そう言えば、保護法益って何なんだ??

 9月に行なわれた、行政管理研究センターによる情報公開・個人情報保護審査会委員交流フォーラムの内容が、『季刊情報公開・個人情報保護』に掲載されるとのこと。このフォーラムで私も報告をさせてもらったので、その原稿の校正依頼が来て、一応一通り原稿に目を通して確認したところで改めて気になったのが、法人の印影の公開をめぐるフォーラムでの議論。

 法人の印影の公開をめぐっては、自治体や国の行政機関によって若干判断が異なっている。自治体の中には、組織印・代表印ともに非公開扱いをする場合もあるが、一方で組織印は公開、通常は登記される代表印は非公開としているところもあるし、両方とも公開というところもある。国の行政機関の場合、2004年時点で私が確認した範囲では、多くの省庁等が両方とも非公開としているが、一方で厚労省、内閣府、内閣官房、環境省などは両方とも公開している。非公開とする場合の理由は、印影等を公開すると偽造されるなどして法人の正当な利益を害するというものが多く、自治体の中には公共の安全に係る情報として判断する場合もある。

 くだんのフォーラムで話題になったのは、印影が確認できないと例えば請求書や見積もりが偽造されていないか確認できないという声が請求者にあるので、コピーは不可だが閲覧は可という方法がとれないかというもの。フォーラムでは、この話を聞きながら漠然と考えていて口にはしなかったのが、一体、何を守るためにこの議論をしているのかということ。偽造されるおそれがあるといえば、使っている書体、印影のおおよその大きさ、印鑑に彫られている内容が確認できさえすれば、その辺で簡単にその印影に似たものを作ることができてしまう。よほどの特注品でなければ、通常は印鑑の大きさや書体は、すでにあるものから選んで発注するからだ。

 そこで、本物ではなくて似たような印影であれば良く法人の利益を害さないという理屈が立つかというと、そういう問題でもないと思う。というのも、普通は、印影が本物かどうか、公証力のあるものかどうかは、印影を見ただけでは判断できないからだ。公証力を持つ印影ということになると、印鑑証明書の添付がなければならない。この印影が偽造され、印鑑証明書とともに利用されるとなると、法人としての利益は著しく侵害されることになる。しかし、印鑑証明書の添付を求めるような場面はかなり限られる。

 そこで、現在の印影を非公開とすることの建前的な保護法益は何かを考えると、閲覧という選択肢は建前的な保護法益を侵害することになると思われる。一方で、一般的には、 印影があることをもって一定の信頼性があると理解されるだろうが、本当に法人の利益に関わるような場面では、印影だけですべてを判断することはないだろう。もちろん、印影を偽造する、あるいは本物に近い偽物を作って有印文書を作成するはの犯罪行為だが、印影がどの意味で法人の利益を侵害するとするのかについては、個人的には何となく気持ちの悪い感じ。さらに気持ちの悪い感じを助長するのが、印影を公開しているところが実際にあるという事実だ。

 というわけで、実際のところは良くわからない。ただ、条文をこねくり回すような議論をしていると、本筋を見誤りそうで不毛な気もするので、この辺でやめておこうとだけは思うけど。
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by clearinghouse | 2006-12-14 01:42