戸籍データ漏えい自治体名の公開を求める答申

 2月15日付で、国の情報公開・個人情報保護審査会から私が異議申し立てをしていた案件の答申が出ていた。答申を受け取り出ていたことを知ったのは2月20日だったので、紹介が遅くなった。

 争っていたのは、2006年8月に発生した戸籍データ漏えい事件に関する文書の公開。戸籍のデータベース化を自治体から受注していた会社の協力会社の社員が、3自治体の戸籍データを持ち出してノートPCに格納し、それをインターネットで知り合った者に売り、それを買った男が受注会社に出向いて恐喝をして、協力会社社員とも逮捕された、というのが事件の概要。戸籍データの漏えい、しかも各地の自治体でデータベース化が進められている中で、その作業を受注した会社の関係からの漏えいで、恐喝事件になるまでわからなかったこの事件。データを買った男が恐喝事件を起こさなければ、そのまま転売が繰り返されてデータが広く流布されていた可能性もあるし、あるいはもしかしたらわからないところで流布されているかもしれない。そういう意味で、底知れない恐ろしさのある事件でもある。

 そういう事件にもかかわらず、どの自治体の戸籍データが漏れたのか、一向に情報が出てこなかったので、個人情報保護法の関係で受注会社の主務官庁に当たる経済産業省と、戸籍法を所管する法務省に、受注会社から提出を受けているはずの個人情報の漏えい事件に関する報告等々を公開請求をしていた。ところが、肝心の自治体名や犯行の状況などが非公開となったため、異議申し立てをしていた。

 非公開の理由は、犯罪捜査等情報(情報公開法5条4号)、事務事業情報(同条6号)、法人情報(同条2号イ)に該当するというもの。私はいずれにもあたらないとして、公開を求めていた。答申は、戸籍データが漏えいした自治体名については、公開を求めている。

http://www8.cao.go.jp/jyouhou/tousin/h19-09/424.pdf

 審査会での審議の中で経済産業省は、

① 自治体名が公開されると住民に対して無用な混乱・不安を生じさせ、当該自治体住民に対する脅迫、恐喝等の犯罪を誘発する恐れがあることなどから、犯罪の予防その他公共の安全と秩序の維持に支障が生ずる
② 受注会社にとって戸籍のデータベース作成の業務を委託を受けた顧客に関する情報で、重要な企業秘密として扱われるものであるので、競争上の地位その他正当な利益を侵害する
③ 任意で受注会社に個人情報漏洩についての報告を求めており、開示をすると、今後、任意での主務大臣への報告について極力具体的なものにしないようにしようというインセンティブが働く恐れがあり、個人情報保護法の趣旨を損なう
④ 自治体名が開示されると、当該自治体に対して問い合わせ等が殺到し、自治体の通常業務に支障を及ぼすおそれがある

などなどという主張を繰り広げている。これに対し、私の主張としては、

① 個人情報保護法の基本方針(閣議決定)では、個人情報取扱事業者は個人情報の漏えい等が発生した場合は、二次被害の防止、類似事案の発生回避等の観点から、可能な限り事実関係を公表するとしていること
② 自治体名が明らかにされることで脅迫、恐喝等が発生する場合は、警察への通報等適切な処理をすれば足り、むりと明にされないと、当事者である個人は当然に損害賠償等を求めるなどの救済プロセスが阻害される
③ 戸籍のデータベース化は自治体の事務であり、自治体がどの会社に事務委託を行ったかは、通常は公開される情報であって、特定の会社が特定の自治体と契約関係にあることは、企業秘密には該当しない
④ 個人情報保護法は、任意での報告に事業者が応じない場合、あるいは任意の報告では十分な報告を得られない場合は、主務大臣に適切な報告を求める権限を与えている
⑤ 自治体名が明になることで問い合わせが殺到するとしても、それは甘受すべき負担として市民に対して真摯な対応等を行うべきもので、事務の性質上適正な遂行に支障を及ぼすものではない

などなどというもの。答申は、基本的にはこちらが公開を主張する自治体名等について公開を求めている。判断内容としては、本件について新聞ですでに漏えいした自治体の所在する都道府県名が公表されているが、二次漏えいも確認されず、犯罪の誘発も確認されていないこと、自治体の事務事業への支障も認められないことから、現状に照らして非公開情報に当たらないなどとしている。個人的には、自治体名を公開していない段階での状況から類推して、公開による支障はないという判断をするのは、あまり好ましい方法とは思えず、もう少し丁寧な比較衡量をしてほしいなどと余計なことを思ってしまうが、こちらにとって良い答申なので、良しとしようとは思う。

 公開を求めていて公開されなかったのは、自治体名と契約期間等々の情報が合わせて記載されている文書。契約期間や投入した人員などが自治体名とともに明らかになると、処理工程、処理能力等々が明らかになり、競争上の地位その他正当な利益を害するためとのこと。異論がないわけではないが、自治体名の公開という初期の目的は達成しているので、これは目をつぶることにしようと思うところ。

 さて、答申を受けて経済産業省は本当に自治体名を公開するのだろうか。
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by clearinghouse | 2008-02-23 01:50