人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「秘密」と「非公開」

 特定秘密保護法案の議論でちょっと気になっていることがあります。

 それは、この法案でいう「秘密」と「非公開」が混在して問題点の指摘がされているということです。

 日本語としてだけ考えれば「秘密」=「非公開」で正しいです。秘密も非公開も公開しないことという意味だからです。だから、情報公開制度に基づく公開請求が非公開になれば、政府を「秘密主義」と批判するのは当たり前です。でも、特定秘密保護法案という法制度としての議論では、「秘密」と「非公開」は異なる意味を持つものであると思います。

 「非公開」の領域は、秘密指定と同じではない。というより、違わなければならないものです。非公開の領域すべてが「特定秘密」のような秘密指定の領域となるようであれば、それこそ民主制という観点からすれば悲劇以外の何物でもありません。法案も、作り方としては非公開の領域の一部が秘密指定されるという形をとっています。こういうところで、「非公開」=「秘密指定」とする事例や議論を数多く展開してしまうことは、一見わかりやすいのですが、利敵行為的な側面があることも認識する必要があるのではないかと思います。

 なぜなら、この間の法案をめぐる意見や立場の対立を見ていると、「こんなに非公開がある、あるいは非公開にされていて後からわかったことがある→だから特定秘密保護法案だと秘密が増える」という議論や意見に対して、「非公開の事例に出しているようなことを秘密指定する法案ではないし、実際にそれは秘密指定されるものではないでしょう」という意見や議論が出てくる。確かに、「秘密指定」ではなく、情報非公開=情報統制的な情報の出し方によって明らかにされてこなかったことが、「秘密指定される」と主張されている例も結構あるわけです。

 非公開や秘密指定対象ではないけど情報統制的な情報の出し方がされることはとても問題です。非公開体質の上に秘密指定制度が拡充されるわけですから、秘密の領域の抑制的に指定されるなんて思いません。しかし、この問題は特定秘密保護法案があってもなくても起こる問題でもあるので、別に情報公開を進める、非公開の領域を狭める、そして必要な情報が必要な時に公開され政策を実現させるための努力が必要です。だから、非公開となってきた情報を例にこれも秘密指定されるということよりも、非公開領域を広く確保している外交、防衛、治安維持分野にさらに秘密指定という仕組みが拡充されるということと、この法案がなくても情報公開が全く進まないこれらの分野の情報公開をどう進めるのかということを、もっと構造的に真剣に考えなければならない、と思うわけです。

 という議論になると途端に抽象度が高くなるので、すぐに「難しい」という一言で片づけられて、苦言と苦情をいただいてしまうのが悲しいところで・・・。個人的には、知る権利を具体的に保障するためにどういう議論や問題提起をすべきか、ということをもう少し追求していきたいとは思います。
  
# by clearinghouse | 2013-10-16 23:14

 10月4日の公明党の特定秘密保護法案に関する検討PTで内閣情報調査室が、PTから出されていた追加質問について書面で回答しています。公明党のPT座長大口議員のHPにその回答が載っています。

 特定秘密保護法案に関する検討PTでの論議(報告3)
 
 追加質問は①公文書管理法との関係、②閣議等・NSCの議事録作成、③秘密指定の更新に制限の設定、④国会法との関係、⑤国会との関係、⑥適性評価、⑦罰則、に関するものです。全部触れると長くなるので、目下の私の関心である公文書管理法との関係を拾ってみます。

 自衛隊法に基づく防衛秘密が公文書管理法の適用除外だったという現状に対し、内調も公文書管理法を適用する方向で調整するとこれまでしてきたところです。今回の回答では、具体的にどう適用するのかを説明しています。回答に添付されている資料を見ると、

 1 秘密指定文書の保存期間内に秘密指定が解除されると一般の行政文書と同じ扱いになる
 2 歴史的文書として移管する必要があると秘密指定文書をした場合は、文書の保存期間が
  満了しても秘密指定解除ができないときはそのまま秘密指定が解除されるまで行政機関が
  保存期間を延長する(要は、秘密指定解除とともに国立公文書館に移管となる)
 3 歴史的文書に該当しない秘密指定文書は保存期間満了とともに
    ①秘密指定解除
    ②廃棄(内閣総理大臣の同意)
 
ということになります。今の公文書管理法や特定秘密保護法案を読めば、ここまでは既存の枠組みや法案の枠組みを変えたくなければこうするだろうと、わかることなんですけどね。要は、公文書管理法を変えず、特定秘密保護法案の中で秘密指定文書のライフサイクルの法的枠組みをはめて、秘密指定の解除などをスケジュール化していくような形をとらなければ、こうするしかないということなのだと思います。

 この仕組み、秘密指定文書のうち歴史的に重要と判断されたものは、文書の保存期間が過ぎても秘密指定が解除されるまでひたすら当該文書を持ち続けることになります。文書の保存期間が満了している=行政機関としては不要になった文書、をそのまま秘密指定文書だから抱え込むというのは、行政組織としては当然と思うのでしょうか、そもそもいつまでも抱え込める構造になってしまうと、もはやいったん行政機関が秘密指定すると、そのまま行政機関の中で死蔵させ続けることもできてしまう、ということになってしまいます。

 秘密指定については、法案では有効期限を5年、更新は制限なく可能という仕組みとされていますが、やはり文書の作成から20年とか30年という区切りで、秘密指定の延長ではなく、原則解除を審査する、審査を経てもなお秘密指定延長をすべきものについては例外的に延長するというような、自動的な解除審査の仕組みを入れるべきではないかと思います。今回の内調からの回答には、「特定秘密の指定の更新に制限を設けること」について、「有識者のご意見をうかがいながら統一基準を策定し、適切な行進が行われるよう指針を示したいと考えています」と回答をしていますが、有識者や統一基準という言葉が躍っている感が否めないところです。もっと合理的かつ効果的に秘密指定の解除が進むようなタイムフレームのわかるものにならない者kと思います。
 
 また、別の問題もあるように思います。歴史的に重要として国立公文書館等に移管する基準としては、行政文書管理ガイドラインでは、以下のように書かれています。

 ①国の機関の政策の検討過程、決定に関する重要な情報が記録された文書
 ②国民の権利及び義務に関する重要な情報が記録された文書
 ③国民を取り巻く社会環境、自然環境等に関する重要な情報が記録された文書
 ④国の歴史、文化、学術、事件等に関する重要な情報が記録された文書

 これらの範囲をどのように解釈するかはそれぞれの行政機関が判断することになりますが、もともと「何が重要か」というテーマで作られた基準です。例えば、非公開や秘密指定されている文書は、現用文書の段階で知る権利の保障やアカウンタビリティを果たされていないものです。このような文書は、文書の保存期間満了後などの一定の時間を経れば公開可能になるものも多くあると考えられ、そうすると実際の歴史的文書としての移管の必要性は、①~④に加えて、本来であれば非公開や秘密指定されていた文書群を重点的に審査、検討すべきものではないかとも思うのです。

 特定秘密保護法案のことをさまざまな人と話して多くの人が口にするのは、「秘密指定されているのであれば、そのことでその文書の重要性や明らかなのだから、基本的には歴史的に残して秘密指定解除すべき」というものです。私自身もそう思います。非公開・秘密指定されたものをすべて残すべきとは言いませんが、こうした文書が廃棄されるときはそれを重点的に審査すべきではないかとも思うのです。特定秘密保護法案では、特定秘密である、ということが認識された上で廃棄等の審査が行われることになるとは思いますが、少なくとも①~④の基準に加えて、特定秘密として指定されていたという来歴そのものに重大さの価値を置くべきではないか、そういう判断がされるように仕組みを作るべきだろうと思います。

 ここまで、特定秘密についても、公文書管理法の適用となっていった流れはそれは前向きの前進であり、今の防衛秘密を考えれば、なんぼもまし、というところです。特定秘密のライフサイクルは、出口部分は当初考えられてたものよりは、だいぶましになってきているとは思います。ただ、出口をふさいで正しても、全体が民主的なプロセスになっていないといけないわけで、特定秘密の指定や罰則の適用などの問題は残っているわけです。この二つの問題については、反対運動を続けている人たちが最も危機感を持っているところで、何とかよいアジェンダセッティングをして事態を動かす知恵が出せないものなのかと思います。
 
# by clearinghouse | 2013-10-07 22:55

 特定秘密保護法案に関連して、自衛隊法に基づく防衛秘密の実態について、今日のNHKの19時からのニュースが報じました。私も取材に協力させてもらいました。

 「防衛秘密」の多くが廃棄
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131003/k10015015101000.html

 上記の記事を見ると分かりますが、平成19(2007)年から平成23(2011年)までの5年間の防衛秘密指定文書は約55,000件。この間の廃棄は約34,300件。一方、防衛秘密の指定を解除されたのは1件のみ。指定解除率0.0029%!

 多分解除実績はほとんどないのではないかと予想をしていましたが、結構衝撃です。防衛秘密は、特定秘密保護法案ができると自衛隊法が改正され、特定秘密保護制度にで一本化されます。この防衛秘密の構造が、特定秘密保護法案にも持ち込まれようとしているということですから、ただ事ではない、という問題です。

 先週、私も防衛省防衛政策局から秘密指定解除の実績が過去1件しかないとは聞いていましたが、廃棄件数がわからないとこの解除がどういう意味なのか位置づけがしにくく、廃棄件数についても再照会をしていました。が、今日防衛政策局に電話をしたら、「今週中に回答します」とのこと。今週中って、明日しかないじゃん、と思いつつ、でも金曜日に夕方くらいのいろいろ対応しにくい時間帯に電話があるんだろうなと思っていましたが、NHKにはきちんとお答えになっていたようで。この扱いの違いはなんでしょう(笑)

 これまで防衛秘密については、①秘密の指定基準が実質的にない、②公文書管理法の適用外になっていた、ことまでは私たちの調査でもわかってきて、報道にもなってきたところ。さらに秘密指定文書のライフサイクルについて調べていて、解除が機能せず廃棄がどんどんされていることについて、ようやく実態が見えました。こうした実態なしに、知る権利の議論をしても、ほとんど予定調和的な対立構造にしかならないので、政府のこれまで行ってきた秘密指定のための秘密保護法制が一体何だったのかを全部総ざらいしたうえで、中身の議論がなされることは良いことだと思います。

 2年前に、セミクローズドの勉強会を情報公開クリアリングハウスで行い、安全保障について情報公開という面からも研究をしている知人の研究者を呼んで話を聞いた際、「防衛秘密は秘密の指定解除=廃棄という運用らしい」という話を聞き、以来、ある種の執着をもって情報公開請求をしたりして調べてきたけど、なかなかクリアに問題を示せずにきました。個人的には、ミッシングピースがある、何か足りない感じがしていましたが、最終的には秘密指定文書のライフサイクルの洗い出しが欠けていたことに8月の終わりになって気づいたのはラッキーでした。いろいろ調べたら、ミッシングピースが見事に埋まったというところで、天は見放していなかった、なんて心境になったところです。

 ただ、特定秘密保護法案はではどうするのかと言えば、実はとても悩ましい問題を提示していることになります。というのは、秘密指定文書のライフサイクルとそれとしてきっちり入れ込もうと思うと、秘密指定という外縁がはっきりしなければ、それを前提にシステムをどう機能させるのかを別に考えるか、あるいは秘密を民主的に管理する仕組みをきっちり入れた上で、秘密指定のような仕組みを入れていくのか、という選択肢が出てきてしまうからです。個人的には、秘密や非公開を民主的に管理し、重要なものは歴史的に残され情報公開されていく道を示さないまま、秘密保護法制について議論をすることにはくみしたくない、とは考えています。
 
# by clearinghouse | 2013-10-03 21:32

 公明党「特定秘密保護法案に関する検討プロジェクトチーム」の座長である大口善徳議員が、法案に関する内閣情報調査室とのやり取りなどをHPで公表していることを、知人から教えてもらいました。すっかり見落としていました。

  特定秘密保護法案に関する検討プロジェクトチームでの論議(報告1)
  特定秘密保護法案に関する検討プロジェクトチームでの論議(報告2)
  「知る権利」明記を検討―特定秘密の指定基準で―有識者会議の設置も―秘密保護法案党PTで政府

 9月27日付の内閣情報調査室からの質問事項に対する回答を見ると、特定秘密のマネジメントに関連する部分の現状としては

①特定秘密について統一基準を策定し、策定に当たっては有識者からの意見を聞くことを検討
②公文書管理法の適用については、現在検討を行っている
③特定秘密の保護とともに閣議等の議事録を作成し30年保存して、保存期間満了後に国立公文書館に移管すべきという指摘に対しては、関係当局と協議すべき事項
④情報公開法を改正してインカメラ審理手続きを導入することへの見解として、関係当局と協議すべき事項

となっています。また、罰則等については

①取得行為について「特定秘密の保有者の管理を害する行為」に関する罰則は、不正競争防止法やマイナンバー法でも「管理侵害行為」の罰則があるので、構成要件の明確さは欠くことはない
②「違法行為を伴う取材ではない」という基準は、西山事件の最高裁判決「取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する」ような態様であるものの場合には、正当な取材の範囲を著しく逸脱するものは、処罰はあり得る
③特定秘密の漏えいの結果の重大性が量刑に影響を及ぼすことがあると考えられるが、漏えいの結果が及ぼす重大性については、外形立証によってこれを立証することはできる

とのこと。また、国会との関係については、

①国会に特定秘密を提供する場合は秘密会・秘密会議を想定。議事録の取扱いは各議院規則等で定められるものと考えている
②特定秘密を知る議員が本来は知りえない議員に相談をすることについては、特定秘密を提供すると漏えいになるが、国会において講じられる保護措置の具体的な内容等については国会の手続及び規律に関する事項

と書面で回答しています。この書面での回答を受けて、口頭で確認したものの記録が「報告2」です。それによると、

①特定秘密の統一基準は、有識者会議を設置し、議事要旨等も公表する
②特定秘密文書の管理については、「廃棄につき特別の定めをしない方向」
③公文書管理法に基づく廃棄に当たっての総理大臣の同意を要件として国立公文書館への移管をすることについては、「そういった方向で関係省庁と調整している」

ことが確認されたようです。

 特定秘密については、現行の防衛秘密が公文書管理法の適用を受けず、秘密指定されたまま公文書館へ移管する仕組みもなく、どんどん廃棄されている可能性がある状況に対して、何らかの対応をするようではあります。防衛秘密が野放図な仕組みとして作られ、運用されていたことは大きな問題ですが、特定秘密保護法案という段階でそれが秘密を管理する方向に議論を向かわせたことは、一つの収穫になるのかもしれません。

 ただ、公文書管理法の適用をどのようにするのかはかなり微妙な問題。公文書管理法の改正を本来はすべき話であるのかもしれません。というのも、公文書管理法は確かに、行政文書の廃棄に当たっては総理大臣の同意を必要とし、歴史的に重要な文書が廃棄されないようにする一種のゲートキーパーの役割を持たせています。しかし、実際に廃棄文書のチェックは、私たちもインターネット上で検索することのできる「行政文書ファイル管理簿」のファイル名等によって行われています。そうすると、今の公文書管理法の仕組みだと特定秘密もファイル管理簿に搭載をすることになるのか?という問題と、廃棄を認めるか否かの審査段階でそれが特定秘密か否かという情報までは行かないので、特定秘密という重大性を考慮する仕組みには、公文書管理法を素直に読むとなっていないのです。

 気になるのは、口頭での質問に対する回答で、「廃棄につき特別の定めをしない」「廃棄・移管は公文書管理法のルールに則る方向で調整をしている」と内閣情報調査室が説明をしている点です。要は、公文書管理法のうち、管理の基本的な部分は適用除外とし、廃棄については特別秘密保護法案として特別なルールを設けないので、公文書管理法の適用を受けます、と言っているのだと思います。そうすると、行政文書ファイル管理簿に特定秘密は搭載せず、特別秘密を管理する今の防衛省が行っているような管理システムは作ることになるのかなと思います。そして、特別秘密としての廃棄・移管の審査ができるプロセスを別途設けるということになるのだろうかと思います。

 ただ、気になるのは礒崎陽輔首相補佐官が自身のHPで今日、特定秘密保護法案についての記事を更新していますが、その中の以下の記載。

 秘密保護法案の疑問に答える
 5年の期限があることで指定について再考させる機会を与えることになります。特定秘密の指定解除後、文書保存期間が満了すれば、歴史的価値のある文書については、国立公文書館に引き継いで、供覧されることになります。

 個人的な見解としていますが、公文書館への移管は秘密指定が解除され、かつ文書の保存期間が満了したものは移管をすると言っています。移管されるのは秘密指定解除がされてからということになるということです。そうすると、秘密指定をされたまま保存期間をむかえたものは、内閣情報調査室の説明だと廃棄か否かの審査を経て、歴史的に残すべきものは公文書館に移管をするとしていますが、これは秘密指定解除ができるのものだけ移管をし、解除できないものは廃棄を認めず各行政機関にずっと抱えさせるつもり、と解釈することも可能です。

 特定秘密文書のライフサイクルを客観的に検証できるようにしないと、普通は特定秘密の中身に触れることのできないわけですから、お話にならないということになります。ここをもっと明確にはっきりとさせてほしいと思います。特定秘密保護法案が問題になっていますが、自衛隊法に基づく防錆秘密、MDA法、特別管理秘密、省秘などさまざまな秘密が政府には残念ながらあります。秘密や非公開がないのが一番いいのですが、現実は秘密や非公開の領域の検証がルールとしても運用としても実態としても検証ができない状況にあり、これを放置したまま秘密が問題だというのは、どうかと思います。特定秘密保護法案という問題とともに、秘密は民主的に管理をされ、時間軸を長くとってアカウンタビリティを果たす仕組みや、情報公開を広げる仕組みについてもっと議論をしてもよいのではないかと思います。
 
# by clearinghouse | 2013-10-01 21:18

 この間、情報公開クリアリングハウスで問題提起をしてきたことが特定秘密保護法案をめぐる論点としてちょっとだけだけど話が動いているのは、歓迎。私たちが一貫して問題提起しているのは、特定秘密保護法案に限らず政府が抱えている秘密をいかに民主的にコントロールし、時間軸を長くとってでも秘密扱いを解除して公開するために、秘密指定されたままでも歴史的文書として永久保存をするようにしないと、秘密指定される情報は闇の中に吸い込まれて二度と出てこないブラックホール化してしまう、ということです。

 ここまで出してきた論点に関連した動きは、以下のような感じできてます。

 そもそも自衛隊法に基づく防衛秘密も秘密の指定基準が訓令、解釈運用基準まで見てもなく、さらに防衛秘密の指定についての妥当性を監査・観察するような仕組みもなさそうで、そもそも秘密の範囲を適正に抑制する装置がないという、アメリカだと機密指定の監察機能が第三者的にあるという点については、

 クローズアップ2013:秘密保護法案 「定義」、行政裁量で 外部チェックのすべなく
 http://mainichi.jp/select/news/20130914mog00m010001000c.html

 機密指定に統一基準 政府、秘密保護法案の乱用防ぐ
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS22017_S3A920C1PE8000/

 自衛隊法による防衛秘密が公文書管理法の適用を受けていないので特定秘密保護法案も同じ問題があるという点については

 特定秘密保護法案:秘密文書残らぬ恐れ
 http://mainichi.jp/select/news/20130923k0000m010079000c.html
 
 秘密保護法案:「文書」 一転、保存ルールを検討
 http://mainichi.jp/select/news/20130928k0000m010040000c.html

 ただ、このやり方は提示した論点のつぶされ方によっては先の議論の展開がなかなか微妙になるので痛し痒しではあります。が、この間の政府や与党の対応を見ていると、ほとんど秘密を民主的にコントロールする上での秘密の保護という大きなビジョンがなく、報道等で指摘された「痛い」論点についてただただ反応しているように見えます。特定秘密保護法案は、法案を見ればわかりますが、外に出さずに以下に秘密を政府の中でコントロールをするのか、という視点しかないので、秘密であってもいかに民主制の中でアカウンタビリティを果たすのかとか、秘密の範囲を適正にコントロールするのかということを考えていないことははっきりしています。ただ、歴史的な検証もしないのかとか、秘密の指定解除の仕組みを入れますよと言いつつ、一方では秘密は秘密のまま廃棄して闇に葬ることができる仕組みをとっていることの矛盾は否定しようがないのではないかと思います。

 しかし、政府の秘密というものについて民主的なコントロールに委ねるという発想がない以上は、そのためのビジョンも持ち合わせていないのだろうと思います。政治も同じで、この間の報道で自民党から出てくる話は、「知る権利」への配慮を入れるか否か。知る権利は基本的人権か否かという、いつか見た議論をまたなさっておられます。情報公開法制定の際の15年前から本質的には何も変わっていないということが良くわかります。

 今日の公明党PTで公文書管理法の適用をすると内閣情報調査室の方が話されたとのこと。本当にそうするならそれは歓迎です。しかし、特定秘密指定をしたままそもそも国立公文書館に移管することが、今の公文書管理法や特定秘密保護法案でできるのか?という法制上の問題があるように思います。外務省を除いて特定秘密保護法案の対象となる分野の歴史文書を移管できる先は、国立公文書館しかありません。また別の問題として、行政文書ファイル管理簿は、私の聞いている範囲ではインタネット上で公表されている行政文書ファイルの名称で一元的に管理をされており、特定秘密と指定したものをどうこのファイル管理簿に搭載していくことになるのかも課題がありそうです。さらに言うと、行政文書の廃棄に当たって内閣総理大臣の同意を得ることになりますが、そもそも特定秘密であることをわかった上で廃棄に同意するのか否かを審査するような仕組みにはなっていないと思いますので、行政文書ファイル管理簿に名称もあいまいにして搭載していれば、どさくさに紛れて捨てられそうです。

 個人的には、特定秘密というカテゴリーを作るのであれば、それをきっちり管理・統制する別の文書管理のメカニズムを入れた方が良いのではないかという気がしています。単に公文書管理法の適用をさせるとなると、機密性などを考慮できないままになるのであれば、それはそれでダメージになるのではないか。機密文書として歴史的に残すか否かを審査するプロセスがあった方が良いのではないかとも思います。

 いずれにしても、秘密指定という手続を入れた上で、秘密指定文書のライフサイクルをどう考え、民主的にコントロールするのかというビジョンがないと、この辺の制度設計もできないのではないかと思います。そう意味で、構造的な欠陥のある特定秘密保護法案は、ビジョンのないまま議論をされることで構造的欠陥に手が入らないまま行ってしまうのではないか、ということを心配しています。

 ちなみに、今日の朝日新聞WEB版に、政府原案の条文がそのまま載っています。パブコメ時に公表された法案概要と内容的には一緒で、ただし最後に「報道の自由」への配慮が入っていますので、パブコメ以降微修正をしたものと思われます。

 「特定秘密保護法案 政府原案の詳細」(朝日新聞)
  
# by clearinghouse | 2013-09-27 22:17