最高裁 検証物提示命令申立てを却下

 2008年5月、沖縄国際大への米軍ヘリ墜落事故に関する情報が一部不開示となったことが争われている訴訟で、福岡高裁が、原告側の申し立てた検証物提示命令申立てを認めていた。(経緯などは、以下を見てください)

 http://johokokai.exblog.jp/8895526
 http://johokokai.exblog.jp/8932320

 事案の概要を簡単に言ってしまえば、原告側が立証等を行う上で、例えば情報公開審査会で作成されている可能性のあるヴォーンインデックスの証拠として提出などを求めて万策を尽くしたけど、結局ヴォーンインデックスはないと国が主張するなどして万策がつきしまった。そこで、不開示文書についての見分時の立会いの放棄などをするので、裁判所が不開示文書を検証物として国に提示を命令して見分することを福岡高裁に申立て、それを高裁が認めていたのだけれど、国側が最高裁に抗告していた、というもの。

 その国側の抗告に対する最高裁決定が1月15日付で出され、結局検証物提示命令申立ては却下されてしまった。15日に代理人事務所に最高裁から却下決定を送付したとの連絡があったそうで、その日のうちに原告から連絡をいただいた。そうこうしているうちに、原告の手元に決定の書面が届く前に共同通信で記事が配信され、それを受けて原告の地元紙である沖縄タイムスからこちらに取材の電話があり、決定文を見ないまま共同通信の記事だけでコメントをしてみました。

 沖国大ヘリ墜落 国の情報不提示容認/最高裁 高裁決定を破棄(沖縄タイムス)

 今日、決定が原告の手元に届いたということで、FAXで全部送ってもらい、内容を確認。最高裁の決定は、事実上の裁判所によるインカメラ審理を求める申立てであり、それは民事訴訟の基本原則に反するので、名文の規定がない限り、インカメラ審理を行うことは許されない、としている。

 情報公開審査会ではインカメラ審理が行われていることとの関係では、

①平成8年の民訴法には証拠調べとしてのインカメラ審理を行いうるとの明文規定が設けられていないこと
②現行の民訴法では、文書提出義務や検証物提示義務の存否を判断するためのインカメラ手続に限って個別に規定を設けて特に認めているが、平成11年制定の情報公開法でも裁判所がインカメラ審理を行いうる旨の明文規定がなく、不開示事由該当性を判断するための証拠調べとしてのインカメラ審理をあえて採用していないものと解される

という判断を最高裁は示した。

 外交情報を含むこの件で、事実上のインカメラ審理が現行法制の中で行い得るとなれば、インカメラ審理手続に関する制度的な整備を待たずにインカメラが訴訟の中でも可能になる、と思っていたけど、結局はこうなってそれはそれで残念。特に2004年の情報公開法の見直し検討の中で、インカメラ審理が見送られた経緯を思えば、ここで訴訟実務の中で進んでくれれば・・・、と思ったもの。

 ただ、この最高裁決定は、反面から見ると、インカメラ審理について明文規定がないことが却下された理由であって、インカメラ審理そのものを否定していない。そして、決定には2名の裁判官の補足意見がある。

 一人は泉徳治裁判官で、以下のように補足意見を述べている。
 ところで、新たな立法によって情報公開訴訟にインカメラ審理を導入することは、以下に述べるように、裁判の公開原則を保障する憲法82条に違反するものではなく、訴訟制度構築に係る立法裁量の範囲に属すると考える。
 情報公開訴訟は、開示請求に係る行政文書を開示しない旨の行政機関の長の決定が違法であるか否かを判断するためのものであって、その訴訟手続の途中で当該行政文書の内容を法定で公開するということは、もともと予定されていないことである。だた、現在の情報公開訴訟においては、裁判所は、当該行政文書を見分することなく、周辺資料から当該行政文書に不開示情報が記録されているか否かを間接的に推認するほかないため、裁判所が請求を棄却した場合に、開示請求者の納得を得にくい面があることは否定できない。
 インカメラ審理は、裁判所が当該行政文書を直接見分し、自ら内容を確認して実体判断をするための手続であるから、国民の知る権利の具体化として認められた行政文書開示請求権の司法上の保護を強化し、裁判の信頼性を高め、憲法32条の裁判を受ける権利をより充実させるものということができる。
 裁判を受ける権利を充実させるものである以上、情報公開訴訟におけるインカメラ審理は、憲法82条に違反するものではないと解すべきである。
 その通り!といいたくなる補足意見。行政救済である審査会がインカメラ審理を行っているけど、行政救済の場合はそこでだめでも訴訟ができる。ところが、訴訟は敗訴すればその先がない。となると、より裁判所が合理的な判断をするためには、本来的には行政救済と同様にインカメラ審理があるべきものだと思うので、こういう違憲ではないという見解が示されたのは、大きい。

 もう一人の補足意見は、宮川光治裁判官のもの。
 情報公開訴訟においては、裁判所が当該文書を見ないで不開示事由の該当性について適正な判断をすることができるかについては著しく困難な場合があり、また、周辺資料から判断するという迂遠な方とに寄らざるを得ないため、審理は迅速には行われ難い場合がある。こうしたことから、情報開示の申立てを行なう当事者の側には、インカメラ審理を導入して少なくとも裁判所には当該文書を直接見分して適正に判断してもらいたいという要望がある。また、インカメラ審理の存在は、行政機関の適切な対応を担保する機能を果たすとも考えられる。
 情報公開訴訟にはインカメラ審理を導入することが憲法82条に違反しないことは、泉裁判官の補足意見の通りであるが、適正な裁判を実施するために対審を公開しないで行うことは、既に人事訴訟法22条、不正競争防止法13条、特許法105条の7等にある。開示を求める当事者がインカメラ審理を求めるのは、それが知る権利を実現するためにより実効的であるという判断であり、行政機関の側には審理に先立って不開示とした理由等について説明する機会が与えられるのであれば手続保障の上でも問題はない。そして、情報公開・個人情報保護審査会設置法9条1項、2項で同審査会の手続にインカメラ審理を導入する一方で情報公開訴訟においてこれを欠いていることは、最終的には司法判断によることとした情報公開制度の趣旨にそぐわないと考えられる。情報公開訴訟へのインカメラ審理の導入に関しては、ヴォーン・インデックス手続と組み合わせ、その上でインカメラ審理を行うことの相当性・必要性の要件について慎重に配慮すべきであるが、情報公開制度を実効的に機能されるために検討されることが望まれる。
 やや泉裁判官より慎重な面はあるが、やはりその通り!と思う。

 というわけで、こうなったら目指せ情報公開法改正!ですね。

 決定文全文は、近くアップします。
 
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by clearinghouse | 2009-01-16 10:00