特定秘密保護法が国会で成立する直前の2013年12月5日の4党合意で、国会にも監視機関を作る、という以下の合意をしていた与党と2つの野党。
5. 政府から特定秘密の提供を受ける場合における国会での特定秘密の保護に関する方策についての附則10条の規定に基づく検討に当たっては、特定秘密を取り扱う関係行政機関のあり方及び特定秘密の運用の状況等について審議し及びこれを監視する委員会その他の組織を国会に置くこと、国会において特定秘密の提供を受ける際の手続その他国会における特定秘密の保護措置全般について早急に検討を加え、本法施行までに結論を得るものとする。

 このために、衆議院国家安全保障問題特別委員会所属の与野党議員が、アメリカ、イギリス、ドイツに視察に行ったのは、この1月のことです。

 その後、自民党と公明党でそれぞれ国会の監視機関のあり方について党内での検討がされ、両党の間の考え方の差が結構大きいことが、この間報道されています。例えば、以下のような時事通信の記事。

 「国会監視機関、自公に隔たり=指定適否への関与焦点-特定秘密」(2014/3/10 時事通信)
 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201403/2014031000812

 議論を見るにつけ、特定秘密保護法という流れで出てきた国会監視機関であるから仕方がない部分もあるものの、国会の役割放棄としか言いようがない議論の流れで、つくづく情けないと思ってしまいます。アメリカ、イギリス、ドイツで国会議員の皆さまは何を見てきたのでしょうか。

 特定秘密の指定・解除のみを国会が監視をするという発想自体が、本当はおかしいということから議論を始めてほしいと思います。国会に特定秘密を提供する条件整備についても議論の対象になっていますが、特定秘密を見るというときは国会が行政府のとりわけ安全保障部門の秘匿性の高い政府の活動についての監視活動を行うため、という意味合いでなければ、秘密を覗き見たいだけの話になってしまいます。要は、政府が秘匿している情報を国会が提供させるということは、国会そのものが行政府に対する監視機能としての責任をまっとうするという大前提がないと本当に変な話。

 特定秘密保護法の国会審議中に、国会に特定秘密を提出する条件についても、国会議員の活動を制約するとか、国会軽視などと問題視する意見もありました。一面ありますが、むしろ、秘匿性や非公開の範囲の広い政府活動分野を、どうやって監視するのか、公開できる情報をもとにしか監視活動をしないのか、というそもそもの立法府としての役割は、議論の前提として飛んでしまっている。特定秘密保護法を批判するための議論であればそれでいいと思うんですけどね。でも、そもそも秘匿性や秘密性の高い政府活動は、暴露やリークによってしか追求できないという国会だとすると、それは本来の機能を果たして言えるのか、という疑問には誰も答えてくれません。

 そして、情報公開制度に関わっているとよく理解されていると思うのですが、そもそも情報公開制度で非公開・公開について判断するときも、請求対象になっている文書そのものだけというよりも、その文書が発生している事務事業の性質などから、その文書が非公開とするべきものかどうかを行政は判断していと思われます。非公開決定等を審査する情報公開審査会の委員をしていたことがありますが、その時も非公開文書を実際にインカメラ審理で観るだけでなく、どういう事務事業の中でどういう形で文書が作られ、どういう意味があるのかを確認するということは、最低限していました。自分が非公開を争うときも、主張はそういう視点から述べることが多い。情報は、単体で存在をしているわけではなく、仕事の中で発生しているということを忘れてはいけないと思うわけです。にもかかわらず、特定秘密を見れば特定秘密として妥当かどうかなどが適切に判断できるというのも、ちょっと変な話なんです。

 こういう話が整理されずにずるずる来ているのが、ずっと尾を引いている。くだんの時事通信の記事には、
 自民党は今月、(1)監視機関は特定秘密の内容は確認するが、政府による秘密指定が適切かどうかは判断しない(2)常任・特別委員会の要請があったときに限って開催する-との素案をまとめた。一方、公明党は、秘密の指定や解除が妥当かどうかを恒常的に判断する機関とする案を決め、自公間には大きな開きがある。
(略)
 自民党内には、もともと国会に特定秘密を提供すること自体に慎重論がある。情報漏れへの警戒が強いためで、特定秘密に触れる議員をできるだけ減らす仕組みにしたい考えだ。

とあります。自民党は、秘密指定の仕組みが適切に運用されているか否かを監視することは事実上放棄、情報漏えいへの警戒があって国会に特定秘密の提供そのものをさせたくないので、秘密を作るが秘密の中で行われている政府活動の監視は放棄する、ということを考えているよう。一方の公明党は、特定秘密を見られれば秘密指定の妥当性を判断できるという前提で考えていて、その秘密を知ることと秘密で行われている政府活動の監視というところは考慮されていないよう。

 とにかく、「特定秘密」という秘密を作り、情報漏えいや一定の条件での取得、その未遂や共謀、教唆、扇動に厳罰を科すという法律を作った以上は、秘密の中で行われている政府活動の監視は自分たちできっちりやります、責任を相応に負います、と国会は本来は言うべきなのではないか、と思うわけです。

 アメリカに視察に行ったのであれば、こういう話を聞いてきたのではないか、といいたいところです。行政監視活動が基本で、その中で機密指定制度のアセスメントもしているというのが、私が聞いてきたアメリカの上院情報問題委員会でしたし…。

 そういうわけで、特定秘密保護法をめぐる国会の監視機関の議論は、正直、国会の本来の役割放棄、そして政府の秘密を認めてその中で行われる政府の活動は監視をしないという、日本ならではのおめでたいとしか言いようがない話になっている、ということを、私たちはもっと重く見ないといけない、という話でした。
 
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# by clearinghouse | 2014-03-14 23:02

 閣議・閣僚懇談会の議事録作成がかなり中途半端な話でこの課題が収束しそうです。この議論の経緯を簡単に振り返ると次のようなものになります。

 東日本大震災関係の会議議事録未作成問題が明らかになる
  ↓
 公文書管理委員会でこの問題の検証、対策が検討される
  ↓
 その中で、政府の意思決定過程の記録作成そのものの議論になる
  ↓
 閣議議事録等作成・公開制度検討チームが設置されて具体的に検討される
  ↓ 
 以下のものが取りまとめられる 
  「閣議議事録等の作成・公開制度の方向性について」(2012/10/24)
  「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」(2012/11/29)
  ↓
 2012年12月の政権交代で話が表面的にはとん挫する
  ↓
 特定秘密保護法問題から話が及び、閣議等の議事録作成という話が表面的に復活

 「閣議議事録等の作成・公開制度の方向性について」では、議事録の作成を公文書管理法で義務付け、30年間は秘密として情報公開法による開示請求対象外とし、30年後に国立公文書館に移管をして原則公開とするというもの。「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」は、閣僚が関与する会議体が当時で174存在し、それらを分類整理して議事録・議事概要の作成については法的措置は講じないが、運用として原則としていずれかを行うこと(ただし、議事概要は例外的な場合)、10年後に国立公文書館に移管して公開を原則とすることとされていました。NSCの議事録作成も後者の問題として議論されていました。

 そもそも、こういう検討内容が取りまとめられていたのに、政権交代により放置していたのは、今の政権。やろうと思えばもっと早くできたのに、特定秘密保護法という悪役登場で印象をマイルドにするためにか再び登場したのは、与党側の思惑というところなのでしょう。そして、当初の3月5日報道では、4月1日から閣議・閣僚懇談会の議事録を作成して、3週間程度で公開をするということで、かなりかつての話よりこの部分は踏み込んだな、と思っていたところです。個人的には、30年も秘密にするようなものか??と思っていましたから。しかし、3月8日には要旨だけの公開で、議事録作成のための録音も行わないという話に変遷。

 勝手に推測をすると、集団的自衛権の行使を閣議決定によって認める、というような話が出ていて、こうしたものの正当性を示すためにも、閣議が形だけでも公開性があるかのようなイメージ作りをすることが必要だったということなのではないか、と思うわけです。よくある議論として、反対する立場は意思決定の秘密性・秘匿性を問題にしますので、「憲政史上初めて議事録作って要旨公開したんです!」と言えるようにしておけば、政権与党としては、支持者向けのアピールとしてはかなりいける、という感じなのかなとも。

 そして、閣議・閣僚懇談会の議事録作成については、以前から、閣議そのものは議事録を作って何か実質性があるような場ではない、ということは漏れ伝わっているところです。閣僚懇談会も、自由闊達な議論というよりは、あらかじめ発言内容が決められているものも多いです。実態は非公開、記録なしで行われているので経験者しかわからないというものなので、こうだとは断定できませんが。

 ただ、こういう極めて形式的な場として閣議や閣僚懇談会が行われているとすると、議事録作成のための録音はしない、職員のメモをもとに記録をおこすということだとすると、その程度の内容しかないということともいえるわけです。

 閣議や閣僚懇談会の内容が録音されて、べた起こしの速記録になると、あまりに内容がなくて恥ずかしい、ということもあり得そうです。

 というより、30年前に自治体が審議会等の議事録を一生懸命非公開としていた動機に、会議の内容がなさ過ぎて議事録はあるけど公開するのが恥ずかしい、という心の底がのちに議事録が公開されるようになって露呈をした、ということとあまり変わりがないのかもしれない、とも思うわけです。

 そうすると、閣議・閣僚懇談会の議事録作成・公開問題の背景として言えそうなことは、

①実質的な内容が薄いから録音をして速記録化すると余りに恥ずかしい実態だから録音しないし、速記録の議事録は作らない(言い換えると、これまで秘密にしてきたから恥ずかし状態が白日の下にさらされずに済んでいる)

②閣議の場で大きなことをこれから決めたい今の政権としては、「憲政史上初めて」という閣議等の議事要旨の公開というタイミングで集団的自衛権の行使を認めると、なんだか新しい時代になったようなイメージを支持者にアピールできる

③特定秘密保護法の毒抜き効果として、情報公開への前向き感をこれもまた支持者に向けてアピールできる

ということなのかなと思います。

 個人的には、閣議・閣僚懇談会の議事録作成と公開は象徴的には非常に重要だと思いますが、本命は「閣僚会議等の議事録等の作成・公開について」であって、こちらの方がかなり重要だと政策形成過程、意思決定過程を考えると考えていました。NSCの議事録もそうですが、やたらと閣僚会議等に該当する会議が多いということ、ここの議事録作成はきっちりすべきであると思います。それは、NSCであっても例外ではない。4閣僚が集まって大事なことを決めるのであれば、そうであればこそ為政者としての責任は重大で、それは時間をかけてもアカウンタビリティを果たし、しかるべき本質的な責任を社会的にとるべきであると思います。言い換えると、これができないという言い訳しかできない統治機構であるならば、本質的な責任を負う用意がないと言わざるを得ないところです。

 また、閣議や閣僚会議等に上がってくるプロセスと出口の記録が一体化されて議事録とともに管理をされるということが非常に重要だと考えています。過去のこの件の検討過程でも、議事録の作成と公開には言及がされていますが、その前提の意思決定過程そのものと議事録等の一体的管理については実が言及がされていない。議事録だけでは検証可能とは言えないのは明らかです。むしろ、議事録の作成とともに、関連する意思決定過程の文書類の一体的な管理を義務付けることが重要で、こうしたことを公文書管理法の中で明確に義務付けられると、非常に意義深いと考えていた次第です。

 こんな話もぶっ飛ぶ今回の展開に、失望感は深いのであります。あまりこの手の話の共感者も賛同者も少ないのですが、失望よりも状況を変えるための前向きの取り組みを、というモットーで地道に頑張ります。
 
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# by clearinghouse | 2014-03-12 21:19

 1月31日の衆議院予算委員会で、安倍首相が以下の答弁をしたということで、特定秘密文書の保存期間満了前の廃棄問題が再びニュースに。

  秘密文書、手続き抜きで廃棄も 緊急時と首相、秘密保護法で
  http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014013101002068.html

 この問題は、昨年末に以下の民主党の長妻昭衆議院議員の質問主意書への答弁ですでに出ていて、報じられていたものが改め国会でも質問されたということのよう。

○特定秘密保護法案及び防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書
<質問>
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon_pdf_s.nsf/html/shitsumon/pdfS/a185098.pdf/$File/a185098.pdf

<答弁>
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon_pdf_t.nsf/html/shitsumon/pdfT/b185098.pdf/$File/b185098.pdf


 この問題に関しては、このブログでも↓で書いておいたところ。

  特定秘密は保存期間前に廃棄することも否定しないとの政府答弁
  http://johokokai.exblog.jp/21058864

 要は、防衛秘密の訓令で例外的な手続として、正規の手順を経なくてもやむを得ない事情があるときは、廃棄が可能という規定があり、特定秘密は防衛秘密を吸収するものなので、この防衛秘密の訓令で可能とされていたことは維持をするということなのだと思う。

 今回の国会答弁があって、またこの問題に頭を巡らせることとなったが、秘密指定文書の緊急時の廃棄をどう考えるかは、やはり特定秘密保護法という法制が今のところできてしまっている以上、秘密保護のために必要な措置とは何か、という枠組みの問題になっている。

 秘密の保護とは何かといえば、特定秘密への指定と、それが漏えい等で権限のない者の手に渡ることのないように保全をするという物理的な保護という二つの側面がある。

 これを踏まえて、防衛秘密の保護に関する訓令では、以下のような規定が設けられている。
第43条 3 防衛秘密に係る文書、図画又は物件を保管し、又は所持する職員は、防衛秘密の保護上真にやむを得ないと認める相当の理由があり、かつ、他に防衛秘密を保護する手段がないと認めたときは、第1項の規定にかかわらず、これらを廃棄することができる。

 これだけを見ても、「他に防衛秘密を保護する手段がないと認めるとき」とあるので、秘密保護のための措置という位置づけでこうした規定を設けている。この訓令に関する解釈運用基準(事務次官通達)を見ると、以下のようなことがこの規定に関して記されている。
防秘訓令第43条第3項に規定する場合とは、緊急やむを得ない場合を想定しているため、平時にあっては、同項を乱用することのないよう努められたい。

 乱用を禁止していないあたりが微妙。そして、さらにその下の防衛秘密の保護に関する実施要領(航空幕僚長)では、以下のような記載がある。
防衛秘密管理者補は、法第6章に規定する自衛隊の行動その他緊急事態の際における防衛秘密に係る文書等の緊急廃棄、持出要領、携行区分、保管等について必要な事項を定め、隊員に周知させておくものとする。

 これを見ると緊急時の廃棄に関しては、もっと実務レベルの事項が定められて周知されているようだ。この中に、総理の答弁で例示された「例えば有事の際に航空機が不時着し、運搬中の文書が奪取されるおそれがある場合」というのがあるのかもしれない。

 ちなみに、自衛隊法第6章の自衛隊の行動は以下のようなもの。自衛隊の活動そのものだからかなり幅広い。

 防衛出動
 防衛出動待機命令
 防御施設構築の措置
 国民保護等派遣
 命令による治安出動
 治安出動待機命令
 治安出動下令前に行う情報収集
 海上保安庁の統制
 要請による治安出動
 自衛隊の施設等の警護出動
 海上における警備行動
 海賊対処行動
 弾道ミサイル等に対する破壊措置
 災害派遣
 地震防災派遣
 原子力災害派遣
 領空侵犯に対する措置
 機雷等の除去
 在外邦人等の輸送
 後方地域支援等  など

 特定秘密保護法の枠組みで考えると、防衛省だけに例外的な扱いを認めるということになるのか、それ以外の外交、テロ活動防止、スパイ活動防止でも同様に緊急時の廃棄を認めるのか、という新たな問題が出てくる。それは、理屈として秘密保護のための措置として正規の手続き外の廃棄を認めるという趣旨である以上は、当然に出てくる問題だ。

 公文書管理法は、施行令、規則、ガイドラインいずれのレベルでも、行政文書の廃棄については例外的な取扱いを一切認めていない。そのため、例外的な廃棄を認めるとすると、この廃棄だけ特定秘密保護の法令の範囲内で特別の管理ルールとして定めて、公文書管理法3条の規定を適用させるということにせざるを得ない。

 このときに、防衛秘密とは比にならないような問題が出てくる。それは、外交や治安維持分野での緊急事態とは一体何かという問題だ。総理の答弁は、防衛秘密を念頭においたもの。これまで、外交や治安維持分野はこうした例外を持たずにやれてきている。知らないところで廃棄されているだけかもしれないけど…

 特定秘密保護法という枠組みが存在する前提であれば、秘密保護のための措置としての廃棄の話は消えないだろう。であれば、ここでは自衛隊の行動以外の部分で、緊急事態とは一体何なのか、防衛秘密に該当するようなもの以外でも同様の措置が必要なのかどうか、ということについて政府はもっと説明をすべきだろう。中途半端な説明は、本来必要な議論の前で議論を止めるのにはちょうど良いのだと思うけど。
 
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# by clearinghouse | 2014-02-04 22:14

 特定秘密の指定・解除、適性評価などの基準などについて意見をいう情報保全諮問会議が始まり、議事概要も公表されました。割と詳しめの議事概要です。

 情報保全諮問会議
 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/index.html

 議事概要を見ると、有識者の役割や諮問会議の役割とは一体何なのかは、政府、有識者がそれぞれ解釈をしているという状況であることだけはよくわかります。しかし、肝心の役割は何かというところがいまいちわからない。役割がはっきりしないということは、全体の政策決定プロセスのフローと責任があいまいということでもあるので、これから状況の整理をもう少し行っていきたいと思います。これは、形になってきたら改めておそらく情報クリアリングハウスのサイト本体でご報告することとしたいと思います。

 今回は、それよりもそもそもの頭の体操を少し。特定秘密保護法や情報公開法の外交・防衛・治安維持分野の不開示規定(5条3号、4号がそれです)についての議論の焦点・的が何なのか、ということをここのところ考えています。というより、だいぶ前から秘密と非公開をめぐる議論でぼんやり考えていたものが、この間のもろもろの動きで頭の中で整理されてきたという感じかも。

 特定秘密保護法は、最大の政策効果がセキュリティクリアランスの法的根拠となることと、強化した罰則の対象を決めることにあります。この議論のスタートが、実はとてもたちがよろしくない。それは、何が正当性、正統性のあることなのかという議論をすっ飛ばしているからです。

 ちょっとした頭の体操ですが

 秘密を保護することは正当性がある

 正当性がある秘密を保護する


は、ほんのちょっと言葉を入れ替えただけですが、全然違う意味になります。正当性を「正統性」とすると、また意味が変わってきます。ややこしくなるので、ここはあまり深入りしません。

 外交・防衛・治安維持分野の一定の情報に秘匿性を認めるかどうかは、その正当性次第ではないかという議論は、ちゃんとした方が良いと考えています。「秘密を保護することには正当性がある」という論の立て方にすると、秘密や非公開の範囲に入る政府活動の正当性は無前提に認め、だから当然にその秘密を保護するということになります。要は、秘密の範疇に入る政府活動の正当性は問われていないということになります。

 一方で、「正当性がある秘密を保護する」となると、秘密そのものの正当性が問われ、正当性があれば保護しましょうということになります。秘密の範囲で行っている政府の活動の正当性も問われるということになる。この両者の違いを十分に認識をして、後者について真面目に議論をすることが、非公開や秘密を認めるか否かという議論にとっては不可欠な視点ではないかと考えています。

 特定秘密保護法を見ると、特定秘密を保護する理由が「国及び国民の安全の確保」ということで、これ自体に正当性がないとは言いにくいところです。ただ、何を特定秘密とするかという判断には、正当性の判断がない。不当性を排除する仕組みもないので、法律の運用に当たっては法的には正当性という観点から物事をチェックするという機能が働きにくいものになっています。

 もちろん、政府は間違えない、あるいは真面目にちゃんとやっている、というお得意の無謬性の論理が発動されているとするならば、当然に正当性の確保が図られる、ということになるのでしょう。ただ、こういう無謬性の議論が非建設的な議論や対立論を生み、それに終始させて本質的な議論が回避される原因にもなるので、この罠にはまってはいけない。

 この正当性の判断がされる基準になっていないのは、情報公開法のの不開示規定も一緒です。外交・防衛に関する不開示規定は次のような内容です(5条3号)。
公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

 「信頼関係を損なう」という主観的な判断基準、「不利益」という要件は若干客観性があるかもしれませんが、交渉上の不利益となると主観的な要素が強い形になります。要は、正当性や不当性の判断基準がない上に、「行政機関の長が認めるにつき相当の理由がある」という行政判断の裁量の大きな文言があるので、この不開示規定だと、行政機関が非公開と判断したらそれはよほどのことがない限りは正当なものであるという、言葉で直接あらわされていない条件が付加されている形式であります。

 情報公開法の外交防衛、治安維持に関する不開示規定については、改正すべきとの意見は根強く、私自身もこの規定の改正が必要だと強く考えている一人です。不開示規定にしても特定秘密にしても、正当性を前提としていないのであれば、それは政府活動そのものの正当性が、情報を非公開や秘密としている分野では疑義の対象になり続けることになります。

 本来は、正当性を要件として非公開や秘密を判断し、それでも問題が起こるので監視機能が必要という議論であるべきですが、正当性の要件なしに政府を信頼しろという政策を作り、それに対していちいち信用できないという全能的な監視機関を設けようとしても、それが実現したことはないというところに陥っているように思うわけです。

 ここまでお読みいただいてお気づきの方も多いかと思いますが、実際のところ非公開や秘密という存在は、その範疇にある政府活動そのものと切り離せない問題であります。何が非公開や秘密として認められるべきかは、政府活動の性質や状況、その妥当性から判断されることになるからです。

 情報公開制度の運用でも、非公開決定に対する不服申し立ての審査では、秘密や非公開情報だけ見せられて、それだけで妥当かどうかが判断されることはなく、たいがいどういう文脈の中でその情報が用いられ意味を持ち、公開と非公開・秘密の利益衡量を行うのなどがされるのが一般的です。

 非公開や秘密を認めないという立場である場合は、情報公開制度が非公開規定を持っているものですので、その存在そのものも否定されているのだと思いますが、私自身はより良い情報公開制度を作ることを目指しているので、以下に非公開範囲を拡大させずに原則公開を徹底させるかということを考えます。そして、原則公開を徹底させるためには、行政運営が適切で秘密や非公開を生みやすい組織体質、業務遂行ではないことは、必須条件だと考えています。
 
 というわけで、いったい何をこれから議論をしていくことが、秘密や非公開を減らし、情報の流通が遮断されない政府や社会をつくることになるのか、ということは、特定秘密保護法という問題から改めて引き出された課題であります。こういう頭の体操をしながら、何を形作るかもう少し考えていきたいと思います。
 
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# by clearinghouse | 2014-01-29 22:22

※タイトルの会議名称を間違えていたので修正しました。

 1月17日に情報保全諮問会議が開催されました。特定秘密保護法に規定されている、特定秘密の指定・解除、適性評価の統一基準について意見を聴くことになっている「有識者」により構成されているもの。メンバーは以下の通りです。

 座長 渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長兼主筆
 主査 永野秀雄・法政大人間環境学部教授
    宇賀克也・東京大大学院法学政治学研究科教授
    塩入みほも・駒沢大法学部准教授
    清水勉・日本弁護士連合会情報問題対策委員長
    住田裕子・弁護士
    南場智子・ディー・エヌ・エー創業者

 諮問会議の資料は以下に掲載されています。

 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jyouhouhozen/index.html

◆プロセスの検証可能性

 この諮問会議については人選と会議・議事録の公開についていろいろ批判などなどされていますが、基準策定のプロセスの公開性・検証可能性からすると、会議・議事録の公開よりもっと違う問題があるように思います。それは、「資料6 今後のスケジュール(イメージ)」を見ると、基準の閣議決定まで開催が予定されている会議は3回だけ。第1回はすでに終わりましたから、残るところは2回が今のところ予定されていて、第2回では素案の検討を終えて、その後パブリックコメントを実施する予定になっています。

 この第1回から第2回の間に、政令素案・運用基準素案の検討が行われるというフローで、この間に「有識者から意見を聴きつつ素案を作成」となっている。個別に有識者に意見を聴いていくということが予定されているようなのです。素案の作成という起案段階をすべて会議で行うのは現実的ではないとは思いますし、素案を事務局が座長や主査と相談して作成をして作成して会議で検討されるということはよくあることではあります。しかし、この方法では会議の公開や議事録の公開だけを求めていれば、素案の検討経過が検証可能になるとはとても言えないということになります。

 第1回から第2回の間に行われる有識者から意見を聴くということを、どのように行うのか、このプロセスはどのように記録されるのか、更にはこの時点で有識者にはどのような情報が提供されて意見を聴くことになるのかなど、プロセスの検証可能性をどの程度フローに埋め込んで予定を組んでいるのかを、まずははっきりさせてほしいです。今のフローだと、基準策定の実質的検討は会議では行われないということだけは、よくわかるとしか言いようがない。

 また、不測の事態(非公開や秘密としなければならないことが言及されるとか)を回避するために、会議非公開はこの場合許容される必要性はあるかもしれません。しかし、議事録は会議の内容次第では公開とできるものもあるはず。相場観でいえば議事録作成に1カ月、情報公開請求をすると決定まで1カ月という時間を考えると、もはやパブリックコメントなどに間に合うタイミングで情報が公開される可能性は限りなく低い。これも何とかしてほしい。

 ただ、批判の対象が会議非公開や議事録がすぐに情報公開されないことだけになってしまうと、特定秘密という問題そのものに向き合っていることにならないので、基準としてどんなことが想定されるのかについて、私なりに特定秘密保護法の規定から想定できる範囲をちょっと整理してみます。

◆特定秘密の指定と解除基準

 諮問会議の「資料7 今後の検討事項」には運用基準関係として以下の事項の検討が予定されています。

 ・指定の対象となる事項の細目
 ・指定の有効期間の基準
 ・適性評価の実施基準
 ・適性評価に関する個人情報の管理方法
 ・公益通報者の保護  等

 ここでは特に指定と解除の基準について整理してみます。特定秘密保護法18条第1項は「特定秘密の指定およびその解除…の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものとする」、と規定しています。そして、第4条第7項では「第3条第1項に規定する要件を欠くに至ったときは、有効期間内であっても、政令で定めるところにより速やかにその指定を解除するものとする」と規定されています。「基準」とはどのようなものかはこの間明らかになっていませんが、この二つなどを読み合わせると、指定の基準が解除の基準にもなるということになると思います。というのも、秘密指定解除は、指定期間の満了が基本で、もう一つが指定する条件を満たさなくなったときの2パターンしか法では想定できないからです。

 そうすると、秘密指定の基準とは①どのような場合が特定秘密の指定の対象となるのかと、②指定を継続する期間、の2点になると思われます。これが特定秘密の要件を欠くとは何かの基準=解除の基準となると考えられる。ただ、では、期間や秘密の要件の基準が具体的にどのようなものが想定されるのか、というのは正直未知数。情報公開法では処分に関する審査基準というものが設けられていて、非公開規定の審査基準というものもありますが、これは文言の解釈が中心。各省庁ごとに基準が策定されているので、それぞれの省庁で具体的にどのような事務事業や情報類型が該当するのかが書かれている場合がありますが、これで指定基準のようなものといえるかどうかといえば、ちょっと違う。そうすると、①文言解釈とともに、②特定秘密の分野・事項ごとの何かの基準、③秘密指定期間の判断のための基準、についてどのくらい具体的に統一的な基準が定められるのか、ということになるのだと思います。

 別の視点としては、指定基準に特定秘密に指定してはいけないネガティブリストを設けるというものです。例えば、違法行為、不適正な行政活動、人権侵害行為、汚職行為、失敗の隠ぺいなど、そもそも秘密指定をすることが隠ぺい行為となり、公共の利益を損なうものなどをかかげるというものです。こっちはわかりやすい話ではあります。いずれにしても、特定秘密についてどの程度の実態を諮問会議が把握して検討できるのか、というところがカギなのかなとも思います。が、資料を見ても諮問委員会の有識者に対する守秘規定がどうなっているのかわからないので、実際にどの程度の秘密に近い情報を把握するのか、形式的にもわからな。、秘密を知る官僚にどこまで突っ込んで話ができるのか、というところが結構重要かもしれないです。

 この続きはまた。
 
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# by clearinghouse | 2014-01-20 21:39