特定秘密保護法をめぐる監視・監察組織のあり方は、アメリカの大統領令にある「情報保全監察局」「省庁間機密指定審査委員会(上訴委員会)」を参考にして作るとされていますが、どう考えても日本で同じようなものができないだろうと思われるのに、なんだか参考にして同じようなものができるかのうようなミスリードがされているのは、とてもたちが悪い。

 特定秘密の指定・解除・適性評価について、少なくとも何らかの監視・観察機関が必要なのは間違いないです。ただ、法律の構成からしてどういう監視・監察が現実的かつ実効的なのかについては、特にきちんとした議論をされず、結果的に米大統領令にあるものを便宜的に例示して終わってしまっているところがあります。

 昨日の報道記事だと、「情報保護監視準備委員会」の会合が12月25日に開かれ、そのメンバーは、以下の通りとのこと。

 委員長:森雅子同法担当相
 委員長代理:岡田広副内閣相
 副委員長:内閣官房副長官、礒崎陽輔首相補佐官(国家安全保障会議担当)
 事務方トップ:北村滋内閣情報官
 メンバー:内閣、外務、防衛、経済産業の各府省事務次官、警察、公安調査、海上保安の各庁長官

 情報保護準備委:25日に初会合(毎日新聞 2013.12.24)
 http://mainichi.jp/select/news/20131225k0000m010103000c.html

 記事には、
森担当相は24日の記者会見で「米国の省庁間上訴委員会をモデルにしている。それには指定権者も入っている。指定権者同士でチェックし合うことも期待できる」

ともありますが、そもそもアメリカでモデルにしているものと日本でやろうとしていることは、まったく違うのではないかと思うわけです。

 米大統領令の「省庁間上訴委員会」(過去記事だと、省庁間機密指定審査委員会との訳で報道等されているものもあります)は、以下のような役割を担うとされています。

①不適切な機密指定があることをの申し立てたものの、連邦政府機関がそれを認めなかった場合の不服申し立てをを受けて審査を行う。

②各連邦政府機関が機密指定の自動解除の例外を適用しようとする場合に委員会に通知し、委員会は例外を認めない、通知された秘密指定期間の短縮を命じることができる。

③必要的機密指定解除審査(アメリカ市民による解除請求を受けて実施される審査)の結果、機密指定解除されなかった場合などの不服の申し立てを受けて審査し、採決を行う。

 委員会は情報保全監察局長により招集され、事務局は同監察局。構成は、国務省、国防総省、司法省、国立公文書館、国家情報官、国家安全保障担当大統領補佐官から任命された幹部レベルの代表者。CIAは、構成員でありかつ自らが行った原機密指定に関する案件の支援を行うという役割があるとされています。

 「省庁間上訴委員会」という名前の通り、そもそもは大統領令に関連する不服申し立ての審査機能が中心なわけで、不服申し立て事案が発生するような制度の作りになっているわけです。それは、違法秘密について内部で申し立てる制度がある、機密指定解除の請求を市民もできる、自動解除を原則としているのでその例外の適用の適否を判断する、という仕組みが入っているからこそです。

 特定秘密保護法はどうかといえば、①・③は仕組みとしてないので、日本で「情報保護監視委員会」を作る時の参考にはならない。②については、法では30年超の秘密指定をしようとする場合、内閣の了承を得ることになっているので、その了承を得る段階での補助的作業を行う役割程度はありそうです。アメリカの制度を参考にしているというものの、実質的には②しか具体的な機能として参考にできるものはなく、①・③については別の形で何かをしようとしているということではないかと思います。

 4党合意などを見る限り、監視委員会は国会での法案修正で入った特定秘密の運用に関する内閣総理大臣の指揮監督権を補佐するものとして想定をされ、特定秘密の指定・解除を監視を行うとされています。なので委員会として監視を行うことが、①・③のような機能につながるということは、善意に解釈をすればいえそうです。

 ただ、それでも問題があります。それは、アメリカの大統領令では、機密指定権者の範囲が広いのに対し、日本では秘密指定に関する権限は行政機関の長に限られているからです。

 2012年度で米大統領令で原機密指定権者の人数は以下の通りです。

 極秘 898
 機密 1,415
 秘密 13     合計 2,326人

 もっとも機密レベルの高い機密指定でも898人いるということであり、大統領や副大統領、連邦政府機関の長だけでなく、上級幹部職員に機密指定権限がゆだねられていることになります。そうすると、この職員の行った機密指定や解除等に対して、上訴委員会のようなところが審査等を行うということは組織構造としても十分にありうる。

 一方、日本は秘密の指定も解除も行政機関の長が行うことになっています。監視委員会は、この行政機関の長の判断を、その下にいる事務次官が監視を行い、さらには警察庁・公安調査庁に至っては長自ら監視を行うという、非常に変な構造が出現します。内閣総理大臣の補佐的な役割を担うものとして、担当大臣他政務が関与するにしても、そもそも行政機関の長の判断については一定の責任あるはずの事務次官や、責任者そのものである長官が関与するのは、どう考えても変。いったい、監視委員会が何をする場になるのかは、単に米大統領令の上訴委員会を参考にするとか、監視をしますとかそういうものを越えて、実質性をどう作ろうとしているのかを、よく見ていく必要があります。

 言葉に踊らされずに、どのような機能と役割と正統性を持った組織ができるのかという中身を見ていかないといけないというわけです。同じように、言葉先行で中身のはっきりしない、米大統領令の「情報保全監察局」を参考に内閣府に情報保全監察室をつくると言っている話については、次でまとめてみたいと思います。
 
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# by clearinghouse | 2013-12-25 17:28

12月6日の朝日新聞の夕刊で、以下の記事が出ています。また、衆議院のホームページに質問・答弁共に出ていないようなので、記事のみの情報ですが、この間、一部の人とは議論をしていた件ですので、この件の背景ともいえることを簡単にまとめておきます。

 特定秘密「保存期間中に破棄も」 答弁書を閣議決定(2013.12.6 朝日新聞)
 http://www.asahi.com/articles/TKY201312060099.html
 
「秘密の保全上やむを得ない場合、政令などで(公文書管理法に基づく)保存期間前の廃棄を定めることは否定されない」


 特定秘密保護法の国会審議で、特定秘密は公文書管理法の規定に基づき総理大臣の同意のもとでしか廃棄ができないこと、30年を超える特定秘密指定文書は歴史文書として国立公文書館などに移管されるようにするなどと答弁されてきています。が、この答弁書だと、保存期間前の廃棄とするルールを設定することを妨げないとしているので、やっぱり勝手に廃棄されるのではないか、という問題があります。

 おそらくこの答弁書の内容は、見たところ、今の防衛秘密の運用を妨げないという前提で作られたものであると思います。防衛秘密に関する訓令には廃棄に関して以下の規定があります。
第43条 3 防衛秘密に係る文書、図画又は物件を保管し、又は所持する職員は、防衛秘密の保護上真にやむを得ないと認める相当の理由があり、かつ、他に防衛秘密を保護する手段がないと認めたときは、第1項の規定にかかわらず、これらを廃棄することができる。
4 前項の規定に基づき、防衛秘密に係る文書、図画又は物件を廃棄する場合は、防衛大臣の承認を得なければならない。ただし、その手段がない場合又はそのいとまがない場合は、廃棄後速やかにその旨を防衛大臣に報告することで足りる。
5 保全責任者は、防衛秘密に係る文書、図画又は物件を廃棄したときは、防衛秘密管理者まで速やかにその旨を報告しなければならない(第1項第3号に規定する場合を除く。)。

 この規定は、通常は文書の保存期間が満了した防衛秘密の廃棄に当たっては局長級、課長級の承認が必要ですが、第3項はその例外を定めています。「防衛秘密の保護上真にやむを得ないと認める相当の理由があり、かつ、他に防衛秘密を保護する手段がないと認めたとき」としていますので、勝手にどんどん捨てるということではなさそうで、大臣への事前報告、それができない場合は事後報告となってはいます。ただ、何がやむを得ない場合かについては、誰の利益を代弁して判断するかによって見え方が変わってくる。この規定を見て、知人は「日本軍がどんどん文書捨てたのと同じことができるってこと?!」と言っておりましたが、そうとも言えます。

 おそらく政府答弁は、防衛秘密の今のルールを維持することを想定したものではないかと思います。ただ、こういう答弁だと、それ以外の特定秘密分野にも同様のルールを入れるということになりそうです。どんな場合が、「防衛秘密の保護上真にやむを得ないと認める相当の理由があり、かつ、他に防衛秘密を保護する手段がないと認めたとき」に相当するのかについては、判断基準は現場に委ねられているとも言えるところで、防衛秘密ではどんな運用実態で、過去の運用実績なども明らかにしてほしいところです。

 結局、こういうことが出てくると、原則の例外がたくさんできて、訳が分からなくなってきて、他にも例外があるのではないかという疑心暗鬼を生むことになります。実際に、どんだけ例外や今出ている想定外のことがあるのかわかりませんし… こういう状態で施行準備が政府で始められるということが、一番怖い。
 
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# by clearinghouse | 2013-12-07 23:11

 
 不謹慎なタイトルといわれそうだが、恋は盲目という。法案に恋をした政府と与党は盲目になり、常識も理性も吹っ飛んでいるとしか思えない。

 特定秘密保護法案のような法律を、審議時間を計算しながら審議をしていくという国会って一体何なのか。参議院特別委員会の委員長は、何度職権を持ち出すのか。数の力を誇示する与党のやり方は、こっちの方がよっぽど「道徳」上よろしくない。

 参議院特別委員会での強行採決を所用でリアルタイムでは見られなかったが、動画で確認。昨日の本会議の中断も後で動画で確認。何なんだこれは。

 特定秘密保護法案のような制度は、どう考えたって制度ができた後には外部から具体的にチェックをすることはできない。特定秘密の範囲の拡大や解除の問題だけでなく、適性評価によって起こる問題、特定秘密の漏えい・取得とその教唆・扇動・共謀・未遂の刑罰強化をするならばその違反行為を監視することが仕事となる部門も出てくるだろう。特定秘密という問題に付随してどんなことが問題として起こり得るのか、という想定をしたうえで、国会で十分に審議をして法案の具体的な趣旨等が明らかになっていなければ、こうした法制の実効をコントロールすることはなお困難になる。

 それが国会でできないのであれば、国会はこの法案を通すべきではない。衆議院での審議時間の7割程度が参議院での審議時間、などという国会の常識を持ち出して計算されても、何の説得力もない。そもそもこの法案審議で、地方公聴会や参考人質疑が審議終了が間近になってから行われているという慣例を初めて知った人も多いだろう。国会で政治家は有権者の代表者として本来の仕事をしているのか、と思うのは私だけではあるまい。

 罰則の強化の条件として、特定秘密の範囲と取扱いを法制化するというのが特定秘密保護法案のエッセンスだ。しかし、罰則を強化しさえすれば特定秘密が保護されるというものではないのに、罰則がないことを秘密保護体制として不十分だった主要な理由に挙げるのは、結局2009年から施行されている「特別管理秘密」という秘密指定と管理のルールと重なる分野について、改めて秘密保護法制化の対象とするための口実に過ぎないだろう。

 本来は、罰則の強化ではなく、政府が抱え込んでいる秘密をマネジメントするのが先。今はそれもない上に、情報公開を適切に進める仕組もなく、その結果、政府が今回の法案にいう特定秘密やそのほかの秘密指定制度の範疇で行っている行政活動の情報公開と検証、適正化を進められず、それが多くの問題を生んできている。得体のしれない政府の秘密の領域があり、そこでは秘密をきっちり記録して残しているかといえば、秘密にしておきたいものほど公文書化しない、記録化しないという話も聞く。政府の中には、得体のしれない私物化領域もありそうだ。むしろ、私物化されるような記録や情報が多いのであれば、よほどその方がセキュリティリスクだろうし、私物化をするならばそもそも政府の仕事に関わってはいけない。

 政府はこれまでどれだけ自らの本質的な責任や義務を果たしてきているのか。それは、説明責任の徹底であり、それから逃れられないという前提で制度も仕組みも、そして行政活動も行わなければならないということだ。この徹底がないから、情報公開も進まない。情報統制的な選別された情報が投げつけられることにもなる。

 書いてて不快感で胸やけがしてきたので、とりあえずここまで。
 
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# by clearinghouse | 2013-12-05 21:11

 特定秘密保護法案に関連して、これまであまり深く考えるに至っていなかった問題の論点が、自分の中で
はっきりしてきたものがいくつかあります。

 その一つが、記録としての管理と、アクセス管理という問題です。後者については、すでに個人情報保護やセンシティブ情報の保全という意味では、セキュリティの専門家たちが深く議論をしているではないかと思います。また、民主党政権時代の有識者会議は、秘密保全法制と情報保全システムと二本立てで行われていました。特定秘密保護法案、という法制の議論をしているので、私も法制の有識者会議にしか言及をしていないのですが、情報保全システムの検討も並行して行われていました。

 情報保全システムも、情報漏えい対策だけでなく、アクセス管理をシステム的に行うということも含みます。しかし、今の法案では、記録管理とアクセス管理の問題を関連付けて議論されているとはとても思えないところがあります。

 法案の問題点はたくさんありますが、記録管理という観点から言えば、①公文書管理法の定める行政文書の管理ルールは基本的に適用外で、廃棄・移管ルールだけ適用させる、②特定秘密の記録管理も含めた管理(保護)は個別ルールで行う可能性が高い、という問題があります。

 防衛秘密が、公文書管理法の適用外で、通常の行政文書と記録としても異なる管理体系にあったこと、防衛秘密記録簿、防衛秘密管理簿、防衛秘密登録簿などとさまざまな管理用の帳簿があり、記録される内容も少しずつ相違点があるので、記録管理がどのように行われているのか、ルールを見てもよくわからないところがあります。

  こうしたルールになっているのは、防衛秘密についてはアクセス管理をしなければならないという前提で、記録管理ではなくアクセス管理のための登録管理という視点からルールが整備されてきたからではないか、と思います。

 それならば、記録管理は通常の行政文書と同じように文書の作成から行政文書としての管理ルール、廃棄・移管までの一連のライフサイクルは管理をし、別にアクセス管理のルールをシステム的にも運用的にも作ればよいのではないだろうか。この記録管理とアクセス管理を混同してルールを作ってきたのが、これまでの秘密保護法制だったのではないかと思うわけです。

 そうでなければ、そもそも公文書管理法の適用外に防衛秘密をするなんてことは起こらなかったはず。特定秘密についても、廃棄・移管については公文書管理法を適用させると政府は説明していても、文書の作成義務から管理ルールまで適用させるとは説明しないのも、記録管理とアクセス管理を混同しているから、
ということが言えるのではないかと。

 アクセス管理をする必要があるのであれば、公文書管理法の行政文書の管理は適用して、アクセス管理をする方策をとればよいだけなのにそれをしていないあたりが、秘密は自分のものという、ある意味記録の官庁による「私物化」の典型のようなありさまだということでしょうか。
 
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# by clearinghouse | 2013-11-15 10:24

 日弁連が、11月13日に以下の院内集会を開催します。

 プログラム予定は以下の通りで、私も話をする時間をいただいています。事前申し込みが必要とのことですので、参加を希望される方は、下記連絡先までお問い合わせください。

◆プログラム(予定)◆

・情報公開法改正と特定秘密保護法案への日弁連の取り組み
・防衛秘密の現状と情報公開法改正のポイント(三木由希子氏(特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長))
・参加議員からの発言

>>>以下、案内

「情報公開と秘密保護の関係を考える院内集会」

 日時 2013年11月13日(水)12時~13時 (開場11時45分)
 場所 参議院議員会館地下1階 B107会議室
 参加費等 参加費無料/事前申込必要


 政府は、本年10月25日、「特定秘密の保護に関する法律案」を閣議決定し、国会へ提出しました。
 同法案については、①保護対象となる「特定秘密」の範囲が広範・不明確であること、②「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、③指定の有効期間5年を延長し続ければ指定が恒久化すること、④内部告発や取材等行為についての処罰範囲が広く、厳罰に処するものであるため、表現の自由及び報道の自由や知る権利等憲法上の権利が侵害されること、⑤適性評価制度により重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること、⑥行政機関の長の判断で「特定秘密」を国会に対しても提出を拒むことができることになっており、国会の国政調査権が空洞化され、国権の最高機関性が侵されるおそれがあることなど、様々な問題点をはらんでいます。
 当連合会は、同法案に関する議論状況に強い危機感を抱き、これまでに意見書・会長声明等を公表して問題提起してきました。この度、下記のとおり同問題に関する院内集会を開催することとなりました。今回の院内集会では、情報公開の必要性と秘密保護法の問題点について、参加者の皆様とともに考えます。奮って御参加ください。
 
 PDFチラシ兼申込用紙(PDFファイル;333KB)

 主催 日本弁護士連合会
 問い合わせ先 日本弁護士連合会法制部法制第一課
        TEL:03-3580-9881
        FAX:03-3580-9920
 
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# by clearinghouse | 2013-11-10 21:27