特定秘密保護法案に関連して、これまであまり深く考えるに至っていなかった問題の論点が、自分の中で
はっきりしてきたものがいくつかあります。

 その一つが、記録としての管理と、アクセス管理という問題です。後者については、すでに個人情報保護やセンシティブ情報の保全という意味では、セキュリティの専門家たちが深く議論をしているではないかと思います。また、民主党政権時代の有識者会議は、秘密保全法制と情報保全システムと二本立てで行われていました。特定秘密保護法案、という法制の議論をしているので、私も法制の有識者会議にしか言及をしていないのですが、情報保全システムの検討も並行して行われていました。

 情報保全システムも、情報漏えい対策だけでなく、アクセス管理をシステム的に行うということも含みます。しかし、今の法案では、記録管理とアクセス管理の問題を関連付けて議論されているとはとても思えないところがあります。

 法案の問題点はたくさんありますが、記録管理という観点から言えば、①公文書管理法の定める行政文書の管理ルールは基本的に適用外で、廃棄・移管ルールだけ適用させる、②特定秘密の記録管理も含めた管理(保護)は個別ルールで行う可能性が高い、という問題があります。

 防衛秘密が、公文書管理法の適用外で、通常の行政文書と記録としても異なる管理体系にあったこと、防衛秘密記録簿、防衛秘密管理簿、防衛秘密登録簿などとさまざまな管理用の帳簿があり、記録される内容も少しずつ相違点があるので、記録管理がどのように行われているのか、ルールを見てもよくわからないところがあります。

  こうしたルールになっているのは、防衛秘密についてはアクセス管理をしなければならないという前提で、記録管理ではなくアクセス管理のための登録管理という視点からルールが整備されてきたからではないか、と思います。

 それならば、記録管理は通常の行政文書と同じように文書の作成から行政文書としての管理ルール、廃棄・移管までの一連のライフサイクルは管理をし、別にアクセス管理のルールをシステム的にも運用的にも作ればよいのではないだろうか。この記録管理とアクセス管理を混同してルールを作ってきたのが、これまでの秘密保護法制だったのではないかと思うわけです。

 そうでなければ、そもそも公文書管理法の適用外に防衛秘密をするなんてことは起こらなかったはず。特定秘密についても、廃棄・移管については公文書管理法を適用させると政府は説明していても、文書の作成義務から管理ルールまで適用させるとは説明しないのも、記録管理とアクセス管理を混同しているから、
ということが言えるのではないかと。

 アクセス管理をする必要があるのであれば、公文書管理法の行政文書の管理は適用して、アクセス管理をする方策をとればよいだけなのにそれをしていないあたりが、秘密は自分のものという、ある意味記録の官庁による「私物化」の典型のようなありさまだということでしょうか。
 
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by clearinghouse | 2013-11-15 10:24

 日弁連が、11月13日に以下の院内集会を開催します。

 プログラム予定は以下の通りで、私も話をする時間をいただいています。事前申し込みが必要とのことですので、参加を希望される方は、下記連絡先までお問い合わせください。

◆プログラム(予定)◆

・情報公開法改正と特定秘密保護法案への日弁連の取り組み
・防衛秘密の現状と情報公開法改正のポイント(三木由希子氏(特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長))
・参加議員からの発言

>>>以下、案内

「情報公開と秘密保護の関係を考える院内集会」

 日時 2013年11月13日(水)12時~13時 (開場11時45分)
 場所 参議院議員会館地下1階 B107会議室
 参加費等 参加費無料/事前申込必要


 政府は、本年10月25日、「特定秘密の保護に関する法律案」を閣議決定し、国会へ提出しました。
 同法案については、①保護対象となる「特定秘密」の範囲が広範・不明確であること、②「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、③指定の有効期間5年を延長し続ければ指定が恒久化すること、④内部告発や取材等行為についての処罰範囲が広く、厳罰に処するものであるため、表現の自由及び報道の自由や知る権利等憲法上の権利が侵害されること、⑤適性評価制度により重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること、⑥行政機関の長の判断で「特定秘密」を国会に対しても提出を拒むことができることになっており、国会の国政調査権が空洞化され、国権の最高機関性が侵されるおそれがあることなど、様々な問題点をはらんでいます。
 当連合会は、同法案に関する議論状況に強い危機感を抱き、これまでに意見書・会長声明等を公表して問題提起してきました。この度、下記のとおり同問題に関する院内集会を開催することとなりました。今回の院内集会では、情報公開の必要性と秘密保護法の問題点について、参加者の皆様とともに考えます。奮って御参加ください。
 
 PDFチラシ兼申込用紙(PDFファイル;333KB)

 主催 日本弁護士連合会
 問い合わせ先 日本弁護士連合会法制部法制第一課
        TEL:03-3580-9881
        FAX:03-3580-9920
 
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by clearinghouse | 2013-11-10 21:27

 特定秘密保護法案に関連して、ここのところ続けて質問をされることの一つが、

「法案が仮に成立すると、特定秘密を情報公開請求したら捕まるって本当ですか?」

ということ。こういうコメントを取ろうとする方もいて、とても困っています。

 話の出どころとしては、学習会の講師がそう言っていたとか、法案の危険性を訴えるネット上の情報で見たとか、報道でそういうものを見ました、というものばかり。これに違和感を感じて質問をしている人、本気で心配している人と、質問している人の動機はさまざまです。

 これだけは断言しておきます。

 特定秘密を情報公開請求したからといって、捕まることはあり得ませんから!

 だいたい、情報公開請求の対象を特定して、それに対する開示・不開示の判断、決定をするのは行政機関の責任です。特定秘密が情報公開請求された場合は、粛々と行政内で判断・決定を制度にのっとってすればよいわけです。

 それに、そもそも特定秘密を情報公開請求の対象外としていないわけです。情報公開請求が特定秘密に対してされることは想定済みで、その不開示が争われることも想定ずみ。わざわざ、特定秘密の不開示決定に対して不服申し立てがなされた場合に、情報公開・個人情報保護審査会が特定秘密のインカメラ審理を行うこともできる、という規定も特定秘密保護法案には規定されています。

 仮に特定秘密を情報公開請求をして捕まえるとするならば、一方の情報公開法では特定秘密を請求の対象として正当な開示請求権の対象としているのに、特定秘密保護法案ではそれをトラップとしてたまたま請求した人がいたら捕まえようということ。それはあり得ないし、そこまで政府も間抜けではないでしょう。

 特定秘密の情報公開請求は、正当な権利として法的にも確立するもので、特定秘密保護法案もそれを前提にしているのに、なんで、特定秘密を情報公開請求をしたら捕まるなんてよくわからない話になっているのでしょうか。

 仮にあるとしたら、情報公開法の請求手続外での場外乱闘では何か不測の事態が起こる可能性はあるかもしれません。それも、例えば不法に侵入するとか、審査会でインカメラ審理をしているのを知っていて会議に乱入して奪取しようとするとか、あるいは請求対象の秘密をたまたま別に入手していて、それを「○○からせしめた」などとのたまわってわざとつかまりそうなことを言う、というような極端な場合に何か起こるかもという感じではないでしょうか。

 かえって特定秘密を情報公開請求すると捕まるということを信じる人が増えるほど、この法案が仮に成立した場合は、情報公開請求を自粛をするという、自主規制社会を生むことになってしまいます。このことの方が法案以上に、市民の自主性や自由を害し、社会の健全性を損なうことになり、害が大きいのではないかと思います。私は、こういう恐怖心に縛られて自主規制に陥るような社会を生むようなことを言うつもりはありません。むしろ、情報公開請求は正当な権利なのだから、臆することなく権利行使をすればよいと言い続けますし、そのための支援は惜しみません。

 問題を指摘するために何を言ってもよいというのは、大きな間違い。もはやそうなると、啓発や啓もうではなく、単なる扇動になってしまう。このことは、肝に銘じる必要があると思います。
 
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by clearinghouse | 2013-11-06 17:56

 特定秘密保護法案に対する反対の動きは、日々高まってきています。

 そんな中で、法案の問題点として、秘密指定された特定秘密の30年後の自動指定解除など、解除の仕組みが不備であることの指摘も見かけるようになりました。ただ、秘密指定の解除は、秘密指定という対象が明確になっていることが前提に機能させるものです。秘密指定制度を受け入れない限り、秘密の公開も進まないという相克がそこにはあります。

 実際、これまで政府の秘密の情報公開は進んできたのか、といえば、実際には秘密が秘密のまま闇に葬り去られる構造にあるのは間違いないでしょう。外交記録などは省秘として指定されているものが、秘密指定を解除されて外交史料館で公開が始まるなど、例外的にある程度の秘密と公開がセットになっている仕組みもあります。しかし、あくまでも省内の内部ルールとしてそれを行っているに過ぎず、他省庁では秘密と公開はセットになっていません。

 2011年に公文書管理法が施行されました。歴史的に重要な文書は廃棄されずに国立公文書館等に移管をされることになり、時間の経過とともに低減する非公開・秘密とする理由を考慮して、公開を行うことになっています。政府の秘密もこの枠組みで公開される可能性は出てきましたが、国立公文書館等への移管に当たって、秘密指定されていたかどうかを考慮する仕組みはなく、秘密であったことが認識されずに廃棄等がされることが避けられない仕組みです。

 特定秘密保護法案が仮に廃案になっても、この現実は残ってしまう。このことをどう考えるのか、これに対して何をすべきかということをスルーしてしまうと、現実として残るのは、政府の秘密は法律に寄らずに秘密となり、そのまま闇に葬り去られるという構造です。

 やや乱暴ですが、特定秘密保護法案の構造をあえて分けるならば、①秘密の保護(物理的・人的管理、罰則強化)と、②秘密の管理(指定と解除、文書管理)とすることもできる。①はいらないが、②は政府の秘密の構造にくさびを打つためには必要性が十分にある側面だろうと思います。

 法案がなければ知る権利が保障されると単純に考えている人はいないでしょう。むしろ、現に知る権利が十分に保障されていないうえに、法案が出ていることに対して、危機感を抱いている人が少なくないのではないかと思うわけです。

 秘密指定解除の必要性を認識しつつ、秘密指定に反対するという相克は、乗り越えようとするのが間違っているのか、それともそもそも触れるべきではないことなのか。あるいは、別に政策が作れるチャンスが来るのか。私たちはどんな現実と向き合っているのか、そんなことを夜な夜な考えるこの頃です。
 
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by clearinghouse | 2013-11-03 23:21