福岡高裁の検証物提示命令に対して、国は抗告許可申し立て 情報公開法などに不適法だって

 国は、一部不開示とした米軍ヘリ墜落事故関係文書の福岡高裁による検証物提示命令に対して、5月19日付で最高裁への抗告許可申し立てを行った。この件、5月23日の外務委員会での照屋寛徳議員が質問をして、法務省、外務省、総務省が答弁を行っている。外務大臣の答弁は、以下のような感じ。
 国としては、行政機関情報公開法その他現行関連法令において、開示不開示の妥当性を判断するための第三者による見分は、不服申立て制度において、情報公開・個人情報保護審査会によって行いうることが規定されており、一方、裁判所が不開示文書を実際に見分することは認められていないと判断しているわけでございます。
…今回の福岡高裁の判断は不適法と考えております。法務省とも相談しつつ、19日付で最高裁の判断を仰ぐための抗告許可を行ったところであります。

 総務省はというと、本件については以下のような答弁。
…インカメラ審理そのものの規定につきまして、訟制度の根幹にかかわる問題でありますので、慎重な検討が必要ではないかと考えてございます。

 外務省と法務省によれば、検証物提示命令は情報公開法その他関係法令において不適法ということだけど、情報公開法に照らして不適法というのがよくわからない。不服申し立てを審査する情報公開・個人情報保護審査会では、設置法でインカメラ審理についての権限規定があるため、通常の手段として行政機関に対して不開示文書の提示を求めてインカメラ審理を行っている。これは、誰も異論がないところだし、答弁でもその旨言及されている。一方、情報公開訴訟におけるインカメラ審理についての規定はないことは確か。書かれていないから不適法というのは、さっぱりわからん。問題になるのは、訴訟制度との関係の問題だろう。総務省の答弁は、なんだかとても微妙な感じだが、要はそういうことなのかと個人的には理解をした。

 これについては、2004年4月から2005年3月まで開催された情報公開法の制度運営に関する検討会がまとめた報告でも、訴訟におけるインカメラ審理について言及されている。
 情報公開訴訟にインカメラ審理を導入することについて、行政改革委員会の「情報公開法要綱案の考え方」では、この種の非公開審理手続については、裁判の公開の原則(憲法第82 条)との関係をめぐって様々な考え方がある上、相手方当事者に吟味・弾劾の機会を与えない証拠により裁判をする手続を認めることは行政(民事)訴訟制度の基本にかかわるという法的問題があるとされていた。また、審査会における調査審議の過程で得られた資料が訴訟において活用されることも期待されることから、情報公開法施行後の関係訴訟の実情等に照らして、専門的な観点からの検討が望まれるとされていた。
 この問題については、審査会の調査審議における部分開示等の適否の判断に際してインカメラ審理が有効であると認められることから情報公開訴訟において裁判所が確実に判断するためには実際に文書を見分することが必要であるとの認識や、裁判所にインカメラ審理を求めても法律上明確な根拠がないために行われないとの現状を踏まえて、情報公開訴訟におけるインカメラ審理の導入を検討すべきであるとの考え方がある。
 現状では、情報公開条例に係る訴訟は相当数あるが、情報公開法に係る訴訟の件数は多くない状況にあることもあり、憲法上の裁判公開(特にいわゆる当事者公開)の要請及び行政(民事)訴訟における当事者平等原則との関係等について、必ずしも議論が十分熟しているとは言えない。
 近年の立法例として、裁判官のみが文書の提示を受ける審理方法を規定する例(民事訴訟法第223 条、特許法第105 条等)や当事者尋問等の公開停止を規定する例(人事訴訟法第22 条等)があるが、いずれも本案前の決定手続において行われるものであり、本案の審理において行われることとなる情報公開訴訟の場合とは事情が異なる面があると考えられる。

 インカメラ審理について、積極的ではないが否定もしていない。まあ、やんわり否定しているとも言えるけど。ただ、本件では、上記報告が言及している、審査会でのインカメラ審理や作成されるヴォーンインデックスに関する資料がないと検証物提示命令が出される前に国は回答。もはや手はないというところで出てきたもの。審査会でのインカメラ審理の有効性が認められ、また、情報公開訴訟は基本的には、行政文書を保有している行政機関。訴訟手続きで「相手方当事者に吟味・弾劾の機会を与えない証拠」によることが問題であると言及されているけど、この場合の不利益をこうむる一方の当事者は訴訟を提起した原告側。その原告側が立会権を放棄し、自らの不利益を甘受し、裁判所が検証物を見分することによる個別判断を求めている。

 過去の情報公開条例による府鍛冶委決定を争った裁判で、原告・被告双方がいわば合意をして、裁判所がインカメラ審理を行った例がある。もっとも、この権は検証物提示命令によったものではないと記憶している。今回は、国が抗告許可の申立い、当初から物件提示命令の申し立てが行われていることからも、訴訟当事者間での審理手続に関する同意がない。しかし、どのような手続きであれ、当事者間が同意すればインカメラ審理が可能で、同意しなければできないというのもなんか変。情報公開・個人情報保護審査会には確かにインカメラ審理に権限が付与されているので可能だが、見方を変えれば、行政文書を保有している行政機関以外が不開示文書を見分して審査をすること自体が問題なのではない。そうした権限の明文規定があるのかだけが問題にされているように思われる。何ていろいろ書いているけど、本当のところはよくわからない。

 とりあえず、国から抗告許可申し立て理由書がしばらくして出されるので、その内容待ち。そして、それに対して福岡高裁がどう判断するのか、しばし様子見。もし最高裁に抗告されるならば、ちょっと頑張らないといけない、という話になるのかも。
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by clearinghouse | 2008-05-27 02:41