1月31日の衆議院予算委員会で、安倍首相が以下の答弁をしたということで、特定秘密文書の保存期間満了前の廃棄問題が再びニュースに。

  秘密文書、手続き抜きで廃棄も 緊急時と首相、秘密保護法で
  http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014013101002068.html

 この問題は、昨年末に以下の民主党の長妻昭衆議院議員の質問主意書への答弁ですでに出ていて、報じられていたものが改め国会でも質問されたということのよう。

○特定秘密保護法案及び防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書
<質問>
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon_pdf_s.nsf/html/shitsumon/pdfS/a185098.pdf/$File/a185098.pdf

<答弁>
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b185098.pdf/$File/b185098.pdf


 この問題に関しては、このブログでも↓で書いておいたところ。

  特定秘密は保存期間前に廃棄することも否定しないとの政府答弁
  http://johokokai.exblog.jp/21058864

 要は、防衛秘密の訓令で例外的な手続として、正規の手順を経なくてもやむを得ない事情があるときは、廃棄が可能という規定があり、特定秘密は防衛秘密を吸収するものなので、この防衛秘密の訓令で可能とされていたことは維持をするということなのだと思う。

 今回の国会答弁があって、またこの問題に頭を巡らせることとなったが、秘密指定文書の緊急時の廃棄をどう考えるかは、やはり特定秘密保護法という法制が今のところできてしまっている以上、秘密保護のために必要な措置とは何か、という枠組みの問題になっている。

 秘密の保護とは何かといえば、特定秘密への指定と、それが漏えい等で権限のない者の手に渡ることのないように保全をするという物理的な保護という二つの側面がある。

 これを踏まえて、防衛秘密の保護に関する訓令では、以下のような規定が設けられている。
第43条 3 防衛秘密に係る文書、図画又は物件を保管し、又は所持する職員は、防衛秘密の保護上真にやむを得ないと認める相当の理由があり、かつ、他に防衛秘密を保護する手段がないと認めたときは、第1項の規定にかかわらず、これらを廃棄することができる。

 これだけを見ても、「他に防衛秘密を保護する手段がないと認めるとき」とあるので、秘密保護のための措置という位置づけでこうした規定を設けている。この訓令に関する解釈運用基準(事務次官通達)を見ると、以下のようなことがこの規定に関して記されている。
防秘訓令第43条第3項に規定する場合とは、緊急やむを得ない場合を想定しているため、平時にあっては、同項を乱用することのないよう努められたい。

 乱用を禁止していないあたりが微妙。そして、さらにその下の防衛秘密の保護に関する実施要領(航空幕僚長)では、以下のような記載がある。
防衛秘密管理者補は、法第6章に規定する自衛隊の行動その他緊急事態の際における防衛秘密に係る文書等の緊急廃棄、持出要領、携行区分、保管等について必要な事項を定め、隊員に周知させておくものとする。

 これを見ると緊急時の廃棄に関しては、もっと実務レベルの事項が定められて周知されているようだ。この中に、総理の答弁で例示された「例えば有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取されるおそれがある場合」というのがあるのかもしれない。

 ちなみに、自衛隊法第6章の自衛隊の行動は以下のようなもの。自衛隊の活動そのものだからかなり幅広い。

 防衛出動
 防衛出動待機命令
 防御施設構築の措置
 国民保護等派遣
 命令による治安出動
 治安出動待機命令
 治安出動下令前に行う情報収集
 海上保安庁の統制
 要請による治安出動
 自衛隊の施設等の警護出動
 海上における警備行動
 海賊対処行動
 弾道ミサイル等に対する破壊措置
 災害派遣
 地震防災派遣
 原子力災害派遣
 領空侵犯に対する措置
 機雷等の除去
 在外邦人等の輸送
 後方地域支援等  など

 特定秘密保護法の枠組みで考えると、防衛省だけに例外的な扱いを認めるということになるのか、それ以外の外交、テロ活動防止、スパイ活動防止でも同様に緊急時の廃棄を認めるのか、という新たな問題が出てくる。それは、理屈として秘密保護のための措置として正規の手続き外の廃棄を認めるという趣旨である以上は、当然に出てくる問題だ。

 公文書管理法は、施行令、規則、ガイドラインいずれのレベルでも、行政文書の廃棄については例外的な取扱いを一切認めていない。そのため、例外的な廃棄を認めるとすると、この廃棄だけ特定秘密保護の法令の範囲内で特別の管理ルールとして定めて、公文書管理法3条の規定を適用させるということにせざるを得ない。

 このときに、防衛秘密とは比にならないような問題が出てくる。それは、外交や治安維持分野での緊急事態とは一体何かという問題だ。総理の答弁は、防衛秘密を念頭においたもの。これまで、外交や治安維持分野はこうした例外を持たずにやれてきている。知らないところで廃棄されているだけかもしれないけど…

 特定秘密保護法という枠組みが存在する前提であれば、秘密保護のための措置としての廃棄の話は消えないだろう。であれば、ここでは自衛隊の行動以外の部分で、緊急事態とは一体何なのか、防衛秘密に該当するようなもの以外でも同様の措置が必要なのかどうか、ということについて政府はもっと説明をすべきだろう。中途半端な説明は、本来必要な議論の前で議論を止めるのにはちょうど良いのだと思うけど。
 
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by clearinghouse | 2014-02-04 22:14