人気ブログランキング | 話題のタグを見る

渋谷区で情報公開文書のコピー代を値上げする請願可決

 少し前ですが、渋谷区議会で、情報公開請求で公開された文書のコピー代を値上げする請願が可決されたという報道が…

 渋谷区議会:情報公開請求コピー代、値上げ検討請願採択 /東京(毎日新聞 2012年10月18日)
 http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20121018ddlk13010189000c.html

 請願の紹介議員は、公明党、自民党、新民主渋谷の3議員。新民主渋谷は、民主党から出た議員の会派で、ネット情報だと区長与党とのこと。

 請願の内容は、以下の通り。
情報公開のコピー代について検討を求める請願

 最近、渋谷区に関するマスコミ報道で、情報公開のことが数多く見受けられます。新聞報道によると、ある区議会議員が職員の勤務日報などを2000ページも請求したと書かれていました。
 情報公開制度は、区民が区のことを良く知るうえで、非常に重要なものであると考えますが、このような大量の請求を処理するには、大変な事務量を要するのではないでしょうか。渋谷区では、情報公開時には資料1ページにつき10円のコピー代を領収すると聞きましたが、2000枚も資料を請求してもわずか2万円にすぎません。
 情報公開請求があると、資料に個人情報がないかチェックし、個人情報があるときは、その部分を黒塗りにする作業を行い。それをコピーするのだ伺いました。コンビニでコピーをとると1枚10円かかりますが、利益をあげる必要のない区役所でも、コピーを複数回行えば、コピー代の実費は10円以上かかるのではないでしょうか。
 ましてや、これらの作業は、重要な文書を扱うわけですから、委託するわけにはいかず、職員の方が作業せざるを得ません。職員の方の次官級がいくらかわかりませんが、人件費を考えたときに、資料1枚を処理するのに10円のコストであるとは考えられません。
 現在、我々区民の暮らしも苦しくなり、区の税収も減っている中で、一部の人の情報公開請求に、多くの事務量を費やすのであれば、それ相応のコピー代を求めるべきだと考えます。私たち区民の血税を有効に使ってもらうためにも、情報公開のコピー代を事務所に理見合った金額にしていただくなど検討していただきたい。

【請願項目】
 事故のコピー代は、作業時間を考慮した金額に改めるなど検討してください。


 この請願、支離滅裂なところもありながら、かなりうまく作られています。

 情報公開された文書のコピー代は、「実費」という前提で考えられていると思います。通常、実費というとコピー代の市場価格に見合ったものを徴収するということになります。だから、一般的には1枚10円。しかし、実際には部分公開を行う場合は黒塗りをするので、その場合は、1枚当たり少なくとも2枚はコピーを取るので10円ではそもそも実費はすまないということを言っているわけです。

 この理屈はそもそも破綻していることは、少し考えればわかるものです。全部公開の場合は当たりませんし、部分公開文書は複数回コピーを取ることを理由にするのであれば、黒塗りされた文書のみコピー代を余計に徴収するという理屈にもなる。また、部分公開であっても閲覧のみだと、そもそも黒塗りするためにとったコピー代も徴収できないということになります。

 そこで次に出てくるのは、職員の時間給がかかっているという話で、特定の人の情報公開請求に給与が支払われているのは、税の使途としては有効ではないので、相応の負担を請求者にしてもらうという意見です。要は、実費ではなく「手数料」を受益者負担させるべきというものです。しかし、ここであくまでもこだわっているのは、「コピー代を事務処理に見合った金額に」ということです。事務処理のコストをコピー代で徴収するということは、そもそも現実的ではなく、また請願の趣旨としては「手数料」の徴収を求めてもおかしくないのに、コピー代に話が落ちている。

 これを私なりに解釈すると、手数料の徴収となると情報公開条例の本文を改正しなければならないのですが、コピー代は条例で「区長が別に定める」としか条例には書いていないので、区長が裁量的に自分の判断で変更ができるので、「コピー代」に話を集約しているのではないかということです。
渋谷区情報公開条例
(費用負担)
第十二条 この条例の規定による公文書の閲覧又は視聴に係る手数料は、無料とする。
2 この条例の規定による公文書の写しの作成及び送付に要する費用は、公開請求者の負担とする。
3 前項に規定する費用の額は、区長が別に定める。

 情報公開条例は、仮に請求者が特定の人々に限られていたとしても、あくまでも請求権者すべてに開かれた制度です。その請求権者である区民が、コピー代を値上げしてくださいと請願し、それを議会が可決するというこの状況は、おそらく政策的な合理性ではなく、別の理屈が働いているのではないかと思います。確かに、情報公開請求の処理にかかるコストをどう考えるのかという問題はあります。情報公開をすること自体が、日常業務の一環とすれば、そもそも文書を得るというコピーの段階までは業務の範囲で、コピー代の実費のみ徴収するということになります。要は、本来は職員の所掌事務の範囲内であるということです。

 しかし、情報公開請求は、そもそもスケジュールや予定が立てられるものではなく、市民の権利行使があって初めて発生する事務です。そのため、日常のルーティンワークとは区別されやすい。しかも、予定が立たないということは、職員にとっては自分たちの都合に関係なく突然発生する事務なので、仕事が増えたとか、余計な業務という認識を生みやすい。そうすると、特定の人の情報公開請求が続き、量が多いとそれそのもに対して否定的な感情を抱く。さらに言えば、公開された情報によって、不適切な行政運営などを指摘されると、余計にそれが助長されるという悪循環に陥りやすいものです。

 そうすると、余計な仕事をさせられている/させているのだから、そのコストを受益者負担させようという話に転嫁されてしまうのです。しかし、本来は、情報公開制度は請求者に対する開示制度ですが、公開された情報は請求者しか見てはいけないものではありません。受益者は、請求をした人に一義的になりますが、本来は情報が活用されれば受益者はそこにとどまらないものです。

 この間の渋谷区の状況を断片的に報道等で見聞きしていますが、そもそもそういう議論が成立しえないような何か別の問題が、まともな議論を妨げているような印象を受けます。制度が政策論ではなく主観的な感情をもとにした狭い視野の議論に終始しないように、願いたいところです。
 
by clearinghouse | 2012-10-25 22:46