情報公開クリアリングハウスのサイトの方で更新した内容ですが、こっちのブログにも転載しておきます。まったく同じ内容です。

 http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=981

====転載====

 2015年1月6日まで、行政文書管理ガイドラインの改正案に対するパブリックコメントが実施されています。

「行政文書の管理に関するガイドラインの一部改正案についての意見の募集について」(2015/1/6まで)

 ガイドラインは、公文書管理法の下で各行政機関が策定する「行政文書管理規則」の統一基準に当たるものです。タイトルだけ見ると気づきにくいのですが、今回のガイドライン改正案は、各行政機関が保有している秘密文書に関する統一基準を定めるものです。これは、現行の統一的な基準となっている、1965年の事務次官等会議申し合わせ「秘密文書等の取扱いについて」を廃止し、今後は、公文書管理法体系の中で基準を設定することになることを意味しています。

 なお、政府の秘密文書はずっと「極秘」「秘」と一部「機密」という区分で存在し、2009年からはこれに加えて特別管理秘密ができています。さらには、情報セキュリティの観点から機密の格付けをする仕組みも2005年からはじまっています。秘密の指定と管理・保全については、法律に寄らない仕組みが、過去ずっと存在をしています。

 特定秘密保護法が施行されたことにより、特別管理秘密は廃止されました。ガイドライン案は、特定秘密を除く政府の秘密文書の統一基準ということになります。基本的には、1965年の事務次官等会議申し合わせを踏襲しつつ、特定秘密や特別管理秘密の考え方を一部取り入れたものとなっていますが、特定秘密とは根本的に異なるところもあります。

 情報公開クリアリングハウスでは12月26日に勉強会を開催し、会員向けには解説版を配信していますが、どこが課題・問題かというお問合せをいただいていますので、簡単な解説概要版を掲載します。

 参考にしてぜひパブコメを書いてみてください。


1 秘密の区分(第10-2(1))

 ガイドライン案では「極秘」「秘」の2区分で秘密文書の指定をするとなっています。

 「極秘」 秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益に損害を
      与えるおそれのある情報を含む行政文書

 「秘」 極秘文書に次ぐ程度の秘密であって、関係者以外には知られてな
     らない情報を含む極秘文書以外の行政文書

 これは1965年申し合わせと何も変わっていません。これに加えて、《留意事項》に「原則として」この2区分となっているため、例外も想定されます。具体的には、現在、外務省と内閣官房で確認できる「機密」という区分があり、各行政機関の判断で設けられる可能性があるということです。特定秘密を設けたので、本来ならば「機密」という区分はいらないはずで、「原則として」は削除すべきでしょう。

 極秘・秘の定義は、いずれもかなりあいまいです。特定秘密が4分野23事項55細目が限定列挙され、「事項」を指定する仕組みです。一方で、秘密文書は「おそれのある情報を含む行政文書」というように、「行政文書」を単位に秘密指定をする仕組みになっています。具体的な項目で秘密を限定するのではなく、行政文書としての秘密性を判断するので、抽象的なレベルでの判断で指定ができるようになっているわけです。

 まずは、「行政文書」として指定をするのではなく、「事項」あるいは「項目」を指定する仕組みとすること、行政機関ごとに秘密文書の対象とする事項の基準を設けること、の2点が意見として言えることでしょう。


2 秘密指定期間(第10-2(2))

 「極秘」「秘」いずれも、期間を定めて秘密指定を行うことになっています。しかし、期間の設定は、「極秘」が5年以内の期間を設定し延長する、「秘」については期間の定めがないというように扱いが異なっています。秘密指定は文書の保存期間を超えて行えない(第10-2(3))となっているので、これが「秘」の指定期間の事実上の制限とはいえます。

 「秘」文書は、文書の保存期間が短いものも想定され、かつ指定の要件も緩やかなので、「秘」を増やさないためには、これに対する抑止的対応があった方が良いと考えます。文書の保存期間の設定を考慮して、2年間を上限に秘密指定をし、延長するなどの仕組みとすることが、意見として言えることでしょう。


3 秘密文書管理簿(第10-2(5))

 秘密文書の管理を行う簿冊についての定めです。現行制度でも、同種の管理簿が作成されている行政機関もあり、新しい仕組みというわけではありません。この「管理簿」には、①秘密文書の件名、②指定区分、③指定区分ごとの登録番号、④指定期間満了年月日、⑤提供先、⑥その他秘密文書の適正な管理を図るために必要な事項、が記載されます。

 「管理簿」は、秘密文書としての管理のためのものなので、どこに配布・回付したか、コピーを何部作製したのかなどの管理も行うもので、記録としての管理を行うものではありません。そのため、行政文書の管理とリンクをしていないものになります。

 最低限、まずは「行政文書としての保存満了年月日」や「保存期間満了後の措置(廃棄・移管)」くらいは、秘密文書管理簿に記載すべきでしょう。


4 秘密文書の管理状況報告(第10-2(7))

 これまで、秘密文書の管理状況を報告したり取りまとめる仕組みそのものが存在しませんでした。特別管理秘密を除いて、各行政機関でどのくらい秘密文書を保有しているのかという件数も把握されておらず、実態が不明なので、ここは前進です。

 ただ、秘密文書の管理状況として何を報告するのかは、明らかにされていません。

 秘密文書管理簿の記載事項は報告をすること。加えて、①秘密指定期間の統計、②指定解除・指定期間満了の件数、③秘密指定区分ごとの指定状況、④秘密文書の廃棄件数、⑤秘密文書だったものの移管件数、などは報告すべきでしょう。


5 秘密指定の解除など(モデル要領第3-2(1))

 秘密文書の指定解除、指定期間満了により解除とみなす(失効)との規定は、ガイドライン本文ではなく、各行政機関が定める秘密文書の管理に関するモデル要領に設けられています。

 秘密文書の指定についてはガイドライン本文、指定解除についてはガイドライン本文に規定していないのは、おかしいと考えています。指定解除の規定は、ガイドライン第10に設けるべきでしょう。


6 秘密指定の表示(第10-2(6)、モデル要領第4-2(1)(2))

 秘密文書には、「極秘」や「秘」を表示するというのは、これまでもこれからも変わりません。

 ただ、ここは1965年申し合わせから後退したと言える部分です。申し合わせでは、「極秘」「秘」の表示に加えて、秘密指定期間を表示することになっていました。しかし、ガイドライン改正案では、この秘密指定期間の表示を求めないこととなっています。

 このことは、秘密指定期間満了による解除との関係で問題があります。指定期間が満了すると解除とみなされますが、それは秘密文書に「指定解除」と表示することで、秘密文書ではなくなる扱いとなるようです。指定期間が満了しても解除と表示しないと、結果的に秘密文書としての扱いが継続され得ることになります。

 ここは、秘密指定期間を表示するとする、1965年申し合わせの水準は維持すべきでしょう。

 なお、特定秘密は秘密指定期間を表示しないこととなっており、秘密指定期間の延長の仕組みなどを考えると、その方が行政的な負担が少ないということのようです。秘密文書も同様の考え方を取るようですが、検討の余地のある問題であると考えています。


7 行政文書としての管理と秘密文書の管理

 この両者の管理は、別物としておこなわれています。

 特定秘密は、既存の仕組みを変えずに、特定秘密を含む行政文書ファイルを一覧化して、年1回、独立公文書管理監に提出することとなりました。特定秘密と行政文書の管理は、一応つながり得る仕組みになりました。

 秘密文書にはこのような仕組みがありません。前述の3で示した意見が、行政文書の管理と多少なりともつなげる方法ではありますが、もともとは、行政文書ファイル管理簿という、行政文書ファイルを管理するための仕組みに、秘密文書の管理が含まれていないことが課題です(行政文書ファイル管理簿は誰でもアクセスして検索できるものとして提供されています)。

 行政文書ファイル管理簿については、今回のガイドライン改正案に含まれておらず、また公文書管理法、その施行令等の改正が必要になるものになります。行政文書の管理と秘密文書の管理がリンクする仕組みを設けるべきという意見を今回は述べておいて、実際には少し先を見据えて取り組む課題と理解するとよい部分です。


 このほかにも、細かく見ていくといろいろ意見が言えるところがあると思います。上記を参考にして、パブコメを書いてみてください。(文責 三木由希子)

by clearinghouse | 2014-12-29 18:50

 原子力規制委員会が、特定秘密の指定は行わないとした件は、以下に掲載されている資料で確認ができる。
 
 https://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h26fy/data/0044_01.pdf

 大した分量ではないので全文を見るとよいと思うが、主要な部分を抜粋すると以下のような説明になっている。

(2)厳格な管理を行っている情報
 現時点で原子力規制委員会が保有する情報のうち、厳格な管理を行っている情報として、核物質防護に関する情報、核不拡散に関する情報、その他テロリズムの防止に関する情報があり、それぞれについて概要を以下に示す。

○核物質防護に関する情報
 原子炉等規制法に基づき実用炉規則において定められる特定核燃料物質の防護に係る措置の詳細に関する情報

○核不拡散に関する情報
 濃縮ウランの生産に関する情報などの核兵器転用のおそれのある技術情報

○その他テロリズムの防止に関する情報
 外国の政府機関から提供された故意による航空機衝突に関する情報等

 これを見ると、要は核物質防護に関する情報が厳格な管理対象情報として認識されていて、しかし、それらは特定秘密の要件を満たさないと判断したということだ。では核物質防護に関する情報がどうなっているかというと、原子炉等規制法、実用炉規則、核燃料物質の使用等に関する規則などに、秘密保持が規定されている。

 原子炉等規制法には2005年の改正で、秘密保持規定と罰則が設けられた。

(秘密保持義務)
第六十八条の二  原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。次項において同じ。)及びその従業者並びにこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、業務上知ることのできた特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならない。
2  国又は原子力事業者等から特定核燃料物質の防護に関する業務を委託された者及びその従業者並びにこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、その委託された業務に関して知ることのできた特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならない。
3  職務上特定核燃料物質の防護に関する秘密を知ることのできた国の行政機関又は地方公共団体の職員及びこれらの職員であつた者は、正当な理由がなく、その秘密を漏らしてはならない。

 ポイントは、①特定核燃料物質の防護に関する秘密であること、②正当な理由がなく漏らしてはならないこと、の2点だ。対象となるのは、原子力事業者等、従業者、関係する業務委託を受けた者、国・地方公務員で、罰則も規定されている。

第七十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 三十一  第六十八条の二の規定に違反した者

 この「特定核燃料物質の防護に関する秘密」とは何かというと、核燃料物質の使用等に関する規則を見ると、以下のような規定がある。これらは、原子炉等規制法の上記の規定の対象に確実になる。同様の規定が、実用炉規則にもある。

核燃料物質の使用等に関する規則
(防護措置)
第三条の三 2  前項の表第一号及び第二号の特定核燃料物質の防護のために必要な措置は、次の各号に掲げるものとする。
十九  特定核燃料物質の防護のために必要な措置に関する詳細な事項は、当該事項を知る必要があると認められる者以外の者に知られることがないよう管理すること。この場合において、特に、次に掲げる特定核燃料物質の防護に関する秘密については、秘密の範囲及び業務上知り得る者の指定その他の特定核燃料物質の防護に関する秘密の管理の方法を定めることにより、その漏えいの防止を図ること。
イ 特定核燃料物質の盗取、特定核燃料物質の取扱いに対する妨害行為又は特定核燃料物質が置かれている施設若しくは特定核燃料物質の防護のために必要な設備若しくは装置に対する破壊行為(以下「妨害破壊行為等」という。)の脅威に関する事項
ロ 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
ハ 特定核燃料物質の防護のために必要な連絡に関する詳細な事項
ニ 特定核燃料物質の防護のために必要な体制に関する詳細な事項
ホ 見張人による巡視及び監視に関する詳細な事項
ヘ 第十五号に規定する緊急時対応計画に関する詳細な事項
ト 特定核燃料物質の防護のために必要な措置の評価に関する詳細な事項
チ 令第三条第一号 イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(取扱いが容易な形態のものに限る。)の貯蔵施設に関する詳細な事項
リ 特定核燃料物質の工場又は事業所内の運搬に関する詳細な事項

 これらに挙げられていることが、原子力規制委員会が特定秘密の指定は行わないものの、厳格な管理を行っている情報に含まれるものであると理解できる。これらは、IAEAの勧告を受けて核セキュリティ対策強化の一環として進められている法令等の整備だ。

 現在、核セキュリティ対策は原子力規制員会の核セキュリティに関する検討会で、以下の点を優先課題に検討が進められている。

 ①信頼性確認制度の導入
 ②輸送時の核セキュリティ対策
 ③放射性物質及び関連施設の核セキュリティ

 ①は特定秘密保護法にいう適性確認制度(セキュリティクリアランス)で、核物質防護の観点から官民ともに対象とした職員等の信頼性確認制度を導入するというものだ。この件は、10年以上前から何度か検討され、導入されずに来ており、先に報道によれば今回は法制化はしないが導入をする方向であるようだ。

 個人的には、核セキュリティは、同位体を含む核物質を保有している以上は取り組まなければならない重要な課題であると考えている。しかし、秘密を保持して安全を確保するということは、何も起こらなければそれで成り立つが、一方で、何かが起こると影響を受けるのは周辺住民のみならず、かなり広範囲にそれが及ぶという問題になる。

 だから、この分野は社会で共有されるべき情報は何か、地元自治体が知るべき情報は何か、関係機関が把握すべき情報は何かなど、必要性や役割を抑えた整理が本当は必要なのだと思う。原子力分野は特に、公開性を意識した運営が表向きは行われる一方で、社会に対してどう誠実であるべきかという部分で決定的な信頼性の欠如があるように思うからだ。

 特定秘密保護法の議論で、原子力分野の情報が特定秘密になるかもということで、いろいろ心配をしたり問題指摘もされてきた。個人的には、特定秘密化とは別の問題がこの分野にあると考えていたので、その議論にはあまりくみしないようにしてきた。原子力規制委員会の判断も出たし、そろそろ議論を整理して行かないといけないのかなと思って、とりあえずメモとして現状だけ整理してみた。とにかく、この10年の間に核セキュリティ対策の強化という文脈では、いろんな検討がされて話が動いてきている。

 この分野も、核セキュリティの実態が見えないので、とても議論がしにくい。秘密とされる情報や分野はみんなそう。だから、どういうふうに市民社会側から議論をしていくのかは、工夫が必要。原子力分野の制度や政策に明るい人が、少し知恵を絞ってくれないかと思うこのごろ。

by clearinghouse | 2014-12-25 14:24

 特定秘密保護法の施行前に、何本もの電話が事務所にかかってきた。twitterやブログを閉鎖した方がいいでしょうか、情報公開請求をしたら捕まるのでしょうか、デモや集会もできなくなるのでしょうかなどなど。

 心配している気持ちはすごくわかる。でも、話を聞くと、twitterやブログは大体新聞記事の引用や他の公表されている情報源からの引用だという。デモや集会も、普通のもののようで、特に暴力的なのもでもなく、意思表示をしている以上のことではないよう。しかし、これまでいろいろ怖い話を聞いてきて、twitterやブログの閉鎖、削除を考えている人もいる。情報公開請求も、間違って特定秘密を請求していると、本当に逮捕されると信じている人もいた。こうした恐怖心の源をたどっていくと、そこには法律家の講演を聞いた、という話がたびたび出てきて、とても困ったこともある。おそらく、そんなことは言っていないのだろうと思うけど、問題意識を喚起するために、危機感を持ってもらうためにいった一言が、そういう理解になっているのかもと思う。そして、普通の民間企業に入るのに、セキュリティクリアランスを強制的に受けさせられるとおびえている人もいたりで、ちょっと困ったなと思う。

 確かに、絶対大丈夫なんて言えない。少なくとも情報公開請求をしただけでは捕まらないことだけは断言できるけど。そもそも、私がすべてを決められるわけではないので、絶対大丈夫かどうかと言われて、絶対大丈夫なんて言えるわけはない。だいたい、リスクは極限まで小さくする努力はできても、ゼロにすることはできないからこそ、危機管理が大事になるということは、事故や問題が起こるたびに政府に市民側が要求していることでもある。ここで、軽々に絶対大丈夫、なんていうのもおめでたすぎるし、しかし必要以上に委縮させるのもちょっと違うのではないかとも思う。だから、萎縮をしないで前に進んで行く中で、こうした法制を覆していくことが大事だ。捕まるかもとか、捕まってもよいとか、そういう覚悟や事件待ちはおいておいて、これまでやってきたことをこれまで通りにやっていくことが、社会の栄養になると思う。

 それで、特定秘密保護法のことに1年以上、多くの時間を費やしてきて思うのは、もっと現実と実態を理解して、問題提起をしていった方が良いということ。自分たちにとって有利だからと、一面だけ切り取ってどうだというのは、議論を前に進めないこともあるから。例えば、この間、内閣法制局が特定秘密保護法の必要性について疑問を呈していた、ということが法制局との協議の記録からわかったことが再三報道された。ニュースの供給という意味では、こういうネタは意味があると思う。でも、法制局との協議記録を何度もいろいろな法律で見てきている立場としては、法制局とはそういうところという以上の感想は、実はない。

 法案をつくる過程で、法制局はあらゆる視点から疑問を呈し、突っ込みを入れ、その中には市民側が主張するような内容も多々含まれている。それは、私の理解しているところでは、様々な視点からたたいたうえで、成案化していくというプロセスに過ぎない。大事なのは、焦点化すべきことは、内閣法制局は結局特定秘密保護法案にOKを出したということ。いろいろ突っ込まれていく中で、法案を所管するところはそれなりに規定を整理し、彼らなりの理論武装をしていくことになる。ひとたび成案になれば、内閣法制局はそれを否定することは絶対にしない。そこが一番のポイント。ここに反対の根拠を求めても、あまり前に進めないと思う。

 同じようなことはいろいろな場面で出てくる。原発に対する特定秘密指定問題もそうだ。SPEEDIが公表されなかったことがとても深刻な影を落としたことは悔やまれる。だから、SPEEDIが特定秘密になるのではないかという議論の立て方はちょっと違うと思っている。むしろ、原発事故が発生したときに、どのような情報公開を政府がするのか、ということがこの問題の焦点だと思う。ここを解決しないと、また避難や被ばく回避に必要な情報が、必要なタイミングで政府から出てこないことになる。

 そして、原子力関連は、規制委員会が特定秘密の指定をしないと決定し、その理由も説明した資料も公表している。だから大丈夫というわけではない。むしろ、別のところに情報を遮断する問題がある。核セキュリティという観点から、一定の秘密保護がすでに行われている。ざっと見たところでは、過去の原子炉等規制法の改正で核物質防護の観点からの秘密保持義務が強化をされ、さらに核燃料物質の使用等に関する規則でも秘密の範囲とそれを取扱う人の記録化と管理、防護措置としての秘密の範囲の指定が行われている。

 これは、原子力規制員会そのものという以上に、原子力関係事業者における秘密保護という側面が強い。加えて、原子力規制委員会での検討では法制化が見送られたが、特定秘密保護法のセキュリティクリアランスとは別に、クリアランスを行う仕組みを事業者ごとに行うことになりそうだ。私はこっちの世界に専門性はないので、情報面での動向を少しだけフォローをしているに過ぎないが、こっちの動向を良く見た方がよいと思うし、この分野に詳しく問題意識を持っている人は、おそらく注目をしているだろう。ここの議論を深堀したほうが良いと思う。

 セキュリティクリアランスと言えば、人権侵害との関係や外部で情報の紹介を受ける医療関係者からの問題がいろいろ提起されている。重要な指摘や提起だ。質問項目や様式もいろいろ問題視されているし、突っ込まれている。ただ、あの質問用紙を見て、私にはこれが、嘘や偽りを書くかどうか、書くべきことをちゃんと書くかどうかをチェックするためのものにしか思えない。だから、あの内容からチェックをするというよりは、書くべきことをちゃんと偽りなく書いているかを判別するのに使うのだろうと思う。

 そして、公務員という限定でいえば、所得や病歴、投薬歴などは民間への照会はほとんど必要としていないのではないかとも思う。どの程度現実のものになっているのかわからないので、確認をしなければと思っているが、例えば、所得や経済状況の照会先は、国税や信用情報機関で基本的には十分なのかなと思う。医療関係は、公務員が加入している健康保険は共済なのだから、そこにアクセスができれば基本的には足りるだろう。

 関係法令とのつながりをよく見なければ何とも言えないが、クリアランスのために情報を照会する権限を法で設けたので、法令に根拠のある個人情報の取得になった。提供をする側からすると、法令に基づく第三者提供、外部提供ということになり得る。クリアランスという部分では、これまで壁があった国税、信用情報、共済情報に手が伸ばせるようになった。壁が一部取り払われたということも言えそうなのだ。

 何を問題として議論をするのかは、日々学びつつ、大きな枠組み、構造の中に位置づけていかないとと、労を多くして得るものが見えない状況になりかねないと本当に思う。得るものが見えないことが、相手が悪いと自分を正当化する根拠や理由になってしまってはもっとまずい。私は、要領よく、簡単に構造の中や枠組みの中に問題を位置づけることもできないので、現実を知る努力をして、どうするかを考え形にしていくことしかできない。こういうことを簡単に乗り越えていける人は、とてもうらやましい。だからこそ、自分なりに一歩一歩進むしかない。
 
by clearinghouse | 2014-12-17 00:06

 特定秘密保護法が施行され、そろそろ良いかなと思うので、この問題についてこの際、いろいろこれまで考えてきたことを整理しておこうと思う。

 特定秘密保護法によって、罰則強化問題は別にして、政府の持つ秘密に対して関心が向いたことは逆説的だがよかったと思っている。

 個人的には情報公開法が成立した1999年当時から、次の課題と認識しつつも議論を表面的にできてこなかった、政府の秘密指定という仕組みについて、向き合わざるを得なくなった出来事だった。当時から、安全保障、治安維持分野に関しては、一定の範囲で秘密を認め、確実に公開に転換させる仕組みを入れなければ、情報公開は本質的には進まないと考えていたし、記録が残される土壌ができないだろうと考えていた。

 それは、多くの人が単純に称賛するアメリカの情報自由法や情報公開のあり方を、冷静に構造的に見れば、それが一目瞭然だったからだ。過去の外交、安全保障などの情報の公開は、秘密指定と解除によりもたらされている。加えて、情報公開の仕組みがあることが、実は情報公開が進んでいると見える、社会システムの強みだと1999年当時の私でも理解できた。

 秘密指定の仕組み自体は、秘密保護法制があろうがなかろうが日本にも存在してきている。情報公開法の検討過程でも、この秘密指定についても触れたところがある。しかし、当時の判断は、少なくとも私の理解する限り、とてもそういうことを冷静に議論できる土壌が社会にない、それは官にも市民社会にも双方に、というところだったと思う。

 結果的に、秘密指定制度に向き合わないまま、情報公開法制、公文書管理法制がなされ、秘密を民主的にコントロールすることも、それを秘密をそれとして記録管理をするという仕組みも不十分なままにきたし、今でもその問題が解決しているわけではない。実際には政府内には、内部ルールで秘密指定情報がたくさんある中で、特定秘密を特に保護する仕組みをつくろうというのが、特定秘密保護法だった。

 だから、政府が秘密が増えるわけではないと説明するのは、すべて嘘というわけではない。既に存在している秘密指定情報を、特定秘密とそれ以外の秘密に再構成するのが、特定秘密保護法の作用の一つだからだ。だから、強化した罰則の対象となる秘密とそれ以外の範囲を区切るのが特定秘密保護法だと言って良い。この考え方に対しては政府は、罰則の対象を定めるためのものではないと言っているが、それは違うと思う。特定秘密にならなければ、強化された罰則の対象にならない以上は、特定秘密にする否かは厳罰を持ってでも秘密とすべき情報か否かという判断基準がそこになければおかしいからだ。

  この秘密の民主的コントロールの問題が、特定秘密保護法のような罰則強化の議論とセットになったことが、この1年以上にわたるさまざまな状況の中での最大の不幸だと思っている。罰則は別にして、まずは秘密の総体を減らして公開に転換させる仕組みがなければ、外交、安全保障、治安維持に関する日本の情報公開はこれ以上はなかなか進まないという現実的な問題はあって、それへの解決を具体的に考えることは非常に重要な課題だと思っている。それは、秘密があるかどうかとか、秘密を認めるか否かという議論など無意味なくらい、現実に秘密指定文書がたくさんあるからだ。罰則をどうするかなんてことの前に、こっちの議論が先だったが、特定秘密保護法はそういう発想で立案されたものではそもそもないので、罰則強化による秘密の閉じ込めが問題になるのは当然の結果だった。

 特定秘密保護法が施行されて、特定秘密が増えることを警戒する人も多い。しかし、私自身は、政府の秘密総体をどうコントロールしていくかを考えていかなければ、特定秘密だけを見ても「政府の持つ秘密」という大きな問題は何も見えてこないと思う。それは、特定秘密は指定や指定期間の設定、一定の管理をしなければならず、報告義務の一定の範囲であり、まがいなりにも監視対象と認識されたものになったからだ。要は、行政的には面倒くさくわる目立ちする秘密になった。そうすると、どうしても特定秘密にしなければならない事情のあるもの以外は、特定秘密以外の内部ルールの秘密に指定しておいた方が、指定も管理も緩く扱い安いということもあり得る。要は、どっちにしておくことが「お得か」ということなのだ。特定秘密が裁量的に増え行くことも警戒をする必要があるが、こういう裁量が働きうる構造になっている。

 この特定秘密以外の内部ルールに基づく秘密指定については、統一ルールが現在検討されている。本当は、法施行までにできていなければならないはずだったものが、遅れている。こっちも見た上で、政府の秘密を総体として減らす、民主的にコントロールをする形にしないと、私たちは政府の秘密の何に向き合っているのかが分からなくなる。こうした議論の布石として、情報公開クリアリングハウスとして、現在の政府の秘密指定・秘密保護の内部ルールを調べてきた。次は、どういう仕組みが望ましいかということを形にしなければと思っている。

 情報公開が必要だとか、大事だとか、非公開はおかしいとか、秘密はおかしいとか言っていても、何も変わらない。特定秘密保護法だけ見ていても、政府の情報公開を拡大させたり、秘密を減らすことはできない。だから、特定秘密保護法の問題とともに、どんな社会を目指したいのかということも考え、そのために必要だと思うことを、一つ一つ積み上げていくことがとても大事だと思っている。それは、過去と今の類似性を指摘して危機感をあおるだけでなく、こういう積み重ねが、過去から学び、未来につなげるために必要なことは何かを考えることであるとも信じている。
  
by clearinghouse | 2014-12-14 22:59