鳥取県 学力テストの公開をめぐり、公開情報の使用制限をする情報公開条例改正検討

 
 鳥取県では、学力テストの市町村別・学校別のデータの情報公開請求に対し、県教委は不開示→請求者から不服申立て→審査会が公開を求める答申→しかし県教委は答申に従わず不開示維持→情報公開訴訟提起、となりかなり問題になっている。10月には県議会が開示を求める決議を行い、不開示を維持したい県教委と一部の市町村教委VS情報公開請求者、県議会という様相を呈してきた。

 この一連の流れから、県教委は情報公開圧力の高まりに抗することは困難と思ったのか、学校別、市町村別のデータを公開するための条件整備として、公開情報の使用制限をする情報公開条例の改正の検討に着手。10月22日ごろから報道されていたので気になっていたが、書けない原稿に唸っているうちに時が過ぎ、10月30日の県教委で条例改正案についておおむね了承を得たとの報道に至ってしまう。いささか出遅れてしまい、おまけに31日は子どもの施策全国自治体シンポジウムの分科会で何かを報告するようにとの命を受けていたりと、なんとなく動きがとれずに連休に突入。11月4日になってようやく詳細の内容の把握。タイミングが悪いと、こうも出遅れるという、見本のような顛末。

 そうとはいっても、本質的な問題をいろいろはらんでいるので看過できない。特に、使用制限付きの公開って、いったいどういうこと!ということで、クリアリングハウスでも意見書を提出する方向で調整をしつつある。

 10月30日の県教委の「委員協議会資料」を入手したので、検討されている条例改正の内容を確認。改正が検討されているのは、①開示義務の規定での不開示事由の改正、②制限付き開示に関する規定、③罰則、④適用範囲、の4点。

 ①の開示義務の規定は、
鳥取県情報公開条例9条2項7号
小学校の児童又は中学校の生徒の全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果であって、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るもの
 という規定を 
小学校の児童又は中学校の生徒の全国的又は全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果であって、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るもの
 に改正するというもの。今回の学力テストの市町村別・学校別データの公開については、県基礎学力調査ではすでに同様のデータを公開していて、その公開のために平成15年6月に情報公開条例を改正し、不開示事由の追加を行っていた。この改正、まったくもって見落としていた。

 条例の解釈・運用指針をみると、9条2項7号(基礎学力調査結果に関する情報)の趣旨は、
 本号は、小学校の児童又は中学校の生徒の心情に対する配慮並びに教育行政の適正な遂行に対する支障の防止の観点から、全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果で、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るものにつき非開示とすることを定めたものである。
 5号及び6号の解釈運用でも可能であるとの考え方もあるが、情報公開制度の明確化や実施機関の裁量を限定するために、平成15年6月の改正により新たに非開示条項として規定したものである。
 となっている。

 ②の使用制限付き開示の規定は新設する規定で、10条の2を設け、
・実施機関は、開示請求にかかる公文書に全国学力調査の調査結果に関する情報が含まれる場合であって、児童等の健全な育成のため意教育的配慮が必要と認めるときは、開示請求者に対し、当該情報の使用に関し、特定の学校又は学級を識別できる方法による公表、提供をしてはならない、などの制限を付した上で開示決定することができる。
・開示請求者は、上記制限に反して当該情報を使用してはならない。
 とするという。

 ③の罰則は、過料か罰則を設けないかが教育委員会では検討されていたが、報道によると罰則は設けないことにしたという。④の適用範囲は、2008年度までの学力テストは従来通り不開示、2009年度の学力テストから改正条例を適用して開示することにするとなっている。

 県基礎学力調査に関する情報公開条例改正から、「教育的配慮」による特定情報に対する不開示事由が条例上、明文化されていたところに、今回の学力テストの関連データの取り扱いをめぐり、不開示事由の改正を行うとともに、次は公開情報の使用制限により、情報公開と教育的配慮のバランスをとるというのが、県教委の条例改正の趣旨のよう。10月21日に行われた「全国学力・学習状況調査の取り扱いに係る市町村(学校組合)教育行政連絡協議会」の概要によると、使用制限規定を設けることについて、以下のようなやり取りがある。
○市町村教育長:情報公開条例は、その趣旨から開示請求者に対して趣旨に反するため得た情報について制限を加えることは無理だと解釈しているが、法的に可能なのか。
●事務局:そこを知事部局と検討している。恣意的に制限は出来ないので、配慮を求める、情報開示を受けた者だけに限定して、情報の意味合いを考慮し、子供たちへの心情への配慮を条件とする程度でどうか。請求できる人物像、目的、利害関係等での制限は不可能。必要最小限のぎりぎりのところでやる方向。
 事務局の説明は非常にある意味自覚的。ただ、それでも公開情報の使用制限を規定し、特定の学校又は学級を識別できる方法による公表、提供をすることを禁止することによって情報公開を行うことは、情報公開条例の原則に照らせばありえないと思う。

 それは、情報公開条例は請求権者に等しく公開請求をする権利を保障したものであり、手続的には請求者に対して情報を公開することになるものの、公開される情報はだれが請求しても同じように公開される情報だからだ。制度上は、請求権者にはだれでも同じ情報を公開するとしつつも、その情報を公開を受けた人間が公表してはいけないというのは、どう考えても論理破綻している。何より、情報公開条例は目的規定にもあるように、情報の公開を通じて県民参加による開かれた公正な県政の推進をするためには、公開された情報が請求者一人の手元にとどまることを想定しているのではなく、公開された情報が利用(分析、公表、提供等)されることが当然に予定されているものだ。

 もう一つは、今回は使用制限に反した場合の罰則規定の導入は見送られているが、使用制限には従いませんという意思表示をあらかじめした請求者に対しては、どうするのかという問題がある。請求目的は問われないし、それによって公開の範囲が変わることはあり得ないが、使用制限の遵守を拒んだ場合は、利用目的が不当ということに条例上はなるのだろうか。そうすると、開示決定等の処分はどのように行われることになるのか。また、使用制限そのものが行政処分に該当することになるのだろうか。行政の処分行為がどのように及ぶことになるのか、いささか不透明過ぎる。

 学力テスト限定の規定が検討されているが、それにしてもやろうとしていることは、ぎりぎりの範囲でなんとか、というようなものではないと思う。そもそも、学力テストのデータの公開は、情報公開制度の問題ではなく、政策の問題ではないかと考えている。確かに、情報公開制度による公開請求があれば、不開示事由に該当しない限りは情報は公開されることになるけど、問われるのは県教委なり県などが作成・取得した情報をもとに政策的に何をしているのかということではないか。学力テストの是非はともかく、なぜ学力テストに参加をしたのか、という意味を十分に考えるべきではないかと思う。ところが、情報公開条例を改正して公開、という話となると、はっきりいって、超迷惑だ。そもそも最近、特定の情報の公開や特定の請求者絡みで情報公開条例の改正という話が多すぎる(`_´)

 一応、11月上旬から中旬でパブリックコメント、11月14日の定例教育委員会で方針の正式決定、知事に改正依頼、11月定例県議会に改正条例案提出の予定だという。知事部局は県教委と調整しているようなので、このままだとおそらく改正条例案を提出するだろう。そういえば、この知事には総務部長時代と副知事時代に会っているような気が。それでもって、学力テストデータの開示を求める決議をした県議会はどうする?原則なき議論だけは、避けてほしい。
 
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by clearinghouse | 2008-11-05 00:50