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環境省 福島県と他地域の子どもの甲状腺検査結果は同様と発表-これがもたらすものは何か

 環境省が行った長崎県、山梨県、青森県での子どもの甲状腺検査の結果の速報が公表されたというニュース。

 「子どもの甲状腺「福島、他県と同様」 環境省が検査結果」
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130308-00000034-asahi-soci

 環境省のホームページに行くと以下の資料が出ています。

 福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果(速報)
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16419

 青森県弘前市、山梨県甲府市、長崎県長崎市 で3~18歳の子ども4,500名程度に甲状腺検査を福島県内で使われている機器と同じもので行ったところ以下のような結果になったとのこと。

環境省 福島県と他地域の子どもの甲状腺検査結果は同様と発表-これがもたらすものは何か_c0090033_23135319.jpg


 確かに、福島県内でも41・2%に2cm以下の嚢胞や5mm以下の結節が見つかっている。子どもの甲状腺検査を今のような規模で行ったことがないようなので、福島県での検査だけでなく、それを比較する別地域のデータが必要だということはよく理解できます。福島県内と同程度の嚢胞・結節が見つかったということは、おそらく福島県民の不安を取り除き、安心してもらうための材料にもなるということなのだろうと思います。

 こうした検査が無意味だとはまったく思いません。むしろこういう事態になっている以上は、疫学的な調査はどうしても必要であろうと思います。ただ、こういう情報の出方を見るたびに、何かずれている感じがします。それは、原発事故の発生により、これまではなかった環境に福島県内に住んでいる人のみならず、周辺を含めかなり広範囲の人々がさらされているということは変わらないからです。

 おそらく、今回のような他地域との検査結果の比較によって、福島県在住、あるいは事故当時に住んでいた人で安心する人もいると思います。しかし、放射線の影響を心配している人たちは、これまではなかった環境にさらされていることによって、長期的に見たときにどういう影響が出てくるかは誰も確実なことは言えないこと、影響が出る確率は低いとしても、もしかしたら自分や自分の子どもには何らか影響があるかもしれないということに不安があるのではないか。もしかしたら、という不安や懸念は、答えが出るか感覚が鈍化しない限り、ずっと続いていく。そして、自分や自分の子どもの健康は、害されればそれは治療や補償という形でしか政府や東電は補償してくれないので、あくまでも自分たちが一番厳しい現実を引き受けなければならなくなるということは、すぐにわかることでもあります。

 他地域との甲状腺検査の結果が公表されたことで、今でさえ「心配しすぎ」と言われている安心できない人たちは、ますます居心地が悪くなる、変な人と思われるということになるかもしれません。こういうことになるのは、おそらく今回の他地域での調査結果や、甲状腺検査を含む健康管理調査が、生活をしている人の日常生活や人生を支援するものという観点での本人や家族・社会への情報提供ではなく、「安心をしてもらうため」「不安を取り除く」という設定した目標を達成するためのものとして情報が流れている傾向が顕著であるからではないか。

 そんなことをずっと県民健康管理調査に関しては考えていて、今回の他地域との比較データの公表で、これをもってこれから地域で日常生活をしている人に対してどういう支援なり、不安・心配と寄り添っていくのだろうか、ということを考えざるを得ません。かといって、情報を公表しなければ良いということではまったくなく、疫学的なもの情報も含めて現実の結果は誰でもアクセスできる形で公開されるべきです。疫学的な情報と個人やその家族の個の物語は違う次元で動いているということを理解した評価なり、情報公開をする必要があるのではないかということです。

 そう考えると、「評価」をどう出すかも、疫学的な評価という個が見えない評価でもって、個人や家族という個の物語の中で同じように受け止めることが難しい人がいても何もおかしいことはない。なので、やはり生活支援という意味でもっと情報の活かし方を考えなければならなのではないか、何かいい方法はないか。ここのところ、情報公開はどんどん進めていきながら、それを当事者を支える形でどう活かしていくのかもとても重要です。
 
by clearinghouse | 2013-03-08 23:46