので行ったところ以下のような結果になったとのこと。

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 確かに、福島県内でも41・2%に2cm以下の嚢胞や5mm以下の結節が見つかっている。子どもの甲状腺検査を今のような規模で行ったことがないようなので、福島県での検査だけでなく、それを比較する別地域のデータが必要だということはよく理解できます。福島県内と同程度の嚢胞・結節が見つかったということは、おそらく福島県民の不安を取り除き、安心してもらうための材料にもなるということなのだろうと思います。

 こうした検査が無意味だとはまったく思いません。むしろこういう事態になっている以上は、疫学的な調査はどうしても必要であろうと思います。ただ、こういう情報の出方を見るたびに、何かずれている感じがします。それは、原発事故の発生により、これまではなかった環境に福島県内に住んでいる人のみならず、周辺を含めかなり広範囲の人々がさらされているということは変わらないからです。

 おそらく、今回のような他地域との検査結果の比較によって、福島県在住、あるいは事故当時に住んでいた人で安心する人もいると思います。しかし、放射線の影響を心配している人たちは、これまではなかった環境にさらされていることによって、長期的に見たときにどういう影響が出てくるかは誰も確実なことは言えないこと、影響が出る確率は低いとしても、もしかしたら自分や自分の子どもには何らか影響があるかもしれないということに不安があるのではないか。もしかしたら、という不安や懸念は、答えが出るか感覚が鈍化しない限り、ずっと続いていく。そして、自分や自分の子どもの健康は、害されればそれは治療や補償という形でしか政府や東電は補償してくれないので、あくまでも自分たちが一番厳しい現実を引き受けなければならなくなるということは、すぐにわかることでもあります。

 他地域との甲状腺検査の結果が公表されたことで、今でさえ「心配しすぎ」と言われている安心できない人たちは、ますます居心地が悪くなる、変な人と思われるということになるかもしれません。こういうことになるのは、おそらく今回の他地域での調査結果や、甲状腺検査を含む健康管理調査が、生活をしている人の日常生活や人生を支援するものという観点での本人や家族・社会への情報提供ではなく、「安心をしてもらうため」「不安を取り除く」という設定した目標を達成するためのものとして情報が流れている傾向が顕著であるからではないか。

 そんなことをずっと県民健康管理調査に関しては考えていて、今回の他地域との比較データの公表で、これをもってこれから地域で日常生活をしている人に対してどういう支援なり、不安・心配と寄り添っていくのだろうか、ということを考えざるを得ません。かといって、情報を公表しなければ良いということではまったくなく、疫学的なもの情報も含めて現実の結果は誰でもアクセスできる形で公開されるべきです。疫学的な情報と個人やその家族の個の物語は違う次元で動いているということを理解した評価なり、情報公開をする必要があるのではないかということです。

 そう考えると、「評価」をどう出すかも、疫学的な評価という個が見えない評価でもって、個人や家族という個の物語の中で同じように受け止めることが難しい人がいても何もおかしいことはない。なので、やはり生活支援という意味でもっと情報の活かし方を考えなければならなのではないか、何かいい方法はないか。ここのところ、情報公開はどんどん進めていきながら、それを当事者を支える形でどう活かしていくのかもとても重要です。
 
by clearinghouse | 2013-03-08 23:46