東北厚生局の開示文書改ざん・改変問題―情報公開法の趣旨に反するという程度の問題か?

 10月20日付の毎日新聞が、東北厚生局が開示請求された文書の改変問題を報じています。

 東北厚生局:開示文書また改変 不祥事発覚後
 http://mainichi.jp/photo/archive/news/2010/10/20/20101020k0000m040125000c.html

 この問題、情報公開法の本質に関わる問題として制度の信頼性を覆す深刻な問題ですが、それだけにとどまらない問題だと思います。改変された開示文書は、福島県郡山市の医療専門学校が東北厚生局に提出した08~09年度の年次報告。新聞記事によると

 開示請求をした人:学校から不当解雇されたとして提訴している元教員
 改変の経緯:
  7月8日に年次報告等を開示請求→30日の決定期間延長→延長期間を経過しても決定されない
  →請求者問い合わせる→「記載に間違いが見つかったので学校に訂正を求めている」と回答
  →10月2日に開示が実施されて改変後の文書が送られてくる→改変個所は不明

 記事では、年次報告には歯科衛生士科の授業時間数などが含まれているということが特に述べられているので、不当解雇で学校を訴えている元教員には、この授業時間数が重要な情報だったということではないかと思われます。

 この問題、結局年次報告等は学校側が提出しているものであるので、ミスがあろうとなかろうとそれは学校の責任の問題とするのが本来ではないかと思うわけです。東北厚生局に年次報告等を審査しなければならない法的義務があったとすると、それは受け付けた時点で行っていなければならないものであるわけです。そして、年次報告等での誤りとは一体なんだったのかの説明は行われていないし、労働争議になっている。おまけに、改変前のもともとの文書が行政文書として存在するのか否かが不明です。

 そうすると、なんで東北厚生局は、開示請求が行われた後にわざわざ開示請求対象文書を制度の想定を超えて改変を学校側に求めると言うことまでしたのか、という疑問がわきます。例えば、年次報告等にミスがあったとすれば、今後、学校側と請求者の間の問題として当事者間で争うなり、話し合うなりすればよいことでしょう。にもかかわらず、訂正(改変)を指示している。しかも、東北厚生局総務課長による、組織として決裁をしていて、問題とは考えていないというコメントも記事にはあります。

 ただ、情報公開法施行令は開示請求されている文書の廃棄は当然のことながら禁じていますから、廃棄はないはず。しかし、何が開示請求対象文書であるのか、というそもそもの問題がこのケースの場合は問題になりそうです。この場合、開示請求時点で存在した改変前文書であるべきですが、東北厚生局はそう考えていないようなので、廃棄を正当化する内部の屁理屈は考えていそうです。この問題は、少し徹底的に追及していかないといけない問題ですね。

 それに、何が訂正されたのかが明らかになっていないので何とも言えませんが、請求者が誰であるかを見てこのようなことが行われた可能性があります。請求者にとって、あるいは学校の問題を明らかにする上で重要な部分が改変された可能性もありますし、東北厚生局は、学校側に便宜を図り、請求者である元教員に対しては不利益を与えた可能性があるわけです。

 この東北厚生局と医療専門学校の関係が何か不適切なように思うのは、今年の6月下旬にもこの学校関係の情報公開請求で、文書改ざん問題が発覚しているからです。

 リンク切れなのでURLの引用はできませんが、今年の6月11日に同じく毎日新聞が東北厚生局による同じ医療専門学校関係の開示文書改ざん問題を報じています。記事の内容からわかる概要は以下のような感じです。

 開示請求者:学校の卒業生の男性
 改ざんの経緯: 
  04年ころから授業時間不足であることについて学生・教員から東北厚生局に内部告発ある
  →06年11月に再三の指摘を受けて医療専門学校で実地調査を行い「実地調査結果」が作成される
  →07年6月に卒業生の男性が、指導関係文書を開示請求し8月に開示が実施
  →一部不開示だったので、今年の4月に改めて同じ文書を開示請求した
  →2度目の開示請求で開示された「実地調査結果」の「問題事項欄」に最初の開示請求の同じ文書
   には記載のなかった事項が見つかる

 2度の開示で文書の内容の何が違ったかというと、これも授業時間数に関わる内容。記事によると「H16年度(04年度)の変更申請を承認していないため、H16年度以前のカリキュラムで授業を行うべきであったが、未承認のカリキュラムで行っていたため、学則上での授業時間の不足が生じることになる。(不足時間 柔整科497時間、鍼灸科784時間)」という記載が、07年の開示文書にはなく、今年開示された文書にはあったというものです。

 07年の請求は一部不開示だったと記事にありますので、不開示個所は黒塗りなど請求者にもわかるように示されていたはずなので、問題の個所が不開示であればわかるはず。しかし、そうではないようなので、07年時点ではその部分を請求者には存在そのものを隠して開示したということになります。問題の個所は、文章の末尾の4行と記事にありますので、請求者にわからずに容易に完全に隠ぺいできたものと思います。今年の開示請求ではそこが隠ぺいのために改ざんされていたとは知らずに、後任の担当者が開示をしたので問題が発覚したということでしょう。

 この医療専門学校では、柔道整復師と鍼灸師という国家資格の受験資格として、法令で定める履修単位を履修していることが必要なところ、カリキュラムの承認を受けずに授業を行っていたため、授業時間数の不足が大量に生じたとのことです。記事では05~07年度の卒業生約260人が単位不足で、本来は東北厚生労働局が補講を指導しなければならないところ、あまりにも補講時間が多く、しかも多くの卒業生がすでに開業等をしているので、特例として補講を免除したようです。

 しかも、おまけに「実地調査報告」をまとめた養成施設係長は、07年開示請求当時に総務課で情報公開窓口担当として請求を処理したとのこと。隠ぺいのための改ざんが、実地調査を行った所管レベルではなく、情報公開窓口担当で行われた、しかも個人的に行われた可能性も否定できないのかなと思います。

 結局、東北厚生局がたびたび学校関係者から問題の指摘を受けながら、必要な指導等を医療専門学校に行ってこなかったことが問題を大きくして、最後は東北厚生局が自らの怠慢等々から発生した問題を特例として裁量的に処理をしたということですよね。しかも、医療専門学校もそうすることで責任を免れた。お互いに、責任を回避するためにはそうする必要があったという共犯関係とも言えるのかなと思います。

 この件を見ると、医療専門学校の問題ではありますが、それを除いてみると問題の指摘を受けていた東北厚生局がその指摘を放置してきたというのがすべての発端のようです。そして開示文書の改変問題も、開示文書の隠ぺい改ざん問題も「授業時間数」という問題がキーワードのようで、不適当な関係性が東北厚生局と学校側にあるかもしれないですね。

 そして、情報公開法は、情報内容に問題があったとしても、そのまま開示をすることが前提の制度であることは自明のことなのですが、でも一方で本当にそう運用されているのかをチェックすることも難しい。だからこそ、ある程度の信頼がないと、情報公開法の前提そのものが成立しなくなってしまう。二つの情報公開法をめぐる問題は、問題になりそうなものは改ざん・改変することがある、しかも組織的に理屈が立てば、組織的な意思決定をしてそれを行って正当化することがあるという、行政機関側の体質の問題があることを改めて認識させられたところです。

 まずは、学校側に訂正させた改変文書については、改変前の文書の開示を行うことと、改変・改ざんの両ケースではなぜこういうことになったのか、なぜこう判断しているのかが明らかにさるべきでしょう。そうでないと、やはり行政は市民を守るのではなく事業者を守るところなんだ、という不信を残すだけです。

 ところで、公益通報者保護法の見直しの検討が行われていますが、医療専門学校の授業時間数不足という問題が、この法律の対象として保護されるべきものかどうかは、ちょっと調べたくらいではわからない。けど、仮に公益通報者保護法の保護対象事実だとすると、06年4月の施行なので、長いこと放置されてきた問題が06年11年になって実地調査等されたのは、その影響もあるのでしょうか。
  
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by clearinghouse | 2010-10-22 12:39