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公文書管理法案 与野党修正合意

 新聞各紙で報道されていますが、6月4日の衆議院内閣委員会理事懇談会で、公文書管理法案の修正内容について与野党間で合意されました。この間、修正に向けて協議をし尽力された議員の方には、ここまでこぎつけたことに敬意を表したいと思います。

 法案の修正で合意されたのは、主に以下の事項(ほぼ全部網羅しました)

①目的規定への文言の追加(公文書等が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であることなど)
②文書作成義務の範囲を具体化、明確化(ただ、5項目列挙され加えて「その他の事項」となっているが、どの程度義務の対象であるかはわかりにくいかも)
③移管・廃棄の措置は保存期間満了前のできる限り早い時期に決定する
④集中管理の推進(いわゆる中間書庫のことと思われる)
⑤行政文書ファイル管理簿の公表方法について定める
⑥行政文書ファイル等の廃棄に当たっては、内閣総理大臣に協議、同意を得なければならない
⑦行政文書管理規則等の制定・変更に関して公文書管理委員会への諮問事項として追加
⑧研修の実施
⑨行政機関の組織の変更、独立行政法人等の民営化等の組織の見直しに際しての措置
⑩施行後5年を目途とした見直し規定
⑪司法・立法の文書管理の在り方についての検討

 大きな修正は⑥で、行政文書の廃棄が各行政機関の権限のもとに行われていたところ、内閣総理大臣との協議、同意を要するとしたのは、非常に大きな前進と評価されるところです。法案の構成を考えると、保存期間満了前のできる限りはやい時期に行政文書を歴史公文書等か否かを判断し、歴史公文書等については国立公文書館等へ移管、それ以外は廃棄とするものの、実際に保存期間満了時に廃棄するときは、内閣総理大臣の同意が必要ということになります。つまり、移管か廃棄の選別は保存期間満了前に、廃棄をする際は保存期間満了時にその適否を再判断するということですね。

 もう一つ大きな修正は②の文書の作成義務の範囲。修正前の規定より明らかに作成義務の範囲が広くなったので、これも修正は歓迎。だけど、列挙された5項目でどの程度がカバーされるのか、いまいちピンときません。そもそも、私自身も意見書を取りまとめるときにもっと意識的に書き分ければよかったと思うのですが、明らかに「文書の作成義務の範囲」<「行政文書」でなければならないと思われるので、作成義務の範囲が広くなると行政文書として確実に残される記録が明確化することになりますが、それ以外の部分でも行政文書は発生しうるということは踏まえなければなりません。特に、経過については電子メールを含む記録類が含まれるはずなので、作成義務の範囲と行政文書の範囲については分けて、行政文書の適正な管理がなされるものであることの理解はしっかりとしておかなければと思うところです。

 他にもいろいろ前進があり、国会で修正がなされたことは大いに歓迎するところです。

 ただ、問題は、すべては公文書の管理が「行政文書ファイル」の単位を原則として行われるところです。行政文書ファイルの作成については5条に規定があるところですが、密接に関連する文書で行政文書は構成され、かつ保存期間を同じくするものに限って一つの行政文書ファイルにするというものです。保存期間を同じくするものに限る、とは一体どういうものになるのかによっては、一連のものとして保存されるべき行政文書がそうではない管理下におかれることになります。どういう単位で保存・管理され、保存期間の設定が行われるのかは、この法案の肝の部分の一つだと思われます。

 私個人の経験からすると、大蔵省刊行の『昭和財政史』で引用された行政文書が保存期間満了を理由に廃棄したとして、情報公開請求をしたところ不存在決定された事件について訴訟で争っているところですが、経緯を見ると、いったん財政史編纂のために財務省の関係各署から集めた行政文書を財政史編纂のためにテーマごとなどで編纂してファイルなど一まとまりにし、編纂終了後にそれをばらして関係各所に返却したという経緯をたどっています。借り受けた文書であるということがそれを正当化する理由です。こういうケースは、これからどうなるのか、と思わざるを得ません。

 もう一つ肝と思われるのは、「歴史公文書等」とは一体何かということです。保存期間満了前に「歴史公文書等」とされた行政文書は国立公文書館等への移管義務の対象となります。それ以外が満了時に廃棄の扱いになりますが、歴史公文書等として何が該当するかは、あいまいです。法案修正で、廃棄の時点での内閣総理大臣の同意が必要になったので、廃棄の時点で歴史公文書等に該当するか否かの判断を再び行うことになるでしょう。つまりは、歴史公文書等は何かということがどこまでもついてくることになります。ここは運用の問題でもあるかもしれませんが、もう少し注目しても良いように思います。

 その他に、運用上懸念される事項はいろいろありますが、それは次の機会にでも書いてみたいと思います。
  
by clearinghouse | 2009-06-08 00:00