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第15回公文書管理委員会 傍聴感想

 3月19日の開催なのでだいぶ時間がたってしまいましたが、公文書管理委員会の傍聴に行ってきたので、その報告。相変わらず、まったく内容のない議事概要は公表されていいます。

 公文書管理委員会資料等
 http://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2011.html

 以下は手元メモをもとにしたものです。

 東日本大震災・原発事故関係の議事録未作成問題の「原因分析案」というペーパーが配布されていましたが、それについて意見が様々。野口委員は、原因には組織面と制度面の問題が考えられるが、それぞれずいぶん違いがある。組織面では努力していたところがあれば、できていないところがあったので、原因を一般化するのではなくもう少し細やかに組織ごとに指摘してはどうかと発言。また、公文書管理法は平時の仕組みを想定し、非常時の想定なかったので、記録作成の席に態勢などの認識不足について、分析の中に出てくる必要があるのではないかという発言。

 加藤委員は、「原因分析」の資料の中にある「議事録・議事概要以外の形での記録を作成」という項目について特に意見。議事録以外での作成があるというが、歴史的に記録を残そうと思うと、発言者名があって内容が記録されていることがあるべきではないか。人間として記録を残そうとするということは、そういうものではないか。形だけで責任を軽減することの内容にするべきではないか。自治体では説明責任は記録を作るところにあると、震災対応等で記録を作っているところがあり、国では公文書管理法4条の規定があるが国の対応はどうなのか。もう少し、細やかに指摘する必要があるのではないかという発言。

 三宅委員は、法との関連を細かく分析の中でフォローしておいた方がよいのではないか。公文書管理法の施行がどういう意味を持っていたのか、これだけ(原因分析)では見えてこない。公文書は役所の中に流れる血液のようなものという指摘。石原委員からは、法が何を目指すのかというと、役所の仕事の在り方を変えるもの。なぜ記録を作成し残すのかは、業務の改革にある。その必要性を訴える必要があるのではないかとい指摘がありました。

 最後に御厨委員長から、原因分析はちょっと整理されすぎている。抽象化すると仕方がなかったという免責の方向に向いてしまう。なぜできなかったのかが分析に出てこないと。もう少し中身に踏み込んで、歯止めと尾前向きの議論にならないといけないのではないかという指摘がありました。そのあとのかぶせるように、公文書管理を担当する岡田大臣から、「原因分析は、各会議体等がこう言っているということを整理したもの。各省庁の言ったことを整理したペーパーであればこれでいいと思う。これが政府自身の考え方、政府がそう思っているというものではない」という発言あり。この大臣発言については、後でちょっと触れたいと思う。

 また「改善策に向けた論点案」についても検討がされています。

 最初の発言は野口委員。緊急時は、記録の作成、情報管理まで回らない。すべてのことを事前に予測できるわけではない。法律は平時の者で非常時の対応に不慣れ。その場で記録を作ることが難しい場合は、スケジューリングをするのでどうか。記録の集積体を整理していくスケジュールを作り出してもらい、記録の作成やその見直しのスケジュールをチェックするということではどうかという意見。

 三宅委員は、不信・不満を解消するルールが必要。情報をHPにアップして管理できるシステムやガイドラインを作ることが必要。「論点案」の冒頭に、「より積極的な議事内容の記録の作成を行うことが望ましかったと考えられる」とあるが、すべてはキーパーソンが何を言ったかが残っていくべきで、この書き振りでは物足りない。内閣総理大臣の勧告の発動の、どう動かすかを決めていなかったのはないかという指摘がありました。

 加藤委員からは、公文書管理法は「長」の縛りで書いてある。下にルールを下していくときの細則が行政文書管理ガイドラインに必要。9条3号にある内閣総理大臣のチェックを機能させてフィードバックをしていくシステムがあることが大事。作成された議事概要などは原子力災害対策本部はよくできている。4人で議事概要作成を担当したと聞いてるが、期間を区切って9条3号でフィードバックをするものひとつの方法という意見がありました。

 石原委員からは、制度とスタッフの二面性がある。スタッフに関することが物足りない。管理・監督をするセクションが機能的に足りない。記録管理に関する専門機関を作り、スタッフを増やし、かくしょうちょうに何人か常駐させて指導監督する、例えばレコードマネージャー制度のようなものが必要ではないかという意見がありました。

 御厨委員長からは、震災の結果できた組織の反省・検証と、今後の管理体制についての議論を深めていくことと、対策が違うのではないかという指摘があり、野口委員から、材料の整理の仕方の問題ではなく、分析と改善がリンクしていないといけないのではないかという意見が出ていました。

 ただ、最後に岡田大臣から、「今回の事例への対応と、全体の見直しを分けて議論をしてもらった方がよいのではないか。後者は少し念入りにやらないといけない。具体的なこととしてコンパクトに今回の事例についてまとめて早く出してほしい」というコメントがありました。

 結局、大臣の発言の方向に進むのか、それとも委員の間で出された意見から方向性を調整するのか、よくわからない結果になったように思います。

 この大臣発言を聞いていて、最大の疑問なのが公文書管理を担当している岡田大臣の同席。委員会としての大きな方向性について大臣が発言し、その方向に結論として流れているようで、第三者機関とは何ぞやと考えてしまいました。公文書管理委員会の委員の発言を聞いていても、大きな方向性としてどこまで踏み込むのか見えてこないところがあり、視点の置き所もさまざな。

 ただ、行政運営については「当」「不当」という考え方もあり、行政処分ベースでいえば、行政不服審査法では違法ではなく「不当」であることを理由にした是正機能があります。裁判になると違法かどうかが問題になりますが、行政運営に関しては、行政組織内の是正機能があるべきではないかと思うところで、そういう意味では、前回会議での野口委員の発言(判明した事実大切。公文書管理法が世間的に誤解されているところがあり、議事録未作成問題は、違法か運用執行が行き届いていなかったということか、それとも理想論からの議論をこれからするのか、それが混ざっている。法の施行という観点から違法かグレーか、適法だけど改善が必要かということを、判明した事実をもとに検討することが大切、というもの)には一理あるものの、行政運営の是正機能をどう考えるのかという視点が、今回の議事録未作成問題にはあってしかるべきだと思います。

 そういうところでは、公文書管理委員会としてどこまで是正機能を発揮できるのかということはとても注目すべきところで、そこで違法かどうかだけを審議することとなると、それは行政機関内の第三者機関としての機能としてかなり狭いものとなるのではないかと思います。加えて、大臣がそれぞれの議案の中でまとめた方向に行くとすると、大臣が方向付けをしたものを、第三者機関が審議をするという話となり、第三者機関ってこういうものなのでしょうか、と疑問に思ってしまいます。岡田大臣の出席を否定するつもりはありませんが、会議の方向性が大臣の一言で決まってしまうとすると、それはちょっと違うのではないかと思うのです。

 また、傍聴していて議論を聞いていると、AccountabilityとResponsibilityが同じように論じられているように思えてならないところです。Accountabilityとは何かということの共有がないと、建設的な議論は難しいのかなと思えます。前回の公文書管理委員会での野口委員の法的な整理をということから作成された「公文書管理法第4条について」というペーパが今回出されていましたが、その中で、

・「議事録又は議事概要の作成を一律に求めているものではなく、作成されていないことを持って直ちに法に違反するとは言えない」とか、
・「会議体の目的及び性格等により、議事内容を記録する必要があるか、記録する場合にどの程度詳細に記録されている必要があるかは異なる」
・ガイドラインに議事録とあることについては「各業務プロセスにおいて作成されることが多い文書を例示として記述したものであり、当該具体例の文書のすべてが、作成義務に基づき作成されるべき文書となるわけではない」

という説明がされています。要は、違法とは言えないということを説明した事務局作成文書です。ただ、繰り返しますが、違法かどうかだけでなく、行政運営にはそもそも是正をする機能があるべきだと思うので、そうすると、是正すべき方向とはなにかということをもっと論点として考えるべきではないかと思います。
 
by clearinghouse | 2012-03-27 02:13