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福島県立医大放射線医学県民健康管理センターの毎日新聞への抗議?

 今日、福島県立医大の放射線医学県民健康管理センターのHPに、「平成25年4月22日の毎日新聞について」という記事がアップされた。しかもトップページの目立つところに、特別にスペースを設けてリンクを貼っている(笑)

 http://fukushima-mimamori.jp/urgent-info/2013/04/000092.html

 4月22日付の毎日新聞の以下の2つの記事に対する抗議で、
…県民健康管理調査事業における甲状腺検査の精度管理について県民の皆様の信頼を不当に損なうものであり、毎日新聞には強く抗議するとともに、訂正を求めております。

とのこと。

「東日本大震災:福島第1原発事故 市町村別、甲状腺検査結果を開示福島県、請求拒めず」
 http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130422ddm001040054000c.html

クローズアップ2013:福島、子供の甲状腺検査 高まる県民の不信
 http://mainichi.jp/opinion/news/20130422ddm003040127000c.html

 県立医大が抗議しているのは、甲状腺検査結果の市町村一覧を公表してこなかった理由を記事は間違って書いているということを言いたいのか?というなんだかよくわからないものと、甲状腺検査に食い違いがあったことどう確認したのかという質問、甲状腺検査の方法の省略があったとの記事の指摘は間違っているから訂正を求めるというもの。

 前者の記事の甲状腺検査結果の市町村別結果一覧は、情報公開クリアリングハウスも絡んでいるので、何が起こった?と思っていろいろみてみた。

 県立医大が問題にしているのは、記事の
しかし、検査責任者の鈴木真一・県立医大教授は開示後の2月13日の記者会見でも「地域が特定されて本人に迷惑がかかる」と述べ、市町村別の判定結果を明らかにしなかった。

という部分。

 これだけだと何が争いになっているのかよくわからないと思うので、記事にも少し書いてあるけど、甲状腺検査結果の市町村別一覧というのの公開経緯などをちょっと説明。

 なお、市町村別一覧は以下に掲載しているので関心のある方はどうぞ。

 福島県民健康管理調査 23年度実績(市町村別甲状腺検査の結果を含む)
 http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=720

 甲状腺検査結果一覧は、情報公開クリアリングハウス内で県立医大と福島県の間の県民健康管理調査の委託契約にかかる文書を情報公開請求をした中で、こちらとしては意図せず公開されてきたもの。情報公開請求をしたのが2012年12月7日付、決定が2013年1月22日付で、1月下旬か2月早々には手元に公開された文書が届いた記憶がある。この届いた文書の中で、委託契約の完了報告として平成23年度に実施した県民健康管理調査の実施状況があり、その中で、甲状腺検査結果の市町村別一覧があるのを発見。資料をよく見ると、この市町村別一覧を除いて、そのほかの甲状腺検査の実施状況は県の検討委員会で配布された資料と一緒なので、この市町村別一覧は県立医大も県も両者の判断として公表してこなかったものであることがわかった。

 この公開された市町村別一覧に関して、2013年2月13日に開催された県の県民健康管理調査検討委員会後の記者会見で、上記の記事を書いた日野記者が質問をしたのだが、それに対する鈴木教授の回答を引用した記事の部分が抗議の対象になっている。

 記者会見に出ていたわけではないので、どんなやり取りがあったのかと思って探したところ、この会見の模様はIWJで中継されていたようで、その模様がまだu-streamで視聴することができた。

 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/57310

 該当部分をざっと書き起こしてみた。Qが毎日新聞の日野記者。Aは県立医大の鈴木教授だ。
Q:市町村別の線量推定結果は出ているが、甲状腺検査結果の市町村別結果は出ていないが出すつもりはないのか。出さないのであればだれがどう判断して出していないのか。
A:決して出さないと決めているわけではないのと、BC判定については、数が少ないので地域が非常に同定されて本人に迷惑すがかかる可能性があることは十分に配慮する必要がある。それを現在、将来において一覧表は作る作らないというのは別の話。当然統計学的には市町村単位、それから先ほどの線量単位での検討を今後は必ず行わなければならない。

Q:平成23年度の結果の一覧とかはないのか。
A:すでに作成している。

Q:公表をしていないのか。
A:公表していない。

Q:それはなぜか。
A:まだBC判定は非常に数が少ないので、個人が同定される可能性が非常に高いということがあるので、注意した公開が必要だと思う。

Q:それはどこで決めているのか。
A:センターの会議で決定したこと。私個人の問題ではない。

 これを踏まえて、県立医大の抗議の内容を見てみる。
 2月13日の検討委員会後の記者会見において鈴木教授は正確には「B、C判定については非常に数が少なく、地域が同定されて本人に迷惑がかかる可能性があるというのは十分に配慮しなければならない。」とコメントしました。一覧表そのものから直接個人を特定することはできないにしても、地域が特定されれば、該当人数が少ない分、個人特定にたどりつく可能性を危惧したものです。
チェルノブイリにおいても、放射線による健康影響についての情報が子どもの心に及ぼす影響は非常に大きいとの指摘があります。その教訓からも、個人特定につながる可能性のある情報の公表はできるだけ慎重であるべき、という考えが背景にあります。
 なお、同時に鈴木教授は「当然、統計学的には市町村単位や線量単位での検討というのは、今後必ずしなければならない」ともコメントしております。

 要は、鈴木教授のコメントの引用は間違っていないが、前後が抜けてることを抗議しているということだろうか。

 ただ、この文章、なかなか味わい深いが内容が成立していない。

 一つは、 「一覧表そのものから直接個人を特定することはできないにしても、地域が特定されれば、該当人数が少ない分、個人特定にたどりつく可能性を危惧したものです。」としているが、市町村別ということと「地域の特定」が同じことを意味していないからだ。盛んに「地域が特定」「地域が同定」と述べているが、地域=市町村であると考えているとすると、一定の母数に対して年齢も性別もついていない判定結果の市町村別取りまとめを公開することで、何が特定されると言っているのか、意味が分からない。おそらく、市町村別一覧の公開と個人の特定は別の問題で、個人の特定が問題になる可能性が出てくるのは、おそらく性別や年齢、居住地域を地区別単位などに整理して公開するときであるだろう。ここまで来ると、人口の少ない町村では、場合によっては個人が特定しうる可能性は完全には否定できないだろう。

 なので、市町村別一覧で「地域が特定」「地域が同定」、ひいては個人が特定されるという議論は、よく批判される個人情報保護を理由に必要な情報が公開されないという問題に属する、情報非公表問題だと思う。

 そして、県立医大は「なお、同時に鈴木教授は「当然、統計学的には市町村単位や線量単位での検討というのは、今後必ずしなければならない」ともコメントしております。」としている。記者会見では「当然統計学的には市町村単位、それから先ほどの線量単位での検討を今後は必ず行わなければならない。」という趣旨で答えている。

 これも何を抗議しているか意味不明。「検討をする」ということと、市町村別結果一覧を公開することは、まったく意味の違うことだからだ。何に抗議しているのか意味不明な点で、誰かに文章を添削してもらった方が良いのでは?とついつい思ってしまう。甲状腺検査の結果を市町村別や線量単位別での検討をしなければならないのは当然。でも、それと市町村別の一覧公開は何の関係もない。

 そして、最大の矛盾について、この抗議文は完全にスルーして自己保身に走っている。それは、そもそも市町村別一覧は、この記者会見以前に福島県も県立医大も情報公開請求に対して公開という決定をしているということだ。実は、県民健康管理調査の委託契約について情報公開請求をした際、県と県立医大に同じものを請求をしていた。漏れ聞いている経緯だと、県の判断としては市町村別一覧は非公開にできない文書と判断したのを、県立医大は抵抗を示したらしい。しかし、県が公開決定したものを非公開にできずに、県立医大も公開としたということのようだ。

 だから、県立医大が公開したかったわけではなく、県立医大にしか委託契約書を情報公開請求していなければ、市町村別一覧は非公開になっていた可能性がある。

 記者会見では、鈴木教授は、市町村別一覧は「公表していない」、公表しないことは「放射線医学県民健康管理センターの会議で決定した」と答えている。「公表」と「情報公開請求に基づく開示」を厳密にわけるということを理解して鈴木教授は話をされているのか不明だか、ずれに県立医大学長と福島県知事が公開と判断した文書を、県立医大放射線医学県民健康管理センターの会議で決めたので非公表と説明しているあたり、センターは治外法権らしい。

 というわけで、本件、情報公開クリアリングハウスに絡む部分を見る限り、県立医大の抗議は意味不明。こちらの日本語能力が落ちているのか、それとも県立医大の陽動作戦か、あるいは何か言っておけばいいという紙爆弾の類か。どれででしょうか(笑)

 ちなみに、2月13日の記者会見では、県立医大の放射線医学県民健康管理センターの中に専門委員会がいくつ設置され、そのメンバーは誰かも質問され、非公開ではないけどすぐにはわからないというやり取りがされてるが、その専門委員会は、福島県民の方が情報公開請求をして情報公開クリアリングハウスに提供をしてくれたので、以下に掲載している。こちらも関心のある方はどうぞ。

 福島県立医大放射線医学県民健康管理センター専門委員会名簿
 http://clearinghouse.main.jp/wp/?p=723
 
by clearinghouse | 2013-04-24 22:18