知り合いから4月に、「国立公文書館に特定歴史公文書等の利用が制限されたので不服申し立てをしたところ、公開範囲が拡大されたのはよいけど、部分公開状態で一度公開を受けた文書と同じものにコピー代を再請求された」という連絡がありました。

 情報公開制度を普段使っていない人は何が問題なのか?と思うかもしれません。でも、これはかなり大事な問題です。

 行政文書は情報公開法による公開請求、国立公文書館などで保管されている文書は公文書管理法による利用請求を行い、公開・非公開が判断されます。情報公開法は「不開示」、公文書管理法では「利用制限」と言いますが、かき分けるとややこしくなりそうなので、ここでは一律に非公開という言葉を使います。

 通常、非公開や部分非公開となると、それに不服があれば不服申し立てをします。この申立てが一部、あるいは全部認められると、行政機関や国立公文書館などは、当初の処分を取り消して新たに公開範囲を拡大した決定を行うという手順で対応がされます。

 この「取消し」をおこなうということは、当初の非公開・一部非公開の決定が誤っていたということを行政機関や国立公文書館等が認めたことを意味します。そのため、例えば一部非公開決定ですでに一部非公開の状態でコピー代を支払い、文書のコピーをもらっていた場合、公開範囲を拡大した文書の写しをもらうときには、再度コピー代を徴収しないという運用が少なくとも情報公開法では行われてきました。

 当初の決定が誤っていたから取り消したわけで、請求者の側には瑕疵がないわけですから、二重取りをしないというのは、理屈からすれば非常に筋が通っています。これは解釈運用基準などで示されているわけではありませんが、情報公開法施行以来、私の経験の限りではそれなりに周知されているようではあります。ときどき、行政機関に対していろいろ説明が必要な時がありますし、こうしたルールを知らずにコピー代の二重払いをしてしまっている請求者はいるかもしれないので、どの程度徹底されているのかは不明ではありますが。

 ところが、公文書管理法で特定歴史公文書の場合は、そのような取扱いを原則としていなかったのです。特定歴史公文書等が国立公文書館により一部非公開となり、それを争った結果公開範囲が拡大したので、情報公開法と同じですでにコピー代を支払っている文書に関しては、コピー代を支払う必要はないと請求者は考えていた。しかし、コピー代の支払いが求められたということで、国立公文書館に要望書を出して二重取りをしないように求めたわけです。

 しかし、国立公文書館はこの要望を拒否。この問題は、それなりに筋を通した制度の運用という意味では、請求者にとっては重要な問題です。そこで、私からも国立公文書館、内閣府公文書管理課、総務省情報公開推進室、外務省外交史料館、宮内庁宮内公文書館と電話を入れて、いろいろ見解や運用を確認してみました。

 まずは、国立公文書館。規則に書いていないのでできないの一点張り。おそらく、決定を取り消して公開範囲を拡大しているということの法的意味がよく理解されていないような感じで、日本語が通じている感じが当初せず、ちょっと困りました。結局、いったん話としては引き取られ、その後、音沙汰なし(笑)

 次に電話をしたのが総務省情報公開推進室。確認的に、決定の取り消しにより二重にコピー代が発生した場合にコピー代を徴収しないという運用を周知しているのは、何等かのバックグラウンド(判例や別の法令の解釈など)があるかの問い合わせをしてみたわけです。そうしたところ、バックグラウンドは特にないけど、法体系からすれば二重取りをしないことが整合しているとの返答がありました。そうだよね~、処分の取り消しの場合は請求者に瑕疵がないしね、と日本語が通じている感にちょっと安心。

 次に外務省に問い合わせ。ここは、情報公開の担当に外交史料館もぶら下がっているので、話が早かった。情報公開法は二重取りしていないけど、公文書管理法ではどういう扱いになるのか聞いたところ、これまでケースはないけど、同様の扱いをすることになると思うとの返答。最後に宮内公文書館に問い合わせをしたところ、今度は情報公開法とは違うので、二重取りをするとの返答。情報公開法では二重取りしないけど公文書管理法は違うというので、いやちょっと待ってよ、といろいろと話をしたところ、後日回答と言ったきり、音沙汰なし。

 で、 その後に電話をしたのが、内閣府公文書管理課。公文書管理法を所管をしているので、いったい解釈上や運用上はどういう扱いになっているのか、ということを聞いてみたわけです。一応、国立公文書館での扱いで要望が出ていること、外務省と宮内庁で異なる回答を得ていること、情報公開法での扱いも説明をしてみたのですが、なかなか何を問題にしているのかわかってもらえない感の濃いやり取りが続いて、かなり面倒な感じになってきたけど食い下がって、一応検討して回答をしてもらうことになりました。

 その返答が、1カ月近くはたっていたと思われる2、3週間前にやっと来た。結論的には、決定を取り消して公開範囲が拡大した場合は、すでにコピー代が支払われている文書については、コピー代を再請求しないことが望ましい、と考え方を取りまとめたとのことでした。内閣府から総務省に問い合わせをして情報公開法の運用も確認したらそうだったので、ということでもあり、また、宮内庁や国立公文書館からも本件に関して問い合わせが来ていたようで、まともな結論に落ち着いてよかった、というところです。

 こういう制度の運用の外縁だけど、権利行使との関係で重要な問題は、問題がわかった時点で論点をはっきりさせて、見解を整理しておかないと、この先いつまでもこの問題でもめることになります。もし、コピー代は二重取りするという結論であれば、それはそれで今度は法的に争ってそこの決着をつける必要もあります。そこまでいかずに済んで本当に良かった。問題に気づいて提起をした人は、情報公開法も公文書管理法も使って資料調査を地道にされているので、そういう経験を通じてならではです。

 ついでに残っている課題として、内閣府は国立公文書館と宮内庁には、二重取りをしないことは望ましことは伝えるけど、他の特定歴史公文書等を扱っているところ(日銀アーカイブスとか、国立大学のアーカイブとか)には周知を予定していないということなので、とりあえず全部周知したらどうですか、ということはお願いをしていますが、それがどうなったかは未確認。宮内庁と国立公文書館はいまだに音沙汰なし。だから、内閣府の見解を受けてどう対応したのかは不明です。回答をする気がないのか、それとも何かに手間取っているか不明ですが、書面で回答を求めた方が良いのかな、と思案中。

 今回は、妙に細かいお話でした。
 
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by clearinghouse | 2014-07-18 21:36

 ベネッセの大量の顧客情報漏えい事件は、いろいろな影を浮き上がらせている感があります。

 今回のような大規模な被害を拡大させた要因としては、①サービスごとのデータベースを統合して100万件単位から1000万単位のデータベースになっていた、②派遣社員によるアクセス権限の範囲が適切であったのかどうか、が主なものなのかなと思います。

 ベネッセ流出 データベース統合が被害拡大
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140713-00000078-san-soci


 ただ、今回はその問題ではなく、名簿の売買に絡んでいた福生市にある「文献社」という名称を見て、10年近く前の記憶がうっすら蘇ってきたので、手元に残っている資料を確認してみてやっぱり、という顛末だったので、そのことをご紹介。当時、住民基本台帳の大量閲覧制度というものがあり、いわゆる住民情報のうち氏名、住所、性別、生年月日の4情報が誰でも基本的に閲覧できるように提供され、DMなどの商業目的でも利用することができました。要は、市区町村のからDMの元情報が事実上ダダ漏れだった、という問題があったわけです。

 以前からこれは変えないとまずいのではと考えていて、2003~2004年にかけて全国の市民ボランティアを募って閲覧制度の運用実態調査を行っていました。調査は、閲覧制度の運用ルールを細かくヒアリング等で調査することと、実際にどのような業者がどのような目的で閲覧に来ているのかを、閲覧申請書を情報公開請求して入手し、分析することで行っています。この調査で、私は90近い市区町村で、どのような業者がどのような目的で閲覧に来ているのかをつぶさに見ることになったわけです。

 閲覧制度のお得意様は、教育関係かブライダル関係の業者。特に教育関係の業者の閲覧は多く、ベネッセも閲覧制度のヘビーユーザーだったわけです。ところが、ベネッセが直接人を雇って閲覧に来ているわけではなかった。住民情報の閲覧と書き写しを外部に委託をしていて、その委託先が福生市の「文献社」だったわけです。

 今、各地の閲覧申請書はそのほとんどが倉庫に入っていて手元にないのですが、一部手元に残っていた申請書を見ると、申請者はベネッセコーポレーション、受任者は文献社というものが出てきました。千葉県内の某市では、1年間で十数回この組み合わせの申請書が出てきます。しかも、通常は、市の申請書の書式があるのですが、ベネッセが文献社に委託して行っている申請は、独自の書式で、おそらくどの自治体でも同じものを定型的に使っているのだと思います。

 ただ、これはベネッセが問題というのではなく、もともとこの制度は住民基本台帳法で認められていたものであります。それに、通常は委託受けて閲覧申請をしていても、受託してそれをやっているとか、そういうことは明らかにしない申請の方が明らかに多い。ベネッセは、自前ではなく委託ですよと言っている時点で、文献社はこの業務で収集した個人情報を使うと、住基台帳法違反になるということが明確になっているので、他の閲覧業者より考えれば良心的ではありました。

 そして、この閲覧制度は住基台帳法が改正され、2006年に廃止されました。廃止されるまでの間は、結構うちも頑張りましたし、各地の市民や地方議員、そして自治体も頑張りました。かくして、自治体経由で住民情報がダダ漏れという状況はなくなったわけです。

 ところが、文献社のHPを見ると、2006年時点まで行っていた閲覧制度で収集した情報をもとに、鮮度を確保した個人情報を提供すると言っておられるわけです。疑問は二つ。一つは、ベネッセの委託を受けて閲覧をして個人情報を収集したのであれば、それを名簿として商売のネタにするのは、違法であるはずということです。そして2006年から8年近く経過し、住基台帳の情報はもはや鮮度が高いと言えないにもかかわらず、なぜ鮮度を確保していることを売りにしているのか。

 いろいろいこのあたりに闇が深い世界が広がっていそうです。そして、ベネッセはもともとは文献社のお得意様であったというこのシュールな状況。

 個人情報をめぐる問題は、誰が被害者かは当事者である個人としてははっきりしていても、実際にそれを使ってビジネスをしている側は、誰が被害者で誰が加害者かは、混合している世界であるとつくづく思う事件であります。
 
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by clearinghouse | 2014-07-14 20:00